命名
墓になかった、ということから彼がよみがえったことは明白だった。
そして第2、第3の殺人が起きる。
今度は再び夜、道を歩いていた少女2人だ。
15歳と17歳の姉妹で、姉は首から上がなく、妹は首から下がなかった。
ただし、丁寧にも心臓が残されていて、それが死体のそばに無造作に捨てられていたそうだ。
だが、その心臓にはかじった跡が複数あり、何者かが食用としてしたという猟奇殺人と判断された。
犯人は不明、目撃者もなし。
しかし、誰もが最大の容疑者として疑っていたのが、自殺したあの彼だった。
現地警察も、それを踏まえつつも、死者を裁くことは警察の職務範囲外としつつ、生者の犯人を捜した。
警察によって犯人とされたのは3人、しかし、ことごとく証言が得られず釈放となる。
当時にしては珍しく、自白を目的とした拷問は行わなかったそうだ。
それも、本心では警察も死者たる彼が犯人だと分かっていたからだろう。
その彼の名は、今は伝わっていない。
自殺したと同時に名を捨てさせたことによるものだが、ここにきて名前を与える必要が出てきた。
そこで警察は教会の司教と相談し、悪魔学の本の題名のひとつであるゴエティアと名づけることとした。
このとき、彼は悪魔とされ、自殺という罪により神から見放され転化したとされた。