ご挨拶
やあやあどうも、ご挨拶、ご挨拶。
おや、こんにちは。この作品を読んでくれる人間が現れるなんて思いもしなかった。いや、いいんだ。せっかく来たんだからじっくり読んでいってくれたまえ。紹介が遅れたね。私の名前は、まあそうだな、額縁と呼んでくれ。しっくりこないかな、うん、腑に落ちない方もおられようが、額縁というのは実に私の体をよく表した名前なんだ。つまりだ、君はこの先、ページをめくっていくと、何人かの人間と出会うことになる訳だが、私は彼らと君の間を取り持つ額縁になる、ということだな。君は美術館で絵を眺めている時、向こうから見られている気がしたことはないか?そうなのだよ、それはまったく正しい直観なんだ。君が絵を眺めて、その存在を君だけのものにしようと目論んでいるまさにその時、絵の方も君をその形象に取り込もうとして、虎視眈々とつけねらっている。私は君と絵が仲良くできるように、いつも2人の間を四角く区切って、万事を丸く収めているんだよ。おっと、自己紹介が長くなりすぎてしまったね。くれぐれも気負わずに読んでくれたまえよ。この先のページにいるやつらは私より話が長くはないだろうし、もう少し単純明快な性格をしているだろうから、きっと話は聞きやすいはずだ。
こいつはまったく、大したご挨拶だぜ。