エピソード フォルム番外
僕には、昔一人の友達がいた。
中学校に進学し、ある程度月日が流れると自然と、クラスの緊張感も解け「輪」とい
うもの、つまり友達というものが形成される。
元々、僕はそんなに友達が多い方ではなく、一人の方が気楽なもんだと思っていたか
ら無理に集合体の塊である友達というものを作らなかった。
でも、それはクラスという集団に属している以上、彼らの笑い声や楽しそうな喧噪を
聞いていると疎外感を感じ、その中に入りたいと思う気持ちが少なからず芽生えていた
。
そんなある日、数少ない友達の一人が、僕が唯一所属していたグループを離れその「
輪」に加わることができ、溶け込むことに成功した。
そう、最初の方で説明したその友達だ。
彼は、巧みな話術と空気が読めて面白い奴だと集合体から認識され、仲間として迎え
られた。
それは、僕に対しての反逆……いや、無理に考えなくてもいい、今は新しくできた友
達とつるんでもらって、後々紹介してもらえればいいそう考えていた。
だが、何週間もすると全然顔を合わせなくなっていた。
結論から言うと、その子からしてみれば俺なんか友達ではなく、繋ぎの存在だったの
だ。
友達がいないと思われるといじめが起きるだから、隠れ蓑がほしかっただけだと……
今まで、ずっと二人で一緒だったのに、突然離れると寂しいと感じるのにそう時間は
かからなかった。
僕は、自分が言っていたことをお構いなしに、最大限の勇気を振り絞ってその集合体
に話しかけた。
「………あ、あの」
声が小さいかと思っていたが、良かった、聞こえているみたいだった。
僕の存在に気が付いた、集合体のボスらしき男が僕の前に立ちふさがった。
そのボスは、話の腰を折られて不服なのかムッとした尖った表情をしていた。
「何かようか?配りもんならよ、机の上に置いといてくんない?」
僕がプリント配って廻っているものだと勘違いしているようだった。
言え!言うんだ!僕の心がそう吐き出しかけている。
彼らは、僕の言葉の先を待っている。
なぜ言えないんだ?簡単だろう?友達になりませんか?そういうだけで良い!
そう、分かってる。だが、本能というか僕を構成全てが拒んでいるように感じた。
「おい、行こうぜ。こいつきみわりぃ」
ボスが苛立ち交じりに言ったその言葉に、他の皆もそれについていく
その中に友達も混ざっていた。
彼も周りの取り巻きたちと同じ気味悪がるように僕を見ていた。
やめてくれ、そんな目で僕を見るな!
木霊するように僕の頭をグルグル回る。
なぜ、僕を裏切ったんだ!僕が何をしたんだ?
そう、言いたい。でも、折角作った友達の輪をぶち壊したくない。
そうか、分かった。何故、僕が言えなかったのか。
それは………。
「分かった!実はその子とホモ仲間だったから、周りにばれたくない関係だったんだ!」
「アホかいな!ホモげーじゃないんやで、一応、青春系って書いてあるやろ!」
「いちおーだろ?なら、微塵の数パーセントの確率でホモ要素があっても……」
「まったく、宗治ちゃんは、どうしてそう変な方にもってくんのかな?」
「そういう、ちーちゃんはなぜ、涙をこぼしてるのかにゃ?」
「こういう、演出はお涙ちょうだいが決まってんのよ、ここ以外でどこで泣くのよ?」
「だから、主人公と友達が結ばれるところじゃないかにゃ?」
「うわ、きつ」
「にゃにゃにゃ!突っ込みが、直球すぎるんですけどーーー!」
僕の作ったシナリオ、もとい空想ゲームの産物がこのエロゲ部に波乱を呼んでいた。
即興で作れと部長に言われ、30分で作った作品がこの荒れ模様である。
元凶を作った俺も悪いが、まさかホモという発想があったか、なるほどなるほど。
っていうか、なぜ俺が、こんな活動をしているのか。
それは、ある6月のころだったーー
「っていう風に、ラノベでは回想が始まるシーンにいくんだよにゃ?」
「うっさいですわ!黙って聞いていりゃ、今から読んでる読者を置いてけぼりにして
私たちの活躍を、いやでも聞かせるところなのですから、あなたはだまっていなさい!」
「お、おう!」
えーと、まあ、進めていきますが
ここで一応、この部の存在理由と仲間たちとの出会いから入っていくことにする。