プロローグ
《むかし、にほんに みさいるが おちてきました________》
幼い頃の記憶。
母は俺が血臓人であるということを説明するために、手作りの絵本を作って俺に読み聞かせてくれた。
「なんで落ちてきたの?」
「喧嘩しちゃったからだよ〜。」
《そして、たべるものがなくなってしまったヒトは、ヒトをたべました。》
「食べちゃうぞー!!」
そう言って、母は俺をくすぐった。
「きゃーっ!」
そうやって、じゃれて遊んだんだっけ。
《ヒトをたべたヒトの〝しそん〟の なかで、かさねくんはトクベツなの!》
「ホント?!ボク、トクベツ?!」
俺は自分が特別だ、という言葉を良い意味で捉えていた。
本当は差別的な意味だったのだ、その頃はまだ幼すぎて、気づかなかった。
「そうだよ、だから…」
「だから、大事にしてね、その金色の髪も、赤い目も……。」
「____ちゃんと産んであげられなくて、ごめんね…。」
母が震えた声でそう言ったのを、俺は確かに覚えている。
「ママ?なんで泣くの?泣かないでよ、ボクも悲しくなっちゃう…。」
「ごめん……ごめんね…。」
「…ママのこと、嫌いにならない?」
「なんで嫌いになるの?ボクはママ、大好き!」
_________大嫌いだ、裏切り者。