第5話 勝負の行方っていうか、もうわかるよね
高橋教諭の授業をひたすら、真面目に聞いていた俺は、比較的
好きな分野だったし、苦も無く楽しみながら授業を受けていた。
高杉は、ひたすらお菓子の分量を考えながら、紙に書いたり、
時々、机に散らかった消しカスを俺の机から一つにまとめ捨てて
くれたり、いや、消しカスを集めて練り消しにして再利用してい
た。
どれだけ、世話好きなんだろうか。
ところで、千春の方はというと、寝ていた。
50分近くも寝るなんて、一種の才能かもしれんな。
高橋先生も、最初は注意していたが、面倒くさくなったのか
寝ていても、注意をするどころか
「この答えを、千春さん……は、寝てるし、前の席の」
「ぐーぐー」
「千春さん、寝てるなら返事しない」
こんな具合に、千春いじりを弄していた。
授業が終わると、千春は、すっと立ち上がり、俺の方に歩いて
きた。
「ふっふーん、どうかな、どうかな、私の眠りは」
「くっだらないと思ったけど、高橋教諭に怒鳴れても寝るお前
の勇士に惚れたよ」
「へへ、ほんと!」
なぜはにかむ。こちとら、嫌味を言ったつもりだが。
「審判、結果はどうだった?」
千春が、いまだ、練りけし作成マシーンと化している高杉に声
を掛ける。
高杉は、手を止めることなく結果を口にする。
「えーと、今回の勝負、圧倒的に千春の勝利」
「やったー!!」
どうして、こんな糞みたいな勝負でここまで感情をあらわにする
ことができるのだろうか。
「えへへ、私が勝ったから、私の命令を聞いてもらおうか?」
「そういえば、お前の褒美を聞いてんかったな、なんだ、俺ので
きる範囲になら、なんでもいいぜ」
そう言うと、千春はニタ~とした笑顔で俺の制服を掴み、どこか
へ連れそうとした。
嫌々だが、勝負に負けとなりゃ、従うを得ない、しぶしぶ付き合
う俺であった。