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屍は黙考する  作者: 龍崎 明
第五章 不死の黄昏
134/139

「衝動に身を任せた方が楽に終わらせてやれたのだがな」


 ファントムは自身の勝利を微塵も疑わず傲慢に言い放った。


「まぁ、仕方ない。ここからは、殺す」

「いや、死ぬのはあんただよ」


 互いに、得物を構え直す。


「チッ!」


 セイの神聖魔法が合図となって、飛び出した。


 ズンッ!


 あまりの激突に、空間に衝撃が伝達させる。


 ピキッ……パキッ……


 ばら撒かれた狂刃に限界を迎えた空間がまた、悲鳴を上げる。


 一合、二合、三合……


 撃ち合うたびに、悲鳴を上げ続ける。


「どうした?狂気の刃は俺に届いていないぞ」

「くっ……!?何故だ?何故、撃ち合えている?」


 先程までの様子が嘘であるかのように、俺はファントムと撃ち合っていた。


 妖魔剣による攻撃は確かに無作為だ。前後上下左右、あらゆる方向から五感で認識した方向とは異なる向きで襲いかかる。


 それはまさに狂気。だからこそ、そのチカラに対抗できるものは、狂気しかない。


 ミシッ……


 空間が軋む。


「何だ……そ、れは……?」


ー&(((&);.fjnctvあらやまさagtmegvau#ldtt


 ファントムがソレを認知した瞬間、()()()()()()()()()()()言葉が感ぜられた。


 振り向いてはならない。おそらくは、空間に亀裂が入り、深淵のナニカが覗いているだろう。


 神聖召喚【(The)銀の(Silver)(Key)


 神聖魔術(サクラメント)召喚魔術(レメゲトン)の複合魔術だ。呼び出しているモノの正体を探ってはならない。今はまだ、微睡みの中にいるはずだ。


 カタ……カタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタ……


 ファントムの握る妖魔剣が震えた。


「なぁ!?やめろ、やめろ!怯えるな!それでも我の剣か!」


 狂気にも質がある。妖魔剣の持つ狂気はあくまでケモノの狂気。正気こそが狂気であるカミには敵わない。


『あ、あ、あっあっあああ……アァァァァァァァアアアアアアア!!!!!!!!』


 カタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタ……カッタ?


 ッパキン……


 妖魔剣は耐え切れず、自壊した。


「は?」


 ファントムが間抜けな顔を晒す。既に妖魔剣は砂塵となって、原形などどこにもない。


 吸血鬼は不死者であり、負の魔力を受けたその身は狂気こそが正気だ。それでもヒトではあるのだが、ケモノよりかは遥かにマシだろう。


 覗いた程度ならば、軽傷と言いたいところだが、そんなわけがない。今、空間には正の魔力が満たされており、俺やマサミチ、セイはそれによって無事だった。この保護が剥がれれば、それどころか保護があろうと直視すれば、妖魔剣と同じ末路を辿る。


 それでもファントムが無事であるのは、妖魔剣が肩代わりしたからだった。生命を貪る呪いが良い方向に働いた結果に過ぎはしないが。


「あ?」


 妖魔剣だった砂塵の小山をファントムは見つめている。廃人一歩手前といったところか。


「ぐっ……!」


 不吉な声を聞いた。マサミチの方を見れば、()()()()()()()()()()()()()()


 制御が乱れる。


 ゆっくりと瞼が開こうとしたのが感ぜられた。


「まずい!?」


 扉を閉める。ファントムの視線が、勇者と魔王の決着を捉えた。


「ハハ……ハハハハハハハハハハ!これで悲願は達成せり!」


 ファントムの言葉が虚しく響き渡った。

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