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屍は黙考する  作者: 龍崎 明
第一章 忘れ去られた地下墓地
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靴を履こう

 下手な脅威よりも恐ろしい虫の悪夢からしばらく。


 俺たちは、扉付きの小部屋を発見した。この前は確か、中に宝箱があったはずだ。俺は、いそいそと扉を開ける。

 案の定、小部屋の中央に、木造の宝箱があった。


 二回目ともなれば、警戒の必要は無い。真理眼(イデア)さんも、罠はないと言っていた。いや、真理眼は喋らないか。

 ともかくとして、俺はワキワキと無遠慮に宝箱を開いた。


 シュン!


「うわ!?」


 宝箱から何かが飛び出し、尻餅を打ってしまった。

 生憎と痛覚が無いので、痛みはないがなんとも間抜けな図である。


 罠はないんじゃなかったのか?


 頭の中に疑問符を浮かべながら、飛んできた物を確認しようと辺りを見渡す。それはすぐに見つかった。


 宙に浮く短剣であった。


 ……なんじゃこれ?真理眼。


『個体名:No Name Lv.14

 分類:屍霊(リビングデッド)

 種族:呪怨器(テラー・ウェポン)     』


『呪怨器:打ち捨てられた武器が長い年月をかけて、負の魔力を溜め込むことで屍霊と化した魔化物(モンスター)。基本的に突進するしか能が無いが、時折、技術的な動きを見せる個体がいる。他の屍霊族と同じく、生者を怨み、その生命そのものを感知することができる。』


 なるほど。宝箱に納められていた短剣が屍霊になったわけだな。


「セイ」


「チッ」


 俺の呼びかけに、セイはすぐさま反応して、呪怨器を浄化した。


 ポスン……


 虚しい音を立てて、呪怨器だったそれは土の床に落ちた。


 ふむ。それでこの短剣は?


『青銅の短剣:なんの変哲もない青銅の短剣。主には護身用や魔除けの役割を持つ。』


 ……微妙だな。捨てて行くか。


 さてさて、一応確認しておこう。宝箱の中には、呪怨器だけかー?


 ……。


 お!まだ、あった。


静音(サイレント)()(シューズ):主に忍び寄る蛇(スニーク・スネーク)の革を素材に作製された魔宝具。隠密の付与効果がある。』


 ふむ?付与効果?うーん……。物理的な機能としてじゃなく、魔法的なモノで隠密に補正があるということか?へぇ、そんなのもあるのか。

 よし、じゃあ、履くか。


 ……足裏が汚れてやがる。そりゃそうか、裸足で今まで歩いてたんだもんなぁ。


「チッ?」


 暇になったのか、セイが声をかけてきた。


「足を綺麗にしたら行くからな」


「チッ……」


 俺の言葉で、セイは俺の足裏に目をやった。そして、しばらく、考えたあと。


「チッ」


 なんと、浄化の青白い魔力が放たれた。


 って!おい!?俺は屍霊だぞ、何やってんだ!?


 咄嗟のことで回避も間に合わず、俺は浄化されたのだが。


「お?」


 痛みは無かった。存在が消失しかけた感じもない。足裏を見れば、そこは綺麗になっていた。なるほど、加減して汚れだけ払ったのか。


「ありがとな」


「チッ!」


 当然!とばかしにセイが鳴いた。

 俺はいそいそと靴を履き


「よし、行くか」


「チッ」


 セイの頭を一撫でして、また、歩みを再開させるのだった。

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