第7話 それぞれの道〜結城〜
怜空が残酷な出来事に巻き込まれている時、結城はいうとなぜか牢屋の中に閉じ込められていた。なぜ牢屋の中にいるのかというと、数分前まで遡る……
「うわぁぁぁ! すご〜い、飛んでるみたい!」
神さまに三人別々に落とされてから随分と時間が経ついうのに、結城は全然地面に落ちずに空の旅を堪能していた。
「だいぶ遠くまで飛ばされちゃってるなぁ〜、どこに落ちるんだろう〜? まぁ、どこに落ちたとしても平気だけどね!」
結城は最初に落とされた時に平気だったので、余裕な表情で空の旅を楽しんでいた。どこに落ちるかも知らないで……
しばらく飛ばされていると、少し先に大きな城が見えてきた。
「なんか立派なお城があるなぁ〜、いいな〜、あんなお城に一度でもいいから住んでみたいな〜!」
結城がその城をじっと眺めていたが、その城に段々と自分が近づいている事に気付いて慌て始めた。
「これって、このまま行くと、お城にぶつかるよね!? 私、お城の壁にぶつかって死ぬなんてそんな残念な死に方はしたくないよ! 少しお城が燃えちゃうかもしれないけど、無理矢理止めるしかないね!」
両手を前に突き出して炎を出そうとするが、少しの炎も出ない。
「え!? なんで炎が出ないの!? もしかして、あの神さまの仕業? もう! なんて事してくれるんだ、あの神さまは!」
必死に炎を出そうと足掻いてみるが、全く炎が出る気配はない。そうこうしているうちに、段々とお城までの距離が縮まってきている。
「炎が出ないんじゃ何もできないからね! 諦めて壁と心中する事にするよ! じゃあね、紅羽、怜空! 来世でもまた会おうね! あと、あの神さまに会ったら、一発ぶん殴っといてあげるからね〜!」
結城はもう助からないと諦めたのか、別々に落とされた二人に最後の言葉を残してそっと目を閉じて飛ばされる力に身を任せた。
結城がお城のベランダの窓にぶつかる瞬間、その窓が開いて、中から誰かが出てきた。
「今日もいいお天気ですね! 風が心地いいです! ん? 何かこっちに飛んでくるわ!?」
その誰かが飛んでくる結城に気付いた時にはもう手遅れで、その人に向かって結城が勢いよく激突した。
「い、いたたた! 何です!?」
「いたたた……あれ? 私、生きてる!? やった〜! 助かったんだ、良かった〜!」
助かった事に喜んではしゃいでいる結城をぶつかったその人は不思議そうな目で見ている。
すると、突然その部屋のドアが勢いよく開けられ、数人の兵士と思われる人たちが入ってきた。その中の隊長と思われる人が姫に駆け寄った。
「ご無事ですか!? 姫! 門の警備をしていた兵士が慌てて、姫の部屋に何かが落ちていくのを見たと報告があり、急いで駆けつけたのですが、お怪我はありませんか?」
「ええ、大丈夫よ!」
その隊長らしき人物は結城の方を見ると同時に周りの兵士たちに命令した。
「おい、お前たち! そこの侵入者を捕らえて、地下の牢屋に入れておけ!」
「「「了解!」」」
命令された兵士たちは結城の腕を掴み、拘束した。
「ちょっと! 離して!」
結城は兵士から腕を振りほどこうとするが、数人に取り押さえられているので振りほどけない。
「こうなったら、炎を出してでも……え!? まだ出ないし!」
「ほら! ブツブツ言ってないで早く歩け!」
神さまのせいで炎が出せなくなっている結城は兵士に連れられて、部屋から連れ出されていった。
「待って! その人は……」
「姫、もう安心です! 侵入者はしっかりと牢屋に閉じ込めておきますから! 部屋で大人しくしていてください!」
そう言って、隊長は立ち上がって礼をしながら、部屋を出て行った。残された姫は一人座り込んで呟いた。
「さっきのあの方とはどこかで会った気がするのですが……」
こうして結城は神さまのちょっとした悪戯のせいで城の牢屋に閉じ込められる事になったのだ。
「何でこんな事になっちゃうのよ〜! 壁に激突しなくて良かったけど、牢屋に閉じ込められたら助かった意味がないじゃない! 次、あの神さまに会ったら一発ぶん殴ってやらないと気が済まない!」
結城が神さまへの怒りを燃やしていると、階段を降りてくる足音が聞こえてきた。その降りてきた人物は、牢屋の見張りから鍵を受け取り、結城が入れられている牢屋の前まで来ると、鍵を開けて中に入ってきた。
「どうも、初めまして。私はガルタ王国の第一王女、アリス・ガルタバレットと申します。貴女のお名前は?」
「あ、私の名前は緋久咲 結城と言います。先程は申し訳ありませんでした!」
「気になさらないでください。それよりも、貴女お怪我はありませんか?」
「大丈夫です! こう見えて頑丈ですから!」
「そうですか、それは良かったです!」
姫さまは安心したのか、そっと胸を撫でろした。そんな姫さまを見て結城はなぜか懐かしく感じていた。
「でも、何でそのお姫様がわざわざ牢屋に閉じ込めらている私のところに来たのですか? 私はそんなつもりは無いのですが、姫さまを本当に狙った侵入者だったらどうするんですか!?」
「私のことを心配してくださるのですね! お優しい方ですね!」
「いやいや、そうじゃなくて!」
姫さまが結城をからかっている様子は、まるで姉が妹をからかっているような風に見えた。
「分かっていますよ、私が貴女に会いにきた理由ですね? それは、貴女とはどこがで会っているような気がしたからです。それどころか、今まで一緒に暮らしていたかのような気までするのです!」
「そうですか? 私は姫さまとは今日初めて会いましたし、それに一国のお姫さまと一緒に暮らすなどあり得ないと思いますよ?」
「そうですよね、私の気のせいなのかもしれません。」
姫さまは少し残念そうな顔をしながら、牢屋を出ようと振り返った。結城はそんな姫さまの顔を見て、ふと自分の姉のことを思い出した。
「結城さん、一日は牢屋から出すことは出来ないのですが、明日になれば解放されると思いますので、今日だけは牢屋の中にいてください。明日、呼びにまたここに来ますから!」
「分かりました。本当に迷惑をかけてごめんなさい!」
「気にしないでください、貴女が悪い人ではないのは、一目見たら分かりましたから! それではまた明日呼びに来ますね!」
姫さまは牢屋の鍵を閉めて、その鍵を兵士に預けて階段を上がっていった。
「いいお姫さまで良かったなぁ〜! 捕まった時はどうしようかと思ったけど、何とかなるもんだなぁ〜、でも、あのお姫さま、どこかお姉ちゃんに似てるんだよなぁ〜、名前も同じだし、もしかしてお姉ちゃんの生まれ変わりだったりして! まぁ、そんな訳はないか!」
姉の名前は、緋久咲 有栖、結城の三つ年上の実の姉である。
「また、お姉ちゃんと一緒に暮らしたいなぁ〜!」
牢屋の中のベッドに寝転んでそんな事を考えながら、結城は静かに目を閉じた。
〜〜〜〜〜〜〜
「お〜い! ゆう〜!」
「な〜に〜? お姉ちゃん?」
ある屋敷の廊下で結城は姉に呼ばれて、走って姉のとこまで駆け寄った。
「ゆう、もしお姉ちゃんに何かあったとしても、挫けちゃダメだよ! 挫けそうな時は、お母さんや怜空を頼るんだよ! 分かった?」
「分かったよ! お姉ちゃん!」
「お、いい子だ! ほら、向こうで遊んでおいで!」
「うん!」
元気のいい返事をして姉のことを見ながら廊下を走っていく結城を姉は悲しそうな目でじっと見つめていた………
〜〜〜〜〜〜〜
「……お姉ちゃん………」
寝ている結城の目から一粒の涙が零れ落ちた。