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屍は黙考する  作者: 龍崎 明
第四章 勇者と神子と神匠と
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竜鱗族の事情

ちょっとした追加設定


人狼と魔女の総称を魔狼族。

魚人と人魚の総称を魚鱗族。

蜥蜴人と人蛇の総称を竜鱗族。


とします。まぁ、総称がないと登場させるときに種族話で不便なのでね。つまり、今回は、亜人さんの登場なのですー、ではではどうぞー

 揺らめきより現れ出でるは、深き森のような深緑色の髪を揺らし、瞳孔の縦に割れた灼眼の美女。その下半身は蛇身となっており、彼女が竜鱗族の女、人蛇(ラミア)であることを示していた。

 隠密のためか、肉感的なスタイルを際立たせる灰色の装束を身に纏っている。


 チロチロと蛇舌をチラつかせながら、憂い顔で大扉に凭れ掛かった。


「はぁ、もう、私、これでも暗殺者(アサシン)なのよ?自信無くしちゃう……」


 女の声は、とても敵対しているような調子ではない。だが、女の名乗る通りの職業ならば、感情など当てにはならないだろう。


「誰だ?」


 前に出て、誰何する。


 女は、今度は明るい表情を浮かべて答えた。


「私は、魔王国軍四天王が一人、第四軍諜報部隊を預かる者、『蛇眼女帝』エキドナ・アマリリスよ♪」


「魔王軍四天王……」


 エキドナの名乗りに、勇者がポツリと零した。


 俺は、夜刀姫を血流より具現化した。


『出番?』

「そうだ」


 次いで、イジネが構え、遅れてマサミチが抜剣する。イルは、セイを抱えてネブカの元に。


「アァン、そんな警戒しないでよぉ。私、直接戦闘は苦手なんだからぁ」


 今度は間延びしたような調子で、いちいち曲線的な仕草をしながら喋る。

 大扉に背を預けてズルズルと身体を滑り落とす様は、どこか頽廃的だ。一見、言葉の通り、戦闘をする気がないように見える。だが、下半身が蛇身であるために、人類には思いもよらぬ動きもできるだろう。体勢が崩れているように見えるのは、ブラフの可能性もある。


 それに先の隠密は、気配ではなく、姿そのものを消していた。真理眼(イデア)で見る限り、今の姿が偽りでないことは確かだが、そのカラクリはエキドナの魔眼によるものだ。


 幻惑(ミラージュ)()魔眼(アイズ)


 魔眼は種族的特徴として現出するものも含めて、すべてが強力だ。通常の方法では、まず抵抗(レジスト)できない。エキドナのそれは、人蛇であるから彼女独自の才能だが、その効果は視界内に幻を見せるというもの。俺たちを視界に捉えている以上、常にそれを警戒しなければならない。


「そう、警戒しないでよぉ……」


 しかし、エキドナは先程から情けない姿を見せるばかりであった。


「……仕事は?」


「勇者の監視と隙をついての暗殺でーす♪」


 マサミチの表情が少し強張った。


「アハ!勇者ちゃん、可愛い!」


 エキドナはその反応を面白がるだけだった。


「……なぁ、ジャック」

「言うな」

「……」


 イジネの呆れた調子に言葉を返し、一つの魔法を発動させる。


 血魔法【呪腕凍土(フローズン・バインド)


 夜刀姫の鋒から放たれた俺の血液が、エキドナの蛇身に付着。組み込まれた術式に従い、それを起点に急激な熱吸収が実行される。瞬く間に、蛇身とそれと接触した床とが、凍りついた。


 この場にいる面々に隠し立てする必要はない。そのため、種族的に最も威力の高い血魔法での拘束を選択した。


「あらら?」


 身体が冷えたため、少し目がトロンとしたエキドナに危機感はない。


「あなた、吸血鬼だったのね?私を眷属にする気はないかしら?」


 エキドナは、あっけらかんとのたまった。


「それは、魔王国を裏切るということか?」

「そうよ?」


 不思議そうに首を傾げて答えるエキドナ。その調子は、何を当たり前のことを、とでも思っていそうだ。


「忠誠心は?」

「ないわよ。私は、種族の存続のために魔王国に参戦しているのだから」


 そこにあったのは、真面目な表情だった。


 竜鱗族の存続か。まぁ、人蛇はともかく、男性体である蜥蜴人(リザードマン)はほとんど蜥蜴の見た目だ。その姿は、人類側からすれば、恐ろしげに映るため、魔族側の方が受け入れられやすかったということだろう。


「あなた、亜人の保護を宣言しているみたいじゃない?それに、その強さも確認できたしね?戦わないに越したことはないわ」


 魔王のところでは、参戦する義務がある。俺の保護下ならば、確かに闘う必要はない。ならば、当然、後者を選ぶだろう。もちろん、勢力規模が拮抗していることが条件ではあるが。


 理には叶っている。


「……なるほど、わかった。そうだな、魔王国での道案内くらいは務めてもらおう」

「えぇ、それで構わないわ」


 了承の様子に、夜刀姫の鋒をエキドナの手の届くところに突き出す。エキドナは、それを迷うことなく握り込んだ。


 血魔法【血の誓約】


 魔法を発動させ、その効果が正しく働いていることを確認する。


「眷属にはしてくれないのね?」

「……。それでこの後はどうする?」

「見学していくわよ?」

「まぁ、俺は良いが」


 他の面々を見れば、渋々と言った感じで頷いていた。


「さて、では本題といこう。ネブカ」


『えぇ、試練を始めましょう。異界の勇者、と救世主の後継よ』


 俺もか?

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