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鮪乃山さん

仕事ってやりがいがあったほうが続く、って父さんが前に言っていたけど、確かにそうだ。

単に穴を掘っているだけだけど、ドロドロになりながらでもなんだか夢中になる。

初日だからと言うのも有るかもしれないけど俺はそう思った。


それにしても・・・・



「 キャサリ〜ン。」


黒さんのあの声は何とかならないのだろうか?



もしかしてこの公園に出る変な人って・・・・



そんな事を考えていると、上に居る黒さんから声がかかった。


「 清水く〜ん、ちょっと来てくれない?」


「 あ、はい。」

何だろうと俺はもう一度ろーぷをよじ登った。



「 何ですか黒さ―――――――――――うわぁ。」


ビックリした。


一回落ちた。


なんか居たような・・・・しかもデカイ・・?



俺は尻餅をついてしまった。

「 如何した清水。」

張さんが心配して来てくれた。

「 清水く〜ん、大丈夫か〜い?」

上からは黒さんの声が聞こえた。

「 すみません。何かビックリしちゃって・・・。」

俺の言葉に黒さんは吹き出した。

 

「 マグろん初日から新入り君ビビらせてるけど如何する?」

そう言いながら誰かをバシバシ叩いている。


『マグろん』と言うことは相撲をやっていると言う『鮪乃山』さんのことだろうか。

ならばさっきのデカさも納得できる。


俺は気を取り直して穴の外に出た。


覚悟して見ると案外平気だった。


いや兎に角デカイし・・・・・・・(縦にも横にも)


そこに居たのはまぎれもなくお相撲さんだった。

事務所にもらった作業着がきっと小さかったんだろう(黒さんも着てないけど・・・。)


えーっと


褌一丁だった。


相撲をする格好そのもので鮪乃山さんは立っていた。


「 あ、新入りさんですか、こんばんわ。」


体のデカさからは想像できない腰の低さだ。


「 どうも始めまして清水です。」

鮪乃山さんにつられて俺も腰が低くなった。


「 さっきは驚かせちゃったみたいですみません・・・。」


「 良いんです。俺が勝手にひっくり返っただけですから。」


俺と鮪乃山さんの会話はペコペコという効果音がしそうなくらいだ。




「 さぁ。全員揃ったところでいっちょやるか。」

張さんは手を叩きながら俺たちに向かっていった。


「 イイですねぇ。キャサリンも喜びますよ。」

 ね?と言いながらキャサリンの横に黒さんが座った。


「 そうですね。せっかく新入りさんも入ってくれた事ですし。」

鮪乃山さんも意外と笑顔。(尚且つ爽やかだ。)


いまいち状況の飲み込めない俺を残して張さんたちは何やら準備を始めた。




「 お〜い、清水くぅぅん。こっちおいでぇ。」

語尾を変に伸ばして黒さんが俺を呼んだ。


「 あ、はい。」




3人の輪の中には・・・・・・・・・。



一升瓶。


スルメ。


カップ酒。


コーラ。



「 さ〜て。今日は飲み明かすぞ!」


張さんの言葉を合図に何故か宴会が始まった。


「 歓迎会だと思ってね♪」

始まったばかりなのに黒さんは既にノリノリで語尾に『♪』がつきだした。


「 清水君は一応未成年だからコーラで我慢してください。」

唯一俺を歓迎するきでいるのって鮪乃山さんだけなんじゃないのかな・・・。


後の2人はただ飲みたいって感じがあふれてるような。



でも、何より歓迎してくれる(?)張さん達の気持ちが嬉しかった。



如何して事務所の人達はこんな人達と縁を切りたがるんだろう?



俺の疑問は、


「 鮪! 未成年なんてこと気にしてる場合じゃねぇよ。飲め、清水。」


と言って俺のコーラに酒をぶち込んだ張さんの声に掻き消された。




お酒は20歳になってからです。

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