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はじまり
18世紀の中盤に差し掛かろうとしている1730年、英国北部スコットランド、アマーダン州の州都アマーダン。
ローマ・カトリック教会の聖人の一人である聖ポッシュが眠るこの地で、ある事件が起きる。
自殺がでたのだ、それも献堂されたての教会の、祭壇の上でだ。
一目して自殺だと分かったのは、足元に蹴られて倒れた小さな足台、誰もいなかった教会内部、ひもをはりにかけるのに使った棒など、一人で行うのに十分なものがそろっていたからだ。
官憲もすぐに自殺だと判断し、事態の収拾を図った。
しかし、このことは瞬く間に噂となり、自殺者は協会の敷地外にある自殺者用のところに葬られるときには、確かに死んでいるという証拠が欲しいということで、心臓がとられた。
これは、吸血鬼としてよみがえるのを防ぐという役割とともに、確実に死んでいるということを証明することの役目があったようだ。
仕切りの外、埋められてから話がはじまる。
確かに心臓を抜き取ったはずなのに、夜の祈りを教会で行う信徒が見たというのだよ。
「あいつが墓から出てくるのを見た」と。