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屍は黙考する  作者: 龍崎 明
第五章 不死の黄昏
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演説

短めなので、明日も投稿

 神剣を手に入れた俺たちは、【転移門(ゲート)】を使い、法皇国の聖都に飛んだ。


 それからは特に目立ったこともなく、半年の刻限はやってきた。


 俺たちは人類圏の最北、人魔境界戦地帯を訪れた。


 そこには、すでに世界中から名だたる猛者たちが集められていた。


 戦争なのだ。


 勇者であるマサミチは、法皇国の用意した見栄えのする鎧を身に纏い、戦前演説をすることになった。


 ……


 壇場に上がったマサミチの姿を、スクリーンに似た魔道具が映し出す。

 緊張した様子で、彼はゆっくりと口を開いた。


『はじめまして、僕が召喚された勇者、マサミチです。見た目の通りの子どもで、実は戦闘についてもこちらに来てから習いました。頼りないでしょうし、失望した人もいるかもしれません』


 マサミチはそこで一旦、口を閉じ目蓋を下ろした。


『それでも、僕は魔王を討ちます。平和を勝ち取ります』


 ゆっくりと覚悟を決めるように、言葉を綴る。やがて、開かれた瞳には確かな意志が宿っていた。


『僕を信じろとは言えません。僕に任せろとも言えません。僕はそんな重責に耐えられるような人間じゃない。僕は僕のために魔王を討つ。だから、皆さんも自分のために、家族のために、友のために、愛すべき大切な人のために戦ってください』


 マサミチは徐に、神剣を抜刀し、天高く掲げた。


『この戦いは勝利する。それは勇者である僕がいるからじゃない。皆さん一人一人が必死に戦った結果です。どうか、若輩者である僕に勇姿を見せてください!』


 勇者の演説を聴き、静まりかえっていた星宮獣帯(ゾディアック)が震えた。


 ともすれば、不満の一つ、文句の一つが噴出しても仕方のない、頼りない口上だった。しかし、勇者の人柄が伝わったか、それともこの世界の戦士たちは誇り高かったのか。


 ある者たちは雄叫びを、ある者たちは喝采を、ある者たちは足踏みを、ある者たちは杖を突く、その他様々な行動によって、彼らは戦意を奮い立たせ、強く強くその心身に刻み込む。


 俺たちが護るんだ。家族を、友を、愛すべき大切な人々を、そして、国を、世界を護るんだ。そうだ、この世界は俺たちのものだ、異世界から召喚された勇者なんかに任せられるか。


 怯えるな、逃げるな、前を向け!


 あんな子どもが戦うんだ。俺たちが戦わずしてなんとする。子供に顔向けできるのか、恋人に胸を張れるのか、友と語らうことができるのか?戦え、ここで戦わなければ、俺たちは死んだも同然だ!


「「「ウォォォォオオオオ!!!」」」


 熱狂の中、マサミチはもう一度、神剣を天高く掲げた。再びの絶叫。その様子をしっかりと目に焼き付けて、マサミチは壇場を降りていった。

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