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愛は重くて強いもの  作者: 白狐
状況把握編(仮)
6/10

6

 話が逸れ、ちょっとごたごたしたけど何とか話が戻ってきた。

 いやはや、至高の時間でございました。

 やはり、好きなものを語り合えるのは素晴らしい。よき。


「次はスクナさんの番ですね。」


 スクナちゃんのお相手はエド・サモン。

 若干22歳にしてサモン伯爵家を継いだ化け物である。

 当主の体調が芳しくないという理由があるとはいえ、この若さで家督を継げるものではない。

 交渉術に長け、人脈もあり、要領もいい。

 幼い頃から神童と呼ばれ、そんな完璧超人であるが故に、周囲から強力なバックアップを得ているとはいえ、何の問題も起こさずに領地を経営できている稀有な人材だ。

 その上、学園の教師も勤め上げていると言えば、どれほどの壊れスペックか察する事ができるだろう。

 スクナちゃんから見たエドのポジションは親戚のお兄ちゃん。

 現在、学園の教師を務めているエドとスクナちゃんは許嫁の関係だ。

 主人公がエドルートに入ってしばらくするとスクナちゃんが暗殺される。

 主犯は隣国のある貴族だ。

 隣国の一部貴族は戦争を起こしたかったが、大義がない。

 ならばという事で、きっかけ作りの一環として穏健派であるスペーディア侯爵家の令嬢を暗殺する事にしたそうだ。

 隣国の仕業だと言う決定的な証拠が発見されることはなかった為に、すぐに戦争勃発とはいかなかったが王国と隣国は暗殺を気に一触即発のにらみ合いになる。

 スクナを愛していたエドは自らの手で復讐をするとスクナの墓前に誓い、あらゆる手を使い独自に調査した。

 証拠を見つけ、主犯である隣国の貴族の元へ単身乗り込もうとしていた事に気づいた主人公がエドを止められればハッピーエンド。

 ここまでにエドと信頼関係を築く事が出来ていなければバッドエンドとなる。

 ちなみに、バッドエンドの場合はスクナの死は偽造で主犯の屋敷に捕らえられていて、スクナを人質にされエドの復讐が失敗に終わる。


「本来のシナリオは皆さん知っていると思うので省略致しますが、スクナさんの暗殺が失敗した場合には暗殺者の正体が露見し、大規模な戦争に発展し戦争の過程でエドは帰らぬ人となってしまいます。これが一番不幸をまき散らす、なんとしても避けなければならない未来です。」


 またまたとんでもない結果が待っているものだ。

 修正力の仕事が中途半端過ぎて酷い。

 結果としてシナリオ上死ぬべき人間が死ねばお仕事終わりなんですかね。

 もうちょっと途中にも力を入れてくださいよ……。


「そこか。そこなのね。私の力は無意識に身を守るとかそういう事で合ってる?」


「はい。そういった類の力である事は間違いない様です。既にそういった経験があったのでしょうか。」


「7歳の時。これだけ言えばみんな分かるんじゃない?」


 この場にはハテハテの知識に欠ける様な人間は居ないようだ。

 スクナちゃんの言葉で皆納得したとばかりに頷く。


 設定資料の中にスクナの過去が少しだけ書かれていた。

 スクナとエドは二人で馬に乗って出かける事が度々あった。

 近場の丘へ遊びに行く程度の事で危険がある程遠くに行くわけでもない為、護衛が居ないのはいつもの事。

 エドはこの時17歳でそれなりに腕も立つ事を周囲も知っていた事も護衛を付けなかった要因の一つだろう。

 そんなある日、出先で偶然腹をすかせた狼に遭遇してしまう。

 本来のエピソードは格好よく狼を追い払ったエドにスクナが惚れ込み、両親に頼んで正式に許嫁になるというエピソードだったはずだ。

 スクナちゃんがこのエピソードを出して来たという事は、ここで何かしらの出来事があったという事だろう。


「婚約するに至ったエピソードっすよね。何があったんすか?」


「狼をたおしたわ。」


「そんなに元の話と変わらないみたいだけど、きっとそれだけじゃないんだよね?」


 私の当然とも言える疑問にスクナちゃんが答える。

 表情が硬いけど言いにくい事なんだろうか。


「たおしたのはエドじゃないの。私が、よ。狼が襲い掛かってきた瞬間、勝手に体が動いたの。意識はあるのに誰かに体だけ操られているかの様だったわ。狼に向かって走り出して、すれ違いざまに狼の首をへし折ったの。」


「うわぁ……。」


 みんな引いていた。

 7歳の女の子が出来る事から逸脱してるよね。

 同年齢の子と比べても小柄なスクナちゃんだからなおさらだ。


「引かないでよ。私だってしたくてしたんじゃないんだから。」

 

「ごめんっす。でも、エドもドン引きだったんじゃないっすか?」


 私も気になる場所はそこだ。

 エドが格好良く助けた事によって婚約に至った筈だ。

 スクナちゃんがそんな非常識な事をしたらシナリオからその時点で逸れるのではないだろうか。


「それがね、惚れられたの。強いとか格好いいとか戦女神だとか褒められてエドの方から婚約を申し込んで来たよ。エドから好意を向けられるのは望むところだったからそのまま婚約したけど。」


「令嬢を相手にした言葉のチョイスとしては微妙っすね……。」


 エドってそういう人だったんだ。

 復讐に燃えるまでは文武両道の出来た先生ってイメージだったのに。

 修正力のせいなのか素がそうなのか判断難しいな。


「スクナさんの力は自動反撃とでもいえばいいのかしら。危害が加えられると自分の意思とは関係なく反撃、撃退するみたいですよ。」


 誘拐犯も令嬢が自らそんな戦闘行為を行うなんて想像もしない事だろう。

 任務中だから油断はしていないだろうけど、それは周囲に対して出あって令嬢が圧倒的戦闘力を持っているなんていうのは想定外にも程がある。

 まず、間違いなく誘拐は失敗する。


「これで、それぞれが抱える問題は共有できたかしら。ここからが本題よ。私たちがこれからどうするべきなのか。話し合いましょう。」


 ここまでの話を聞く限り、道は一本しかない気がするけどね。


「今の所、サミュエルルートが一番本来の道筋に近い部分をなぞれそうだね。」


 クロスルートはソフィちゃんが攫われる事が出来ない以上、バッドエンド一択。

 ケビンルートは私の幸運力のせいで敵対者が組織ではなく善意の協力者である為相手を特定できず、殲滅できない為バッドエンド。

 エドルートは刺客をスクナちゃんの意思とは無関係に撃退して戦争に突入。

 結果的にエドが死ぬ……と。

 そうなるとスクナちゃんの言う通り、リオちゃんが死んだフリをして残った私たち三人で主人公がサミュエルルートのハッピーエンドに向かうよう全力でサポートをする事が一番いい未来が待っている気がする。

 問題は死んだフリだけで大丈夫なのかという部分。

 修正力が変な方向に働いて変則バッドエンドに繋がったりしないのだろうか。

 ソフィちゃんに聞いてみよう。


「それは大丈夫だと思います。これは推測になりますが、現状を鑑みるに最終着地地点を除き、修正力より私たちの力の方が優先されるようです。」


 なるほど確かにそうだ。

 シナリオの修正力が優先されるならば現状が既にありえない。

 仮に修正力が優先されるのならば私に悪評が立っていないはずがないのだ。

 

「と、なると主人公がサミュエルルートに入るよう、私たちでバックアップしていけばいいのかな。ちなみになんだけど、主人公がどのルートを選ぶかは見えたりしないの?」


「はい。残念ながら主人公が絡む場面は見えないようです。まったく、ではないのですが見えずらいとでも表現すればよいのでしょうか。彼女が私の力の外側に居るのか、それ以外に原因があるのかは分からないのですが……。」


「なら、基本方針はリオちゃんが死んだふりをして、残りの三人でサミュエルルートを正しく進めるように全力でサポートしていくって事でいいかな。」

 

 この方針だと一番被害を被るのはリオちゃんだ。

 私たちの視線がリオちゃんに集中する。


「ん。それ以外に道はなさそうっすからねー。うちが泥をかぶるっすよ。そんな顔をしないで欲しいっす。みんなも必要なら自分を犠牲にしてたっしょ。」


 申し訳ないとはおもいつつも、実際その通りだった。

 自分が犠牲になるだけで彼らが最終的に幸せになれるならば、問題なし。

 私たちはみんな、自分を犠牲にしてでもハテハテの攻略キャラに誰一人として死んでほしくないのだ。

 きっとみんな同じだったんだろう。

 これ以上の言葉は不要。

 あとは実際に行動して結果を出すのみ。


 方針は決まった。

 勝負は二年後の秋、学園に主人公が編入してきてから。


 失敗は、許されない。

即興に限界を感じたので一本挟んで学園編はある程度形になってから投稿したいと思います。

今月中になんとかできればと考えております。

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