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屍は黙考する  作者: 龍崎 明
第五章 不死の黄昏
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勇者と魔王と吸血鬼

あけましておめでとうございます。


今年始めの投稿です!

 魔王城に侵入した俺とマサミチは、次々と襲いくる魔王国軍近衛兵たちをあしらいながら、奥へと進んだ。


 奥に行くほど、水晶の建材は少なくなり、黒曜石の如きそれが見える。


 水晶によって魔術陣が組まれているだろうことがわかった。黒曜石の建材は堅固であり、壊してショートカットするのはメンドーかつ、そもそも封じられているモノに影響を与えないためにその選択肢はなかった。


 遂に、大扉の前に辿り着く。豪奢に飾られたその扉の先に、魔王の気配があった。


 俺たちを招くように、独りでに大扉が開く。


 自然と歩いて、大扉の先へと進む。


 暗赤色の絨毯が敷かれ、骨で構成されたかの如き不気味な玉座が一段高い場所に置かれている。垂れ幕には、竜の意匠。


 玉座に腰掛ける魔王、その側に控える黒騎士。


 その場に待ち受けていたのは、たったの二人。


「ようこそ、勇者と変わり者の吸血鬼よ。歓迎しよう、我こそは魔王国の王、カルマナ=サタルニルだ」


 闇そのものである魔王が、堂々と名乗りを上げる。


 だが、俺は魔王よりもその側に控える黒騎士に興味があった。


「何をしているんだ、ファントム?」


 俺の言葉に、黒騎士はあっさりと兜を霧散させた。血に還したのだ。


 現れたのは、白い仮面を着けた金髪の美丈夫。


「やはり」


 その様子に魔王が真剣に呟いた。


「我を騙していたのだな、吸血鬼の真祖よ」


「騙すとは人聞きの悪い。我はしっかりと役目を果たしてきましたよ、陛下?」


 ファントムの返答に、魔王は嫌悪の様子を示す。


「まぁ、良い。我は勇者と戦う運命だ、貴様はそこの吸血鬼に因縁があるようだな?」


「えぇ、我もあなたと勇者が争うことは歓迎する。故に、彼の方は気にせず、我が相手をするので」


「その後、死んでもらおう」


「後があると良いな?」


 利害の一致。魔王と真祖はただ、それだけで休戦協定を結んだ。

 敵の敵は味方と言うが、現実には第三勢力であることはよくある話。魔王はその役割のために、勇者を優先し、ファントムは俺に目をつけている。


 俺とて、お前を見逃し気はない、ファントム。


「ジャックさん」

「行くぞ、マサミチ」

「はいっ!」


 その返事を聞くか聞かないかのところで、俺は既にファントムに肉薄していた。


 ファントムの手には禍々しい剣がいつの間にか握られている。


求血の妖魔剣(ダーインスレイヴ):神匠ファフニールが鍛え上げた呪われた剣。狂透獣(バンダースナッチ)の牙と妖魔鏡猫(キャスパリーグ)の髭を素材としたそれは、二匹の怪物の狂気をそのまま引き継いでいる。汝、生命を貪られること覚悟せよ。』


 夜刀姫を抜刀した。


 ニィっと笑うファントムは消え去った。


「どこだ?」


 真理眼を集中する。だが、見えない。


 邪剣の狂気が世界を侵食していた。


 腹が斬られた。すぐさま、再生する。気配は背後。俺は上を斬り裂いた。


「ふむ?もう、わかったのか」


 前方に再び姿を現すファントム。その脚に傷があった。手応えはなかったが、斬れたのか、ブラフか。


「わかった?そもそも、お前だって、その剣のチカラは御せちゃいない、そうだろう?」

「何をバカな、我が我の剣を制御できないわけがないだろう」


 そう言って邪剣を振れば、俺の左を抜ける斬撃。


「ほら、できていない」

「今のは、ただの素振りだ。今度は此方から行くぞ」


 そう言って、ファントムは翼を広げる。縦横無尽な変則飛行で、予測をつけさせないよう俺に迫った。


 俺もまた、迎え撃つ構えを見せ、狂える世界を修正する魔術を模索する。


 ……


 マサミチは、ジャックの後に続いて、魔王へと迫った。


 魔王はその手に、魔槍を顕現させ、迎え撃つ。


「勇者天崎正理」

「来い!」


 声はただ、それだけ。マサミチは神剣カムイ・ルーラの鯉口を切る。


『行きなさい、マサミチ!』


 イルの声に押され、抜刀。


 それはあまりにも澄んだ音色だった。


 神剣と魔槍の激突は、世界を鎮めた。勇者にはそう感じられた。


「フンッ!」


 拮抗は一瞬。未だ、玉座にある魔王は勇者を押し返す。


「ハァ!」


 休む間も無く、勇者が再度、突撃する。


 勇者の薙ぎ払いは、やはり、魔槍に止められ、澄んだ音色を奏であげる。


 一合、二合、三合……


 それはまるで、世界に捧げる剣舞の如く。


 予め決められていたような戦いが繰り広げられていた。

本年もよろしくお願いします。

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