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屍は黙考する  作者: 龍崎 明
第一章 忘れ去られた地下墓地
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おやすみ

「セイ!」


「チッ!」


 俺の呼びかけに、セイは浄化で応える。


 怪物は、耐えかねて苦しむがそれだけだ。打開策は見えない。関節のありように驚いてからしばらく。


 今もそうだが、セイの浄化でできた隙を使い、怪物を斬ることは何度もできていた。が、そのたびに再生した。


 俺が持つ喰再生という特性は、食べた分だけ回復する。だから、怪物の再生能力にも限度があると思いたいが、延々といつ終わるかもわからない綱渡りでは多分、時間がない。


 ジリ貧だ。


 このままでは、セイの魔力が枯渇し、俺の集中力が切れる。別に相手は鈍足だから、セイを抱えていざというときはトンズラすれば良いのだが、勝たなければ、先には進めない。


 ……。鈍足以外の弱点はないのか?


 真理眼(イデア)は、他に何を説明した。巨腕の豪速、再生、獣鬼(トロール)……


 そうだ。死霊魔術(ネクロマンシー)


 あれは失敗作らしいが、それでも魔術的な存在ならば、独立していない可能性もある。外部からエネルギーを供給されている可能性があるはずだ。


 だったら、その繋がりを見れれば……


 俺は真理眼を意識してすぐに見つけた。


 あれだ!なるほど、奥の扉から伸びてやがる。さて、どうやれば、斬れるんだ?


 ……。確か、隕鉄(メテオライト)は魔伝導率が無いに等しかったな。


 扉の奥から直接伸びてるんじゃなく、扉を中継の媒体にして魔道具の補助でここまで伸ばしてるはずだ。だから、さっきから見えてる繋がりは、ゆらゆらと揺れるのに、その根元だけは扉の飾りである獅子の口から動かねぇんだろう。


 壊せはしないだろうが、詰めることはできんだよ。


 フン!


 俺は剣を投擲。それは狙い違わず、繋がりの根元である獅子の口に突き刺さる。


 ビンゴ!


 怪物との繋がりが切れた。


「セイ!」


「チッ!」


 ここで一気に畳掛かる。

 剣があったため、今まで使用感の確認ぐらいしかしていない。鋭牙尖爪を発動。

 出来る限り、爪を伸ばし、尖らせる。


 俺の横を青白い光が飛び、それが怪物に命中すると当然、怪物は苦悶の声を上げる。


 ドン!


 もはや、遠慮はいらない。外部供給を断たれたことで、より一層、苦悶する様に見える怪物の背後に回る。


 躊躇いなく、懐に飛び込んだ。


 シュッ!


 背後で巨腕の空振る音を聞きながら、俺は凶器と化した腕を突き出した。


「グゥアアア!?アアアア!!?」


 怪物はがむしゃらに暴れ回り、のたうちまわる。

 俺は、それに巻き込まれ、体を削られつつも、しっかりと伝わる怪物の鼓動を握り締めた。


「終わり……だ!」


 言葉とともに、腕を一気に引き抜いた。


「グゥアアア!!!…ゥ……ゥア……ァ」


 断末魔を上げ、怪物はゆっくりとその瞳を閉じていく……。


 おやすみ。渇愛の怪物よ。


 俺は、向こうの世界のお話を思い出しながら、そんなことを想うのだった。

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