影
どのくらい待ったんだろう。
まだ日が出てないから3時くらいだろうか。
相変わらず黒さんと鮪乃山さんは何も言わないし・・・。
ただ一点を見つめる黒さん。その瞳が一瞬何かを捕らえ輝いた。
「 来た。」
聞えるか聞えないかのとても小さな声だったと思う。
それでも俺には大きく聞えた。
黒さんの見る先、工事現場の近くに1つのの黒い影が近付いていた。
多分ずっとこんな暗闇の中に居なかったら見えないとおもう。
闇に解けそうな不自然な影は辺りをうかがっているようだ。
辺りに人がいないと判断したのだろうか、(俺たちはいるけど)
その影は俺たちが仕事をしている穴にゆっくりと向かっていった。
(もしかしてアイツがあの足跡の犯人か?)
影が穴の中に入ろうとかがんだ。
「 そこまでだっ!!! 」
言われただけで背筋がピンっとしてしまいそうな怒鳴り声。
それと同時に影に向けられたもにものすごい光。
闇に慣れた眼にはそれは恐ろしくまぶしくて、眩んだ。
「 なに! 」
そう叫んだ影。もとい、よく見ると男は眩しい光をさえぎるように腕で眼を覆っていた。
「 竹田正志!! お前のは強盗致傷罪で逮捕状が出ている! 観念しろっ!! 」
光を背にして男に逮捕状らしき紙をつきつける男……
「 ちょ、張さんっ!!!!??? 」
逮捕状をつきつけている男は間違いなく張さんだった。
いつもの汚れた作業着ではなく、よれよれのコートをまとった張さんだ。
俺の見間違いじゃない。
「 ビックリしたからって、あんまり大きな声出しちゃ駄目だよ清水君。」
こんな状況でも黒さんの調子はいつもと変わらない。
「 いやぁ。何回見ても棟梁のあの姿は惚れ惚れするねぇ。ね!まぐロンっ。 」
無言で頷く鮪乃山さん。
俺は開いた口がふさがらない…。
「 くそっ! 」
そう言って、張さんに竹田と呼ばれたその男は公園から逃げ出そうとした。
すると、一体どこに隠れていたのか、警官がぞろぞろ茂みの中から出てきて男を捕まえた。
一瞬の出来事に俺は呆然としていた。
すぐにパトカーの音が遠くからしてきて、男は連行された行った。
一体どうなっているんだ!!?
12話目を投稿してから4年…4年!!?
そりゃ中学生が春から大学生になるわけですね…。