第4話 神さまの悪戯
ここは見渡す限り真っ白な世界、そこには三人の高校生と神(笑)を名乗る爺さんが向かい合って立っていた。
「なぁ? 俺らって、上空1000メートルからパラシュートなしのスカイダイビングをして、すげ〜怖い思いをして地上に着いて、さぁ、行こうと一歩を踏み出したはずなのに、何でまた、ここに戻って来るんだよ!!」
「それはじゃな、儂がお主らの力を試そうと思ってやったに過ぎない些細なことじゃからじゃよ!」
「全然、些細なことじゃねぇよ! こっちは死ぬかと思ったんだぞ!」
紅羽は必死に訴えているが、爺さんはまるで孫をからかっているようだった。
「しかし、その割には空の上で楽しく話していたようじゃが?」
「それは現実逃避ってやつだよ、爺さん。俺と結城は全然平気だったけど、紅羽は何の力もないただの一般人だから、仕方ねぇんだよ!」
「そうだよ! 紅羽は全然何にも出来ない残念な一般人なんだよ!」
「何でそう、何もできないことを強調するんだよ!?」
「「えっ、だって何にも出来ないじゃん!」」
「ぐふっ!!」
確かに紅羽は二人の前では何にも出来ない一般人を装っているが、別に何も出来ないわけじゃないんだけどな。あと、こういう時だけ二人の息が合うのがなんか腹立つんだけど。
「儂から見れば、其奴は三人の中で一番人間離れしているのだがのぅ〜。」
「そんなわけないじゃん! 紅羽だよ!?」
「そうだぞ、爺さん! 紅羽なんだから、何にも出来ないって!」
「なんで俺の名前を悪い別称みたいに使ってるんだよ!?」
「まぁ、良いではないか!」
「良くねぇよ!!」
いつもいつもこの二人には、一般人扱いされっぱなしなんだけどなぁ〜。でも、俺はあまり目立ちたくないから二人にはパルクールやってること隠しているせいなんだけどな。
「まぁ、いつものことだし、良いけどさ。だから爺さん、そろそろ俺たちをここに戻した理由を聞かしてくれよ!」
「そうじゃたのぅ〜。では、話すかのぅ〜。」
神さまは地面に腰を下ろして、静かに語り始めた。
「まず、この世界にお主ら三人を呼んだ本当の理由じゃが、この世界、儂はリベルセリアと呼んでいるが、このリベルセリアには儂の息子がいるのじゃが、こやつがなかなかふざけた息子でのリベルセリアでやりたい放題してるんじゃ。それを止めるためにお主らを呼んだじゃよ!」
そんな神さまの話を聞いてた紅羽が疑問に思ったことを口にした。
「でも、爺さんって、神さまだろ? 神さまだったら、どうにか出来るんじゃねぇのか?」
「それがそうもいかないのじゃ。確かにこのリベルセリアを創ったのは儂じゃが、だからといって一つの世界として成り立ってしまっているこの世界に不用意に触れる事ができないんじゃよ。」
「そんなもんなのか〜。」
紅羽が一応納得した様子なのを見て、神さまはまた話し始めた。
「しかし、儂の息子はこのリベルセリアでは魔王的な存在じゃからのぅ、何の力もない人間を呼ぶわけにはいかないので、五咲の二人と人間離れした身体能力を持つ人間を呼んだわけじゃ!」
「さっきからずっと言ってるけど紅羽が人間離れしてるって、どういうことなんだ? 俺らには普通の人間にしか見えないんだが。」
「それは、其奴がお主ら二人に自分の身体能力の高さを隠しているからじゃよ。それにさっきここから下に落とした時も普通に着地できたはずだしのぅ〜。」
「え!? マジかよ!?」
「そんなに凄いようには見えないけど!」
怜空と結城の二人が、紅羽をじっと見られている事に耐えかねたのか、紅羽は諦めた様子でため息をついた。
「はぁ〜、バレたようだし、白状するよ! 確かに俺はお前ら二人よりも身体能力は高いと思う。」
「本当なの? 私たちよりも!?」
「マジかよ!? ちょっと、ショックだな。てか、さっきは俺が助ける必要がなかったってことかよ! どんな身体能力してやがるんだよ!?」
「まぁ、実際にあんな高さから落ちたのは始めてだったし、 助けてもらってよかったよ! 多分、大丈夫だったと思うけど……」
紅羽は普通のスカイダイビングの経験はないが、上空500メートルで自家用機が壊れてそこからパラシュートなしで飛び降りて無傷だったことはあるのだ。
「てか、何やったらそんな身体能力が身につくんだ? 俺たちもそこそこ毎日の特訓で鍛えてるんだが、そこまではなかなかならないぞ!」
「そうだよ! どうしたら、そんなに凄いことになるの?」
「それは……パルクールって知ってるか?」
「パルクールって、あのマンションとかの屋上とか飛び回るやつだよな? もしかして、パルクールやってたのか!?」
「そうだよ。俺、たまに海外旅行行くだろ? その時にいつもパルクールやってるんだが、他のパルクールやってるやつに世界大会出てみないかと誘われてな。それで出てみたら、優勝してしまって向こうではかなりの人気者になっちまったんだよ!」
紅羽の話を聞いて、怜空と結城は後ろに倒れそうなほど驚いていた。いつも何にも出来ないふりをしていただけあって、二人の度肝を抜いたらしい。
「でも、パルクールだけでそんなに身体能力が高くなるものなのか? 普通の人間は上空1000メートル落ちたら、たとえパルクールの世界一でもタダじゃ済まないだろ?」
「それは俺にもよく分かっていないんだよなぁ〜。」
「それについては、儂から話そう。」
とても気になるのか、三人ともの視線が神さまの方に集まった。
「リベルセリアでは、さまざまな種族がおるのじゃが、たまに儂の息子の悪戯でお主らの世界にこっちの世界の生物を転移させる事があるのじゃ。じゃから、もしかするとお主の祖先の誰かがリベルセリアの生物なのかもしれん。」
「それなら俺ら五咲が特別な力を持っているのもこっちの世界の住人が祖先にいるからなのかもしれないな〜。」
「そうじゃな、さっき見せてもらった力に似た力を持つ種族も存在するからのぅ〜。」
リベルセリアには、魔法を使える種族、身体能力がとても高い種族などさまざまな種族が暮らしている。種族によっては、人間とはかけ離れた姿をしている種族も存在する。他にもリベルセリアには多くの秘密があるのだが、それは後々分かることである。
「それなら、五咲の力の正体も紅羽の異常な身体能力の高さにも納得がいくな!」
「そうだね! でも、五咲の力の正体は一族でも謎のままだったからね、良いことを聞けたよ!」
「それは良かったのじゃ!」
二人とも満足した顔をしていたが、紅羽は自分の身体能力の高さの原因が二人と同じだったことに少し焦りを感じていた。
「そろそろ、話も終わりにして、またお主らを下に降ろそうかのぅ〜。」
「またここからスカイダイビングするのかよ!?」
「今度はちゃんと地面まで降ろしてやるからのぅ〜。」
「本当だろうな〜? あんな怖い思いは二度とゴメンだぞ!」
「分かっておるのじゃ! ほら行くぞぅ!」
神さまがそう言った瞬間、三人の足下に人一人通れるくらいの穴が出来た。三人は重力に引っ張られるように穴に吸い込まれていった。
「「「何でこんな落とし方するんだよ!!!」」」
「あ、そうそう。今度は三人それぞれまったく違う場所に落とすからのぅ〜!」
「「「そういう大事なことは落とす前に言えよ! この駄神!」」」
三人の叫びも虚しく、かくしてそんなふざけた神さまによってそれぞれの道へと向かうのであった……。