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放課後文学日誌

作者: 結城野菜

あらすじの通りでございます。

この小説によって、天気予報を見逃した、占いを見忘れた等といった苦情は一切受け付けておりませんのであしからず。


 とある階段下の部室。

 そこは今、危急存亡の秋を迎えております――と言えば、この酒井史《ふみ》の変哲も無い日誌に目を通してくれる御方も増えるではないのでしょうか?

 ほら、時は199×年世界は核の炎に包まれた……! みたいに。

 まぁ、そんなことさて置き……。


「諸君、私は昨日驚くべきことに気づいてしまいました」


 明らかに人為的に引き起こされた現象を、あくまで超神秘的な現象のように反応する某探検隊隊長のような愕然とした表情を浮かべ、安楽椅子に寄り掛かる黒髪の少女が言い放ちます。


 それに対し……。

 ま~た始まった、部長を除く全員――といっても二人ですが――が心中でそう呟いたでしょう。


「何ですか部長、また、既存の名作に大して根も葉もない難癖付ける気ですか?」


 代表として私がそう厭味ったらしく告げます。

 ですが、皆も既に理解しているように、この部長という生命体は、数多の保育士の消火器科のお医者様の元へとデリバリーさせた、人と屏風は直ぐには立たずを地で行く御方。

 私の言葉など、立てこもり犯に対する「お母さんが泣いてるぞ~」という何ともベタでテンプレートな台詞並みの効果しかないのです。


「まぁ、そう言わないで聞いてみなさい」


「へぇ、そこまで言うなら聞かせてもらいましょうか、その目から鱗の新事実とやらを」


 副部長の河原木英美里さんが顎を絡めた両掌に乗せし意地の悪い笑みを浮かべます。


「なら、言わせてもらうわ」


 部長である黒塚流華さんはその自慢の黒髪を手の甲で靡かせると大きく、息を吸い――


「アン●ンマンは現代の日本政治を如実に風刺していると思わないかしら?」


 …………番組の予算削減の為のCMの如く引っ張って、それですか。


「で、具体的にどういう点が、日本政治に該当するんでしょうか?」

「まさか、バイ●ンマンとの対決が自●党と民●党の様相を呈しているとでも言う気? ――まあ確かに昨今のサザエさん現象染みた国会中継の事に似てなくも無いけど……」


 親友(買収)である英美里さんが、妥当な線を提示し、私もそれに同調するように頷きます。

 しかし、部長はそれを一笑に付し、哄笑を浮かべます。

 ああ、あれに一発100円って看板を添えればすごく儲かりそうです。


「そう、頭が挿げ替えられるという点よ!」

「予想の斜め上を越えていきました!」


 部長は鼻息荒く続けます。


「そう、ピンチになるとどこからともなく飛んでくる頭……まさしく今の相次ぐ首相交代を風刺していると思わないかしら?」

「ま、まあ……確かにそうね。言われてみればそうかもしれないわね……」


 苦笑を浮かべて玉虫色の返事を返す事が精一杯な英美里さん。


「ふ、ようやく分かってくれたかしら……まず、アン●ンマンの胴体はこの国の体制を暗喩しているわ。そして頭は首相。バタ●さんは二世議員、ジャム●じさんは……諸外国よ」

「……何か、いきなり話が憂鬱になってきました」

「――じゃあ、バイ●ンマンは? 普通に野党?」

「いえ、違うわ、バイ●ンマンはそのまま『悪』よ。ある時は不景気、またある時はスキャンダルを起こした議員、時と場合によってそれは変化するわ」

「……で、その『悪』に負けそうになったら頭が替わると言いたいのですか?」

「そうよ!」


 無い胸を堂々と張る部長……まぁ強ち的外れでは無いんですけど……や●せさんがそんなこと考えてる訳ないですし……。


「しかし、ジャム●じさんはどうして諸外国なのかしら?」

「――? えっ、だって、今の総理大臣ってどいつもこいつも特ア――」

「ストップよ、流華」


 英美里さん、ナイス!


「正確には米帝よ」

「余計に悪化しました!」

「あっ、そうとも言えるわね……そう考えると財務省も候補に入れても良いかもしれないわね」

「……ああ、どんどんジャム●じさんが悪の権化に成っていきますね、いい人そうなのに」

「史……人とは誰しも仮面を被っているの、金メダリストも裏では強姦行為、煌びやかなアイドルも裏では枕営業。そう、この世は不純矛盾汚物に満ちているの!」

「そんな事実は嫌あぁぁぁぁ!」


 私の絶叫が校内中に響き渡ったところで、今日の日誌は終了です。

 これ以上、子供の夢が砕かれる前に撤収するとしましょう。


 


 

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