おやすみ
「セイ!」
「チッ!」
俺の呼びかけに、セイは浄化で応える。
怪物は、耐えかねて苦しむがそれだけだ。打開策は見えない。関節のありように驚いてからしばらく。
今もそうだが、セイの浄化でできた隙を使い、怪物を斬ることは何度もできていた。が、そのたびに再生した。
俺が持つ喰再生という特性は、食べた分だけ回復する。だから、怪物の再生能力にも限度があると思いたいが、延々といつ終わるかもわからない綱渡りでは多分、時間がない。
ジリ貧だ。
このままでは、セイの魔力が枯渇し、俺の集中力が切れる。別に相手は鈍足だから、セイを抱えていざというときはトンズラすれば良いのだが、勝たなければ、先には進めない。
……。鈍足以外の弱点はないのか?
真理眼は、他に何を説明した。巨腕の豪速、再生、獣鬼……
そうだ。死霊魔術!
あれは失敗作らしいが、それでも魔術的な存在ならば、独立していない可能性もある。外部からエネルギーを供給されている可能性があるはずだ。
だったら、その繋がりを見れれば……
俺は真理眼を意識してすぐに見つけた。
あれだ!なるほど、奥の扉から伸びてやがる。さて、どうやれば、斬れるんだ?
……。確か、隕鉄は魔伝導率が無いに等しかったな。
扉の奥から直接伸びてるんじゃなく、扉を中継の媒体にして魔道具の補助でここまで伸ばしてるはずだ。だから、さっきから見えてる繋がりは、ゆらゆらと揺れるのに、その根元だけは扉の飾りである獅子の口から動かねぇんだろう。
壊せはしないだろうが、詰めることはできんだよ。
フン!
俺は剣を投擲。それは狙い違わず、繋がりの根元である獅子の口に突き刺さる。
ビンゴ!
怪物との繋がりが切れた。
「セイ!」
「チッ!」
ここで一気に畳掛かる。
剣があったため、今まで使用感の確認ぐらいしかしていない。鋭牙尖爪を発動。
出来る限り、爪を伸ばし、尖らせる。
俺の横を青白い光が飛び、それが怪物に命中すると当然、怪物は苦悶の声を上げる。
ドン!
もはや、遠慮はいらない。外部供給を断たれたことで、より一層、苦悶する様に見える怪物の背後に回る。
躊躇いなく、懐に飛び込んだ。
シュッ!
背後で巨腕の空振る音を聞きながら、俺は凶器と化した腕を突き出した。
「グゥアアア!?アアアア!!?」
怪物はがむしゃらに暴れ回り、のたうちまわる。
俺は、それに巻き込まれ、体を削られつつも、しっかりと伝わる怪物の鼓動を握り締めた。
「終わり……だ!」
言葉とともに、腕を一気に引き抜いた。
「グゥアアア!!!…ゥ……ゥア……ァ」
断末魔を上げ、怪物はゆっくりとその瞳を閉じていく……。
おやすみ。渇愛の怪物よ。
俺は、向こうの世界のお話を思い出しながら、そんなことを想うのだった。




