足跡
俺に歓迎会(?)が終わって、
俺が此処恵比寿公園で働きだして5日が過ぎた。
ようやく仕事には慣れてきて、張さんに拳骨を食らう回数が少なくなってきた。
(ちなみに1番最初は、バケツを頭に落とした翌日だった。
たんこぶができたのに腹を立てたらしい。)
相変わらず黒さんの奇声には慣れないけど・・・・。
いつもの様に穴の中に入って、掘り進もうとしたときだった。
何かがおかしいのに気がついた。
足跡が多いのだ。
俺と張さんは事務所指定の格好だから大きさ意外は全く同じの足跡。
黒さんは黒いスニーカー、だけど暫く見ているから見間違えるはずがないし・・・。
鮪乃山さんはいつも裸足だ。間違えない。
鮪乃山さんが靴でも履いて来たのかと思ったけど、体が重いのであまり中に入ってこない。
しかも今日はまだ来ていない。
「 張さん。此処誰か知らない人が入ってきてるみたいですよ。」
地面をじっと見てしゃがみ込んだままもう穴を掘り出していた張さんに言った。
「 あぁ? なんだそりゃ。」
そう言って俺の近くに寄ってくる。
「 此処見てください。こんな靴を履いた人此処にはいませんよね。」
「 そうだな。」
張さんは一瞬見たこともないような真剣な眼差しになった。
「 張さん・・・・?」
「 そんなにきにする事ないよぉ。」
いつの間にか降りてきた黒さんが突然肩を叩いていった。
(心臓止まるかと思いましたよ。)
「 そうだな。 不良がたまに公園に来る事だってあるからな。」
黒さんに視線を奪われているうちに張さんはいつもの顔に戻って言った。
「 そうなのかなぁ?」
何処か引っかかるところがあるんだけど気にしていては仕事にならないので
俺は無理やり足跡の事を追い出した・・・・・。
つもりだったんだけど
張さんはいつもよりも口数が減ってなんだか余計におかしかった。
見た目よりも不器用な張さんのおかげで何かを隠している事がわっかったんだけど、
俺もそんなに機転がきくわけでもないので、その『何か』は検討が着かなかった。
いつも有り余るくらいの元気を拳でくれる張さんだからこそ
俺にそれを話してほしかったのかもしれない。
黒さんと鮪乃山さんもあまり喋らない張さんには干渉しないらしく
更に工事現場の空気は重くなった。
隠し事をされるのがあまり好きではない俺は、そっと張さんを監視することにした。
何かの手がかりになるかもしれない・・・・。
言っている事とやってることが全く逆のような気がするのだけど・・・。
まぁ、良いだろう。