宇宙
ある女が飼い猫に話しかけている。
地球は滅びます。だって、よく考えてもご覧なさいよ。形あるものはいずれ壊れるものです。だからいつか地球は必ず滅びてしまうんです。当たり前のことを言うなって?じゃあ貴方、その時どうするか考えておいでですか?考えていらっしゃらないようですね。みんなそう言うんですよ、そんな先のことを考えてどうするんだって。そんなものは杞憂に過ぎないってね。でもね、必ず終わりが来ることを分かっているのに、そのことを考えないなんて怠慢ですよ。夏休みの3日目に、宿題を放棄することと同じです。誰しも考えなければならないのです。もちろん私はいつも考えていますよ。答えは簡単、宇宙へ逃げるんです。大きな船を作って、宇宙へ逃げる。でも私、あんまり宇宙のこと詳しくないんですよね。だからね、今日私の話を聞いてもらったのは、私と一緒に宇宙へ行く方法を考えて欲しい、ということなんですよ。まず、宇宙って空気がないんでしょう。空気がないと3分も生きてられないから、これを何とかしないといけない。その昔地球の空気がなくなると言われた時には、タイヤのチューブに溜めた空気を使って生き延びようとした人がいたらしいですから、これでどうでしょう。それから、とても広いところだといいますから、退屈しないようにボードゲームをたくさん持って行かなきゃならない。何か面白いものをご存知ありませんか?私はもう通り一遍遊びつくしてしまって、きっと宇宙ではすぐ飽きてしまうでしょう。ははあ、なるほど、ドイツに行って探すという手がありましたか。それは名案だ。明日から探しに行きます。うーん、だいたいこんなものでしょうか。これで地球が滅びてもあんしんですね。私は今日もぐっすり眠れそうです。ありがとう、ありがとう、重ねてありがとう。
そして地球は滅びた。