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竹内緋色 短編シリーズ

オラはHDML端子

作者: 竹内緋色

オラはHDML端子


 クラムボンはぷくぷくと笑ったらしい。それがどうした。

 私はHDML端子。それ以上でもそれ以下でもないHDML端子。買われてきたものの、使い古されることもないHDML端子だ。HDML端子って打ちにくいって?我慢しろ。

「いやあ、今日もやさぐれてるね。」

 私の飼い主が言う。

「お前が使わないから私はジョグレスなんだよ。」

「ジョグレスってなんだよ。」

「欲求不満だよ。」

 まあ、デジモンから取ったんだけど。つまりは合体できてないから不満なの!

「まあまあ、落ち着きなされや。」

 決っして使われるとかそう言うものじゃない亀のフィギュアが言う。

「ガチャガチャの景品が何を言う。」

「いやあ、俺は結構主人に気に入られてるぜ?」

「やってられねえよ。」

 ほこり被ったフィギュアにバカにされて。私はやるせない。くそったれ。

「おい、私が帰ってくるまでにこの部屋、片づけておけよ。」

「はあ?言った奴が片付けろよ。」

 私は部屋に唾を吐いて出て行ってやる。そもそも、私を有効活用できないお前が悪いんだ。何気に私は十メートルだぞ。相場はそこそこ値が張るんだぞ。ブランドものなんだぞ。

 夜のネオンが私の黒くて細長い、妖艶な姿を映し出す。

「ねえねえ、そこの若いHDML端子ちゃん。僕チンとチンチン電車しない?」

「死ね。」

 私は手に持っていたツボで話しかけてきたディスプレイをぶち壊す。なんでツボを持ってるのかって?こまかいこたあ気にするな。あそこも小さい大人になるぞ。

 私は行きつけのバーに顔を出す。どいつもこいつもディスプレイやコンピューター相手にくねくねと腰を振ってやがる。不機嫌だ。

「ホットコーヒー一つ。」

「おいおい、ここはバーだぞ。」

「私は客だ。」

「はいはい。」

 マスターは私に黒々としたコーヒーを出す。この身体に染みる一杯がたまらねえんだ。

「電気製品がコーヒーなんて飲んでいいのかい?」

「ふん。どうせ使われないHDML端子だ。そのうち端子の先まで錆び付いちまうよ。」

 コーヒーを一飲み。

 そこで、世界が変わった。

「はあ、今度はどんな世界なんだ?」

 私はまた元の世界に戻るのが面倒になるな、と思いながら、コーヒーを啜る。荒れ果てたバーには人っ子一人いない。

「おいおい。こんなところにうまそうなHDML端子がいるぜ。」

 下卑た声が聞こえる。

「なんだ、そのちんけな恰好。」

 魔法少女のような服装をした幼女が断りもなしにバーに入ってくる。

「十メーターのナショナルものか。これは楽しませてくれそうだ。」

 幼女は私の体に触れようとする。私はその手を振り払う。

「なんだ、小生意気な。HDML端子のくせに。」

「ああん?HDML端子にはHDML端子の生きざまってえのがあんだよ。てめえらみたいな魔法少女に触られたらHDML端子が廃る。」

「ああん?今この世界を牛耳ってるのは魔法少女なんだぞ?」

「ふん。ちんけな世の中だ。魔法少女ごときに征服されるなんてな。」

「表に出ろ。」

 頭に血を上らせた魔法少女が背を向けて、バーの外に出ようとする。その途端、魔法少女は地面にばたりと倒れた。

「ふん。HDML端子をなめるなよ。」

 すると、街中から警報のような耳障りの音が聞こえる。ったく、どこの世界も厄介ごとばかりか。

 バーを出ると、何人もの魔法少女に囲まれていた。

「これで世界全部の魔法少女か?」

「バカ。この町だけでもこれだけだ。全世界の魔法少女なんて、もう数えきれない――」

 私はこの町の魔法少女を一瞬で倒す。

「少しは手ごたえが欲しいもんだが。」

 パチパチパチ。小さな手で拍手をする魔法少女が現れる。

「私は魔法少女四天王の一人よ。」

 そして、倒れる。

「どうせ最弱なんだろ?」

 お決まりのパターンなんて飽き飽きだ。

「どうだ。私に敵うやつはこの世界にはいないのか?」

 どうやらいないらしい。つまらない世の中。


 次の世界に行くと、そこは修羅場のオフィスだった。

「おい、そこのHDML端子。コピーを取れ。」

「はあ?なんで私がコピーなんか。セクハラで訴えますよ。」

「うるさい。文句なら社長に言え。」

 ああ、そうか。それは至らなかったな。

 私は忙しそうなサラリーマンの波を潜り抜ける。こういう時、HDML端子って便利なんですよ。

 そして、なんなく社長室へ。

「おい、社長。」

「なんだね、君は。」

「見て分かれ。ハゲ。」

「禿げてない。見て分からんか。」

「どうせヅラだ。」

 面倒臭そうなのでぶっ倒す。そして、私が社長になった。

「おい、お前ら、過労死するまで働け。労災くらいは出してやる。給料は労災だ。」

 私は職場を改善してやったというのに、どうも社内の評判は前の社長より悪いらしい。

「社長。お見合いの話があるのですが。」

 私より美人な秘書なんか要らない。私は秘書を倒す。

 その後、どうも社長に逆らうと暴力を振るわれるみたいな評判が立ったらしい。どうしてわかるかって?ニコニコ動画みたいにコメが流れてくんだよ。分かれよ、バカ。

 私は馬鹿々々しくなって、次の世界に行くことにした。


 次の世界は異世界だった。

 どんな描写かって?異世界っていえば分かるだろ、バカ。めんどくせえんだよ。一々一々城壁がどうのレンガ造りがどうの。お前ら好きだろ異世界。なんでも異世界にしやがって。むしろ、全部ウインナーで作られた異世界とかでいいだろ。

「おい、お前、何してる。」

 ウインナーが言った。

「はあ?お前何様なの?私はHDML端子なんだけど?」

「死にたいのか!」

 突然ウインナーの壁が壊されて、私の目の前のウインナーが巨大なウインナーに食われる。

「ソーセージが来たぞ!」

 いや、違いなんてわかるかよ。

「逃げろ!」

 ウインナーたちがウインナーの家から出てくる。どれがウインナーなのか分からない。どうせ全部ウインナーだ。地面も空もウインナー。

「食っちまうぞ!」

「ナマハゲか。」

 そろそろめんどくさくなったので、巨大ウインナーには倒れてもらった。

「あなたはこの国を救った勇者です。」

 ウインナーに言われる。

「あんた、誰?」

「申し遅れました。この国の姫。ウインナーです。」

 結局のところウインナーかよ。というか、お前ら服とか着ないの?姫ならせめてドレスぐらい着ろよ。

「どうか私の婚約者に――」

 そう言うのは悪くないと思った。この異世界で平和に暮らすエンド。でも、みんなウインナーだからな。

 私は次の国に移った。


 私は歩いていた。ドラえもんに出てくるコンクリートばかりのつまらない町。せめて、夜の町じゃないと、私の電流が乗らない。

「きゃああ、どいて!」

 私に女がぶつかってくる。口には食パン。バカだろ。あれ実際やってみろよ。口がぱさぱさになるぞ。え?女なら一度はやったことあんだよ。HDML端子だってやってる。

「てめぇ、気をつけろ!私はHDML端子なんだ!」

「何よ!偉そうに!」

 あ、まずった。これ、少女漫画的展開だわ。このままだと私、確実に結ばれるエンドだわ。

 パシン。思いっきり殴る。

「痛い。ふざけないで。」

 こいつ根性ある。

 私は女をリンチした。あ、これ、楽しい。マジで快感。

「お、覚えてなさい!」

 確実に骨の首を折ったんだがな。女は首を後ろに向けながら前に進んでいる。だって、体は前向きだもん。ああ、そう言えば、少女漫画ってホラーもあったな、なんて懐かしくなっていた。

「いやあ、なんて美しんだ。」

 私はイケメンを倒す。顔のいいヤツなんてどこでもチンチン電車だ。

「学園のV6を倒すなんて。」

 さっきの首の百八十度曲がった女。ああ、なるほど。あれだな。主人公の敵役。というか、V6古いんだよ。ウルトラマンティガ以降NHKでしか見てないよ。というか、地味に長野すきだけどさ。もっとV6。もっともっとV6。しようぜ、お前ら。

「だが、ヤツはV6最弱――」

 それ、前やった。私は残り五人を倒す。

「だが、私が真のV6だ。」

「きゃああ。理事長よ。」

 あ、この前のハゲ社長。有無も言わず倒す。

「ふん。あんたのこと、認めてやってもいいわよ。」

 そんなこと言う前に首治せ。

 私は次の世界に渡った。


「ただいま。」

「おかえり。」

 私はくたびれて、部屋に突っ伏す。部屋一面のマシュマロがふんわりと舞い上がり、ゆっくりゆっくりと私の頭に落ちてくる。

「部屋片づけろって言ったでしょ。売れないマシュマロ職人。」

 でも、今は疲れていて、このマシュマロが心地よかった。

「HDML端子。」

 そう言ってご主人様は私に覆いかぶさってくる。

「こんなところでやめてよ。亀が見てる。」

「大丈夫。俺のタートルヘッドしか見てないさ。」

 亀のフィギュアには赤い布がかかっていた。

 ご主人様は私の端子にその分厚い唇を近づけ――


「ミレイ。何してるんだ?」

「何って小説書いてるの。」

「ああ、パパも若いころセカイ系のラノベにはまっててな。」

「そんなことより、ミレイ。今日はあなたの誕生日でしょ。」

「そうだ。パパからミレイにプレゼント。四歳のお誕生日、おめでとう。」

 ミレイはプレゼントを開ける。

「なにこれ。」

「ナショナル製の十メートルHDML端子だ。」

「こんなの要らない。」

 この日、私はご主人様と出会った。


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