作業着
履歴書を届けに行ったときも、事務所の人と教頭はうれし涙を流してた。
「 ありがとう、ありがとう清水君!!! バンザーイ、バンザーイ!」
事務所の人が総出で万歳をしてくれた。
なんだかだんだん悲しくなってきた。
一体この人たちは何でこんなに喜んでいるんだろう?
バイトの内容よりこの事務所の人たちを俺は疑い始めた。
「 あ、あの〜 いつからバイトに行けばいいんでしょうか? 」
一秒でも早くこの万歳の渦から逃げ出したかった俺は、
話を切り上げるために教頭に聞いてみた。
万歳のBGMをバックに教頭は答えた。
「 今日からでも良いけど、それじゃあ大変だと思うから、明日から行って下さい。」
ついでに鼻水を啜りながら、「 これ着てってね。」と作業着を渡された。
よく見かけるグレーの作業着だった。
これを渡されて結構気合が入った俺は、
「 精一杯頑張ります!」
とスゴイ勢いで深々と頭を下げた。
机に頭をぶつけた。
あいたたたぁ。
ぼくが頭を下げたのにさらに感動したのか、
万歳のBGMが大きくなった。
よかった頭をぶつけたのはバレてない。
ホッと胸を撫で下ろしつつ俺は事務所を後にした。
事務所を後にして階段を下っていると、また大きな歓声が聞こえた。
ファーストフード店を覗かなくても分かる、
事務所の人が騒いでるんだ。
しかもとびっきり喜んでるし・・・・。
「 宴会だ! 宴会だ!」
って声も聞こえてきてる。
本当にどうなってるんだろうかあの事務所は・・・・。
っていうか、恵比寿公園ってそんなにスゴイ所だったの!?
俺は不安を抱えたまま家路に付いた。
これから始まる苦労も知らずに・・・・。