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屍は黙考する  作者: 龍崎 明
第五章 不死の黄昏
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誕生

 嫋やかにクリスティーヌは、魔王の玉座に腰掛ける。


 みるみるうちに彼女の腹は膨らんだ。


「ふふ、さぁ誕生の時よ」


 優しげに腹を撫でる様子を見れば、妊娠しているのだろう。


「ぐっ……あ、アァ……」


 クリスティーヌの腹を裂いて、小さな手が現れる。


 ゆっくりと、手探りで、クリスティーヌを甚振るように、其れは這いずり出でた。


 混色の黒に染まる髪。酸化した血のように暗い瞳。


 赤子のようだった肉体は既に青年のそれへと成長を遂げていた。

 魔力で編まれた夜闇の如き衣が、白皙の肌を覆い隠す。


「あぁ、ようやく、ようやく。長かった本当に、長かった!これで解放される、私は解放されるの!」


 クリスティーヌの感極まった言葉が耳に届く。そして、次の瞬間、産まれたばかりの王が母の心臓を抉っていた。

 灰塵へと変じるクリスティーヌ。その心臓から滴る血を啜る王。


 魅了の呪縛から解放された俺は、ソイツから目を離さずに口を開く。


「セイ、マサミチ。お前らは、逃げろ」

「ジャックさん何を?!」

「お前の役割は終わったんだマサミチ。それに足手まといだ」

「くっそれは……わかりました。御武運を」

「チッ」


 そうそれでいい。勇者だからこそ、魔王には勝てた。だが、アレには通じないだろう。


『個体名:_@aJjmd Lv.100

 分類:渇望王(ノスフェラトゥ)

 種族:黄昏(トワイライト)()吸血鬼(ヴァンパイア)   』


『黄昏の吸血鬼:世界の終わりを導く器。生への渇望に喘ぐ不死者たちの王。核を持たぬ其に死は無く、生も無く、故に体は偽りで、心は壊れ、魂さえも空っぽである。』


 動力(たましい)が空っぽだと?


時空魔術【隔離空間アイソレート・スペース


 一先ず、俺とアレ以外を排除する。加減はできないだろう。

 No Nameではなく、文字化けした個体名の表記も不気味だ。


 何故動く。何を思考している。どうして触れられる。


 一体何が生命の三原理である体・心・魂を代替している。


 ゆっくりと周囲を確認する渇望王。


 やがて、閉じ込められたことを認識したのか、此方を向いて、嗤った。


 凡ゆる悪意を煮詰めたようなその笑みが、何故か美しく見えた。


「ッ!?」


 いつの間にか目前に迫った渇望王。


 右手の爪で撫でられるのを、どうにか躱す。


 ガリッと、【隔離空間】の壁が音を立てて削れた。


 ただの攻撃が、空間に傷を与えた。


 まだ慣れていないのか、動きを止める渇望王。


 外は今、夜だろうか。


 時空魔術【接続(コネクト)


 封印具らしい魔王城を壊すわけにはいかない。【隔離空間】の外に、魔王城の内と外を繋ぐ道をつくる。


 占星魔術(アストロロギア)月光の祝福(ムーン・ライト)


 夜空に浮かぶ満月を媒介して、強化魔術を発動する。


「ッ!?」


 唐突にまた、目前に迫るソレ。だが、少しだけ余裕を持って躱す。


 血聖術式【断罪炎パニッシュメント・ブレイズ


 神聖魔術と血魔法を応用して、正の魔力で血魔法を行使する。


 存在の規格が世界に合わない渇望王は、それによって修正されるはずだった。


 否、修正はなされた。しかし、次の瞬間には、目の前にいた。


「何!?」


 三度の交差。左手に握る夜刀姫を合わせた。


「ぐっ……」

『うぅ……』


 重い。ヤトの耐えるような声がする。もう少しだけ我慢してくれ。


 血聖術式【血染め桜】


 夜刀姫の刃を血が覆う。


 渇望王の右腕を斬り飛ばせば、刃を覆う血が飛んで渇望王の身体に桜の花弁を染め上げる。

 続け様に、左腕を斬り飛ばす。やはり、桜に染め上げる。


 染め上げられたところを中心に、渇望王を修正してゆく。

 これでも、倒せはしないだろう。一先ずは、マサミチたちを逃がす時間稼ぎ。


 さて、コイツを倒す術はあるのか。


 魔術王の遺産は未だに反応を示さなかった。

新規コメントありがとうございます。手厳しい意見もありましたが、その辺りは次回作の反省に活かしていきたく思います。


さて、もうすぐもうすぐと言いつつ、だいぶ引っ張ってきておりますが、読者の皆様にも完結が見えてきたのではないでしょうか?


特に意見がないようであれば、二部に続くと言ったような終わり方ではなく、スッキリと終わらせるつもりです。

拙作は本腰を入れて書いた初めての完結作品となりますが、色々とやりたい放題やった結果、回収していないモノがあります。二部でそれを回収しようとすると思いの外、纏まりが悪く、それ以前に別作品を書きたいので、続きは御蔵入りすることでしょう。


では皆さん、続きをお楽しみに。


ジャック「お前、手厳しい意見のせいで日和ったろ、そうなんだろ?」


違いますー、ホントに別作品の方が書きたいんですー。


「どうだかな。まぁ、しっかりやんな」


はーい、頑張りまーす。

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