黒さん
頭をさすりながら張さんが穴から出てきた。
すかさず俺は謝った。
張さんは一見とても良さそうな人に見えるけど起こったらきっとすごく怖いと思ったからだ。
「 す、すみませんでした。」
ペコペコ謝る俺を見て張さんは
「 んな痛い訳じゃねぇんだから謝る必要なんかねぇよ。」
そっぽを向いて言った。
照れてる・・・・・・・・・・・・・・・・?
気まずい沈黙の中でまず口を開いたのわ入り口に立っていたあの男の人だった。
「 ねぇ、だから君元気してる?」
張さんの事が気になってたせいかこの人のことを気にしていなかった。
「 え、あ、あの・・・・・。」
俺が答えに困っていると張さんが割って入ってきた。
「 おい黒! 清水に声かける前に俺の事心配しろよ。バケツ当たったの知ってんだろうが。」
張さんの言葉を聞いて『黒』と呼ばれたその人はヘラヘラ笑って
「 まぁまぁ棟梁、そう怒らないで下さいよ。新入り君をかまってあげるのが先輩の役割でしょ。」
と変な理論を立ててもう一度俺に向き直った。
「 新入り君は清水君って言うんだね。僕名前は『 黒革の手袋 』黒さんと呼んでくれ。」
そう言いながら
黒い軍手を手にはめた・・・・・・・。
「 あ、あの、それ軍手なん―――――――」
俺が言い終わらないうちに黒さんは、俺の口をふさいで耳元でささやいた
「 その先言ったら君はこの世にはこれ以上居れないよ。」
・・・・・・・・・。
( そんな怖い事笑顔でささやかないで下さい!!)
心の中で力いっぱい叫びながら首をガクガク縦に振った。
『 きっと黒さんは怒ったら張さんよりも100倍以上怖い 』
俺はそう頭に刻み込んだ。
それ確認したかのように黒さんは頷き口から手を離してくれた。
「 手洗いまねをしてごめんね。つい禁句ワードには反応しちゃうんだよ。」
黒さんはそう言いながらヘルメットをかぶった
何故だかラフな格好と良くあっていた。
「 黒よぉケンカ売るよりマグロはどうしたんだよマグロは。」
マグロ・・・・?
確かに張さんは『マグロ』って言ったよな
黒さん釣りでもしてくる約束してたのかな?
「 鮪乃山君ですか? 今日は稽古があるから遅くなるそうですよ。」
そう言ってから黒さんはに捕まって穴の中に降りていった。
「 もう一人誰か働きに来てるんですか?」
俺は張さんに聞いてみた。
「 あぁ? マグロの事か、あいつ相撲やってるからチョクチョク遅れんだよ。」
「 す、相撲ですか・・・・・。」
「 あぁ、あいつが居るから力仕事はしなくてすむんだ。」
ったく腰がいてぇのにしかたがねぇな、と言いながら頭をかいている張さんを背にして
こ、個性的だぁ・・・・・・・・。
一人オレは拳を握っていた。