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旧支配者の初手

さて、異世界に来たようだが此処は世界のどのあたりだ・・・?暗いな、すこし光るか。


 私は光ることができる旧支配者フレンズなのだ。人間ならば目も開けられないかもしれないがここいら一帯に人間の気配は無い。驚かせることもないだろう。


 ふむ・・?洞窟・・・いや地下迷宮と言ったほうが解りやすいな・・・の様な場所だな・・・壁は土でできているがそれほど脆いわけではないので触っても大丈夫そうだ。と、考え触って見ると壁が崩れ始めた。ややっこれはまずいと崩壊を止めるためにグールを呼び出す。


「お呼びでしょうか。我が神よ」

「崩落を抑えよ」

「御意」


 グールは私の命令に従い変遷「土支配」の呪文を唱える。少し変な力の流れだが、問題なくできている・・・異世界ではこれが普通なのかもしれない。しばらくグールの詠唱が続いた後崩落は止まった。


「終わりました」

「良い働きだ。何か望むものはあるか」

「御身の御力になりたいと思います」

「許す」


 いつもの様に信仰深い者に近寄り呑み込む。うむ。力に変換したな。これで良し。私は信仰深い者は大好きだからな、なるべく希望を叶えたいと思っている。なんと優しい神なのだ、自分で自分を称賛したくなるほど慈悲深いな。うむ。


 崩壊は止まったものの現状が好転している訳ではない。どうしたものかと考えてすぐ妙案を思いつく。そう、私は転移ができるのだから転移してしまえばいいはないか。この迷宮の様な洞窟は中々に私の好みではあるが、しかし如何せん供物が無い。無くても問題は無いが私はこの世界により美味な供物を探しに来たのだ。ここに住んでいては本末転倒もいいところだ。では、転移するか。

   

 転移した先はこの洞窟の真上だ。どうやら地下数千はある洞窟に居たらしく少しMPが減った。まぁ、気にすることもない。辺りを見回すと広大な草原だった。なかなかに風情があるな。ここにグールの町を作るのもいいかもしれない。いや、良くないか?人間はなぜかグールを敵視する傾向にあるからな、あまり容易く呼ばないほうが良いかもしれん。やめておこう。


 そんなどうでもいいことを考えていると一つの馬車が見えてきた。なにやら騒がしいな。「化け物だ!」やら「護衛を呼べ!」等と聞こえてくる。化け物?見当たらないがこの世界には生物学的に化け物と呼ばれる個体がこの辺りにいるのだろうか?きょろきょろと見回してみるがこの広大な草原には馬車と私の他に特に何もない・・・いやまて、ここは異世界。私たち神には無い知識もあるかもしれないのだ、容易な判断は己の身を亡ぼすとかなんとか昔遊んでやった人間が言っていたな。人間は神すら超える想像力を持っている。侮れないし、美味しい。ここは友好的に接してみよう。


「 Ph’nglui mglw’nafh Cthulhu R’lyeh wgah’nagl fhtagn 」

「ひっ・・・なんだこの心に響くような悍ましい音は・・・」


 なぬ?悍ましい?友好的に語りかけただけではないか・・・あ、言語が違うのか?そういえば人間は私と話すときはなかなか苦労していたな・・・これならばどうだ


「こんな所でどうした?化け物がいるなら私が退散させてやろう。私はこれでも強いほうだぞ」


 旧支配者の中でも私はそれなりに強い位置の神だ。化け物くらいどうとでもなるだろう。


「あひっ・・・え・・?あ・・?あぇ?」


 従者が気を失ってしまった・・・なぜだ・・・解らない・・・ハッ!そうだ・・・人間は脆弱な精神しか持っていないのだ・・・私が己の身をそのままに語りかけてしまえば人間の正気など消し飛んでしまう・・・その事をすっかり忘れていた・・・まずいぞ、後ろの馬車から他の人間が来る気配がある。どうしたものか?いや、とりあえず人間の姿になろう。まずはそこからだ。昔あったことのあるこの姿ならば問題あるまい。

 そそくさと自身の体を人間の型にしていく。やり方は簡単だまず人間の形に容器を作るのだ。そこに自身の体を再構築するように埋め込んでいく。この時の注意点なんだが方にキズが付くとそこからあふれ出る神聖な気配が伝わり人間に察知されてしまうらしい。感のいい人間は嫌いじゃないが、今は都合が良くない。いない様に神に祈っておこう。


「おや皆さん、そんなに武器を構えてどうされたのですか?」

「どうもこうも、従者が化け物だと俺達を呼んで、来てみればそいつは気絶してるとくりゃ、結論は一つしかないだろうよ」

 

 何やら物騒なことを言い出す。私は何もしていないのだが、どうやらこの人間達は私が馬車の上で気絶している人間になにかしたと思っているようである。何もしていないのに。


「いえ、その方が私を見るなりいきなり気絶したのですよ?私は何もしていません」


 事実そのままに言った。嘘偽りない。神が嘘を付く必要などないからな。


「じゃ、あんたはなんなんだ?こんなとこで何してる?一人だけなら盗賊でもないだろうが・・・旅人か・・・それとも冒険者か」

 

 冒険者!そういう類の者もいるのかこの世界には。美味そうな響きだ、探索者と同じ匂いがするぞ。これは良い情報だ。だが私は冒険者ではない。今の私は言わば人間でいうところの探索者である。これは譲れない。冒険ではなく探索をしにきたのだ。


「ん?いえ、私は探索者ですね。まぁ旅人でも構いませんが私は探索者と呼んでもらったほうが好きですねぇ・・・で、あなたたちは?冒険者と呼ばれる人なのですか?」

「あぁ、俺たちは冒険者だ。ランクも3とそこそこ名の知れてるパーティなんだが知らないか?「究明の者」ってパーティ名なんだが」


 ほほぅ・・・なかなかいい名前ではある。今の私にぴったりだ。だが知らんな・・・いくら神といえども別世界の矮小な人間が集まってできた集団の名前など知りもしない。


「この地には来たばかりで、聞いたことがありませんね。」

「あ、そうか?俺たちもまだまだってことかもしれないな・・・」

「いえ、まぁ私があまり世辞に疎いものでして。普段は供物を貪るだけでしたから」

「え?供物?王族か何かなので?」


 しまった。余計な事を言ってしまった。


「あぁ、まぁそんな所です。縛られる生活に飽きて飛び出してきたのですよ。一応腕には自信があるので」


 嘘ではない。うむ。嘘ではないな。


「なるほど、しかしそれならば従者の言う化け物はどこに?ここら一体は魔獣がいるという報告は最近されていませんからすぐわかるはずなのですが」

「私を化け物と間違えたのでは?」

「いえ、この従者の方も慣れているはずです。それにどう見ても人間のあなたを見て化け物だと焦燥した声で叫びはしないでしょう」


 めんどくさいことになってきたぞ・・・さて、どうするか・・・


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