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2 雲ひとつない青空の下で

1限の授業が終わり、食堂館で時間をつぶしに向かうミツル。周りの人間関係が段々と明らかになっていきます。ミツルが頭の中で考えていることが少し陰キャっぽいですが許してください。

 朝の授業を終え、昼まで時間が1時間ほどある。2限は所謂空きコマというやつだ。月曜日の11時から12時までの間は、食堂館のラウンジで時間を潰すのが常である。


 雲ひとつない青空だというのに、無意識に下を向きながら歩いていた。


 無意識とは言ったものの、本当は意識的に下を向いている。理由は簡単、人に話しかけられたくないから。単に顔と名前が一致ししているだけの人に、代返を頼まれるかもしれない。友達と呼べるかわからない人の頼みでもおそらく受けてしまう。自分がどうにかすればいい。


————それに一番の理由は自分の容姿に自信がないことだ。


 普段マスクを着用しているのもそのせいなのだ。充実した人生を、という意味でミツルなんてありがたい名前をつけてもらったが、充実のかけらもない。親になんと詫びればよいものか......


 2歳上の姉からは下の中と酷評されている。


 しかし悲観的になっていても仕方がないので、心を無にして直向ひたむきに生きている。いや、下向きに生きているのかもしれない......


 食堂館まではかなりの距離がある。無心ですたすた歩く。


 食堂館に向かう道すがらある男とすれ違った。向こうはすれ違いざまに振り向き、大きく手をあげて口を開ける。


「よっ、ミツル」


 爽やかで通りの良い声で呼び止められた。


「あ、おう」


 下を向いていたせいで誰か分からなかった。急に声をかけられたので思わず変な声を出してしまう。


「なんだ、けいちゃんか」


 ちなみに声の主は相田佳あいだけい、小学生からの幼なじみである。中学、高校と違う学校だったが、大学で偶然にも再開した。そして同じ学科で授業を一緒に受けたりしている。まあ今日の1限には顔を出さなかったが。


 名前は女の子みたいなのだが、スポーツ万能、顔も端正で、成績も良し、という完璧なイケメンである。


「これから麻雀行ってくるわー」


 友人3人を引き連れて反対側に歩きながらそんなことを言ってきた。麻雀か、しっかり大学生してるなと感心していると、


「この前のプリント頼むね」


 きちんとしていれば王子様のような見た目なのに、髪の毛を明るく染めているせいで少しやんちゃに見える。ヤンキーっぽいのが持てるのは高校生までのはずなんだけどなぁ......やっぱり素材が良いとなんでもありなんだな、外見至上主義万歳。


「了解!」


 離れていくけいに承ったということを告げ、再び食堂に向かって歩みを進める。


 いつも通りプリントの管理は俺の仕事。俺の管理能力は凄まじいものでもらった配布物には受け取った日付をしっかりと記入して、単元ごとにまとめてある。もちろんわかりやすくまとめたミツルの一言メモ付き。


 この資料たちが試験前になると飛ぶように売れる。なんと末端価格3000円。いわゆる闇取引だ。なんて冗談はこのくらいにしておいて......


 食堂館に到着した。少し重い手動のドアを開けると、冬だからか室内と外の寒暖差でドアの隙間を風が吹き抜ける。エスカレータに乗りラウンジのある4階へとあがる。


 そしてラウンジの方へ向かうと四人掛けの机がずらりと並べてある。また壁際には一人用の席が設置されている。


 こういうときは入口から遠い席に座るに越したことはない。


 そう思い一番奥の席に向かい4人掛けの席に堂々と一人腰を下ろす。一人用の席に座らないのはぼっちだと思われたくないからであり、リア充どもの座る席を一つでも多くつぶしたいとかそんなことは考えていない。うん本当に。


 それに一番奥の席は眺めも良く青空がきれいに見渡せる。


「今日はこんなにいい天気だったんだな」


 そとをぼんやりと見渡しながらしばらく黄昏れてみる。正確にはまだ昼前なので黄昏るという表現は間違いなのかもしれないが......


 でも俺の人生自体盛りをとっくに過ぎてもう衰えてしまっているので、人生そのものが黄昏れているのかもしれないな。そもそも盛りなんて無論一度たりとも来ていないが。


 やはり一人の時間は最高だな。そう思っていた矢先、後ろから肩をポンポンとたたかれた。


「おはよっ、ミツル」


 落ち着きのある可愛らしい声がした......






新しい人物が2人ほど登場しました。最後に話しかけられた人物の素性については次のお話ですね。そもそも主人公自体の素性の全然明らかになっていないのですが、徐々にわかっていくのでご安心を。

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