第6話 2のダンジョン
今回の話の内容的に警告タグを付けさせて頂きました。ご了承ください。
2のダンジョン、または3のダンジョンでも良いけど。最初のダンジョンとはガラッと難易度が変わる。そりゃそうだ。ひと昔前までは最初のダンジョン以外全て未踏のダンジョンで、あくまで2と3はそれぞれ踏破した冒険者が現れたってだけの話だ。無論、どちらも比較的攻略しやすいダンジョンであることには間違いないらしい。2のダンジョンが魔力ほぼ無効、3のダンジョンは物理属性攻撃無効というペナルティーしかないからだ。
いや、これだけで十分驚異なのだが、他のダンジョンの驚異に比べれば簡単と言うわけだから、他のダンジョンが今だ未踏なのも肯けるだろう。因みに、2や3のと着いたのは攻略された順番であり、当然何が得意かによってどちらが攻略しやすいかは大幅に変わる。例えば魔力のみに特化したエルフなら3のダンジョンの方が攻略しやすいだろうし、俊敏と力に特化した大虎族は2のダンジョンから攻略するだろう。
ただ、当然ながら片方攻略出来たからさぁ未踏のダンジョンとはいかない。だって次に簡単なダンジョンが魔法含め攻撃ほぼ無効のダンジョンなんだから。せめて2も3もクリアした冒険者じゃないと儚くその命を散らすだろう。両ダンジョンの最初の踏破者みたいに。
で、結局何が言いたいかというと、ここでレベル上げても魔力使える様にならなきゃ俺オワタってことだ。けっ、やってらんねーぜ。レベル上がってるのに何が変わったかちっともわかんねーしよ。
グダグダと考えごとをしながら石のゴーレムを切り捨てる。うん、スローモーションの物体切るの楽だけど、正直単純作業辛いです。だってかれこれ最短距離で50階は降りてるのに、全くやること変わんないんだぜ。
「はー、変わるのはゴーレムの色の変化だけかぁ。ってか、いつまで壁光ってるんだろう。最初は魔法使えない事を悟られない為の罠だとしても、ここまでくれば只の親切と変わらん」
全力で面倒だけど、魔法が使えないのなら仕方ない。ってか、使えなくはないけどマッチの火位の火とか、その規模の魔法しか出来ない。うん、魔力効率が良いなら別だろうけどねー。っても、ここの空気違うから試す価値はあるかもしれないけど。
でも、実は直接流すと効率上がる俺の魔法でアイアンソードに復元の魔法常に掛けてるんだよね。じゃなきゃ多分とっくの昔に折れてるし。正直このくらい効率良ければ楽だ。どのくらい効率の差があるかというと、坂道を匍匐前進しながら下っていくのと、自転車で降りていく位の差が可愛く思えるほどある。
うむ、マジで外に出そうとすると物凄い抵抗があるんだよなぁ。皆それを操ってるらしいけど……うむ、魔力0なのもほんと頷けるよねー。だってそれが邪魔でしかないなんて。エーテルとかマナとか言われてるけど。じゃぁ俺ほんと何使って魔法使ってるんだろう。はなただ謎だ。解明するつもりが皆無だから、多分ずっと謎だろうけど。
うむ、縦に切ってもまっぷたつ。横に切ってもまっぷたつ、勿論斜めも同じで、この効率の良さに最初感謝してたけど、単純作業好きだけど……限度あるわ。はぁ、色々考えるのも辛くなってきた。
まぁ、唯一感謝出来ることは。ゴーレムの触り心地が素晴らしく感じたり、何故か強烈な音が魅力的に聞こえたり、ドロドロに汚れてっいや、あれは溶けてたのか。あれが良い臭い出してたりとか。そういう事に対する耐性を付けるのに非常に役立った。もう爺様大好きとか思わないんだからね!
いかん、病んで来たかも。かと言って宝とか見つけた日にゃぁギルドに殆ど持ってかれるしねー。まだ、宝漁りもおあずけだよなぁ。信頼勝ち取る為には程々に集めるつもりではいるけど。っても、既にゴーレムから出る魔石で袋パンパンだしなぁ。ってか、時間の経過もわかんなくなってきた。
2のダンジョンって何回迄あったっけ? あぁ、確か128階かぁ。3のダンジョンが72階だからずいぶん深いなぁー。ははっ、1日で踏破って無理があったかも。ってか、今何日目だろう。お腹減ったなぁ。まぁ、まだ保存食あるし飲み物も十分あるけど。
「えぇい、面倒くさい! 喰らえっ、マッチの火ぃ! って。えええぇぇぇぇえええええええええ!?」
目の前が爆炎に包まれましたよどういうこと? あぁ、分かっちゃった。エーテルとかマナとか殆どないからすんなり変換されたんだなぁ……ってちょっと待って。俺普段瞬きするより力抜いててもこれ以上の爆炎出せたよ? うわぁー、チートとか思ってたけど。あれでも制限ついてたんだぁ。怖ぁっ。
とはいえ、ブスブスとゴーレムが焼きゴーレムになるだけで、炭化までは足りないのでそのまま切る! うわぁ、メチャ熱い! 俺自爆! うわぁ、最悪だぁ。
「くそー、無駄に汗だくになるし。お風呂入りたいよー。流石に加減分かんないのにここで使ったら俺下手したら死ぬよー。死にたくないよー」
はぁ、これじゃぁちゃんと最初のダンジョンで100くらいまでレベル上げるべきだったかも。普通のヒューマンはそうするんだし。多分効率的にも悪くなかったはずだしねー。安全第1。っても、こっちじゃ効率いいってレベルじゃないくらいレベル上がってるんだけど。マジで化け物みたいなステータスになってるし。はは、これマジで並みの魔人とか竜人族超えてるんじゃね?
「きゃぁああああああああああああああ! いやぁあああああああああああああああ!」
響きわたる超耳障りな声って、いかん気がそれてたちゃんと相殺しないと。うん、無感情になれた。って事は素晴らしい声ですね。わかります。
「とか考えてる場合じゃねぇ!」
全力で駆け抜ける俺。障害物何てありゃしませんよ。で、階段を降りて何回か道を曲がりつつ多分最短で目的の場所にたどり着けた……奇跡ってあるんだなぁ。普通なら絶対何度か遠回りになってるはずだよね。
「た、食べないでえぇええええええええええ!」
目の前で叫ぶ緑髪の超ロングツインテールのエルフ。……ツインテール!! 素晴らしすぎる。これはもうテンション滅茶苦茶上がってきましたぜぃ。
兎も角、俺様の必殺フィリップアタックで娘さんのハートはメロンメロンイヤンだぜ!
「おろろっ」
俺と緑ツインテールの間を阻んでいたスライムみたいなネバネバしたやつを斬った……のに斬れない。うん、忘れてたけどスライムって普通に物理攻撃殆ど効かないんだった。てへっ。って、中に何か女の子が取り込まれてる!! これはさっさと助けないとヤバい! 何がやばいって既に皮膚が溶けてる!
「おりゃぁあああああっ、て逃げるな!」
俺を完全無視するスライム。ってか、緑ツインテールを追い詰めてるんだな。うん、しかも曲がった方行き止まりで恐慌状態になってるもん。ってか、体中から色んな液出てるなぁ、うわぁ。ばっちぃ。
や。もし心が通じてた聖水とか思うんだろうけど、いくらなんでも初対面の女の子にそこまでは思えない。見た目の可愛さ何て所詮そこまでだしね。中身が可愛いとか分かってたらこれまた違うけど。
「ああああああああああああああああああああああああああ」
うわっ、壊れたか!? これは溶けてる女の子助けるより先に彼女を助けなきゃ多分再起不能になっちまう。これはいくらなんでも寝覚め悪いし。こんだけ綺麗な女の子から出た液なら我慢できる。どうせ生暖かい液とか幸せに感じるはずだろうし……うぅ、これで目覚めたらほんとどうしよう。
心で涙しながらスライムを避けて対岸に飛ぶ。いや、対岸って表現おかしいな、ってそんな場合じゃねー。
「大丈夫だ!」
「ああああああああああああああああああああああああああああああ」
ぎゅっと抱きしめる俺に全力で抵抗すぶっ、髪イタッ。 か、髪が当たってるぅ痛い痛い痛い痛い。っちょ。てめぇ落ち着け。
うわぁ。これはヤバい、何がヤバいかって俺もスライムに呑まれそうな距離まで奴が詰めてる。畜生!
「喰らえっ!」
ごあっと広がる爆炎。うむ、威力は最初使った時の2倍で現在使用出来る最強の魔力。これ以上使うと俺普通に相殺の方に回してる魔力まで手を出さなきゃならなくなる。さぁ、どうだ? ……中の女の子ちゃん。死んだらごめんよ。
っと、よっしゃぁーーーーーーーーーっ。上手い具合にスライムだけ蒸発してる……女の子から軽く煙上がってるのはスライムが蒸発したからだだと思っとこう。ってか、蒸発するなら普通に火傷あわわわわ。そ、蘇生してあげなきゃ死ぬ!
俺は緑ツインテを抱いたまま慌てて蘇生に向かう。って、いくら効率良くなってても本当に死んでたら無理だよ? やったことないから分かんないけど、普通に無理なはず。そこまで化け物じゃないよね?
「か……み、様?」
「残念、俺は只のフィリップだって、この子の蘇生するから暫く黙ってて!」
ぱっと声の方を見ればぼんやりした表情の緑ツイン。ってか、マジ時間ないんだって。うおぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおおっ。俺の右手が真っ赤に燃えるうううううううぅぅぅぅぅ。
ぱぁっと光が焼けただれてた女の子を包む……うぅ、近づいたら本当にケロイドみたくなってたし。ごめんよぉー。っと、おぉー、自分でしといてだけど、物凄い勢いで治っていく! 良かったァ。この子も緑髪エルフか。ってか、どっちもザッエルフって風貌だなぁ。滅茶苦茶綺麗なのは良いけど、俺には顔の区別が分かんない。東洋人が西洋人を、西洋人が東洋人を分からないのと同じことかな? いや、治した方はショートだし、胸はナイ乳だし、十分区別はつくけどね。
「うっし、これで大丈夫かなぁ……うむ、剥き出しの裸素晴らしい!」
いや、全裸じゃないけどね。殆ど装備も服も残っちゃいませんことよ。あははは、見ろ、最高のショーだとは思わんかね。
「裸の方が良いですか?」
「はっ? って、ちょい待て!」
何故か脱ぎ出そうとする緑ツインテール。いや、惜しいけども。惜しいけども今はそれどころじゃない。大事な事なので2回略。
「何不思議そうな顔してるの? ってか、あんた何でここにいるんだ?」
「ここをクリアして3のダンジョンに行くためです」
あー。残念無念。そりゃそうだよなぁ。3からクリアしてりゃいくらなんでもあの程度のモンスター対応出来る筈だもんな。まぁ、だいぶ凶悪だったけど、3も同じ位凶悪なのいるはずだし。うん、こいつやっぱりエルフ様って奴か。
「はぁ、俺あんたみたいな人嫌いなんだよね」
絶句するクソエルフ。ちっ、こんな奴に胸がときめいてたとか、やはり中身は重要だなぁ。
「なんで……ですか?」
……何か、本当に捨てられた子犬みたいな感じで聞いてきたから、まぁ答えてやることにする。へっ図星刺されての反応でも見てやるよ。
「どうせあんたらは自分の力を過信してたんだろ? ギルドのお姉ちゃん達のアドバイスも、どうせ下等なヒューマンからの戯言だと相手にもせず。違うか?」
「……違いません」
「けっ、ワザとらしく凹んだ振りすんなや。ほんと俺は理由なく相手を見下げる奴は大っ嫌いなんだ。別に種族とか気にしてないぞ。どんな種族のどんな身分の奴でもだ。
とは言ってもエルフってそんなに偉いのかねぇ? 俺にとっちゃハーフエルフたんやダークエルフたんの方が可愛いんだが。勿論可愛いエルフたんもいるが少なすぎる。お前のようなクズが多いからな」
やばい、全然言い足りない。ってか、どんどん絶望に顔を染めるこいつが何故か物凄くむかつく。視覚からの情報だから間違いなくこれは俺の本当の感情だな。
「何だ? 言いたいことでもあるのか?」
「あります」
ん、やけに力強くって、ええええええええええええええええええええ!?
「本当に助けて頂いてありがとうございました。この御恩を返す為なら何をしてもされても構いません」
膝まづいて両手を胸で組み頭を地面に付ける。この姿は貴方に全てを捧げますという誓い。奴属すら生温いほどの屈辱ですらあるはずのそれをやってのけ。顔を上げれば真摯に俺を見つめる緑ツインテール。
おかしい、普通のプライドに塗れたエルフってこんな事死んでもしないはず。それは耳を触らせる禁忌より遥かに重い重罪のはずだ。
とりあえず耳を撫でてみる。うむ、全然嬉しくないし触り心地良くないのが悲しい。この子に出来るかは分かんないけど、感覚戻ったら是非もう一度エルフの耳を撫でてやる。必ずだ!
「……御慈悲をありがとうございます」
あるぇー、これ物凄い性感帯にもなってるって聞いてたのに、何か目をウルウルさせて感激してるのですが……いや、何となく分かってるけど、あえて間違いの方を言おう。何で興奮してるの? 変態?
よし、満足。さて、がらじゃないし、でも、多分言い当てた事には違いないから何か心からは好きにはなれないんだよなぁ。うーむ、ハーレムは断念だなぁ。素直なエルフさんいたらほんと頑張って口説かないと国宝級以上だよな。
「いや、俺こそ言いすぎた。これもごめん、試すような真似をした」
「いえ、そんな事をさせたのは私が余りにも愚かだった為です」
うーん、ってか、エルフって表情豊かだなぁー。何か聞いてたのじゃ無表情無感情に誓い位クールな種族って聞いてたけど……ふむ、ってか、状況的にも色々アレかぁ。ってか、何かふと想像しちまったけど。光相手だったら同じ状況でもあんまり感謝されなさそうなイメージが……いや、そもそもこんなとこでこんなミスするイメージがわかねぇ。あいつ強かそうだもんなぁ。
「兎も角一旦ここを出よう。流石に送っていくよ」
「はい、あのダークスライムさえ居なければこの帰り技の効力発揮される筈ですものね」
「うん、助かるけど、次からも俺は1人で潜るよ?」
因みに俺この帰り技すら使えません。あはははは。この便利アイテム使ったら即ダンジョンの外に出れるし、次来た時使ったら最後に使った場所に復帰出来るし。超便利ー。まぁ頼りきった冒険者がすぐ失敗しそうなのは、これが使えないダンジョンに効果が狂うダンジョンに潜った時だよなぁ。ってか、5つは使えないんだし、俺実はあんまり必要性感じないなぁ。うん、負け惜しみじゃないんだモン。
っと、再び絶望の表情になってる緑ツインテールに説明してやらなきゃね。
「いや、もう別に君のこと嫌いじゃないよ? っても、ハーレムに入れたいとは思わないけど」
何で更に表情暗くなるの? ま、まぁ続けよう。
「や、ハーレム云々は置いといてだ。次から君らは3のダンジョン潜りなさいな。じゃないと助けた意味なくなるし。
で、俺は魔法使えないから……いや、えっと。まぁ、順番通りで問題ないからこのままここ攻略するからね。
別に2度と会うつもりがないって訳じゃなくなったし。また会うこともあるさ」
俺の台詞にをしみじみと噛み締めたように帰り技をギュッと握る。うむ、胸大きい訳じゃないけど、ナイスなサイズだよなー。ってか、エルフってナイ乳族のはずなのに、多分巨乳になるんだろうなぁ。まぁ、俺好きな子についてりゃどんな胸でも好きな紳士だから。モーマンタイだけど。
「私はエルザです。この子はマーサです。フィリップ様、是非宿の場所を教えて頂けませんか?」
ふーん、エルザとマーサね。まぁ、マーサについては今だクソエルフ様かもしれないし、色々保留にしとこう。エルザみたいになると良いなぁ。いや、俺に執着されても困るけど、性格的にねー。ひねくれてるとやっぱり生きづらいもんだよ。
俺は好んでひねくれて生きてるから良いけどな。
兎も角、もう帰るからと一旦ダンジョンを抜けて俺の宿の前を通ってエルザ達の宿に向かった。
いやはや、マーサをお姫様抱っこしてるのを羨ましそうに見てる奴の多いこと、綺麗だもんねエルフ。っても、それを確認しなけりゃどれだけ俺が美味しい状況なのか確認できないのが本当に悲しいです。ぎぎぎ。
えっと、物凄い羨ましそうな、しかもマーサを妬ましげに睨むエルザをあえて見なかった事にしてみました。うん、仮に目が合って私もして欲しいとか言われても、隣歩かれるのと変わらない嬉しさしか感じれないなら、正直やりたくなかったのさ。
でも、感覚戻ったら1度やってみたいかも。その時まで彼女達と付き合いあるかわかんねーけど。
とりあえず、多分これからも過激なシーンとか出るはずなので、警告タグを付けました。えぇ、これで色んな意味で解き放たれちゃったので……いや、限界に挑戦なんて多分しませんよ?
兎も角、今回も楽しんで頂けたのでしたら幸いであります!