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第1話 ハーレム作る為に旅立ちだ

「長かった……本当に長かった……まさか15年も掛かるとは思わなかった」


 しみじみと呟く里中健太郎改め、フィリップだ。

 そう、ただのフィリップだ。まさかド田舎の只の農民の息子に産まれるとは思わなんだ……御陰で剣技も魔法も完全に独学だよ畜生。

 しかも、長男に産まれてしまった為農作業もバッチリ仕込まれたよ畜生、貴重な勉学ろくに出来てねーよ。流石最強の才能を秘めてるだけあるのか、滅茶苦茶頭良くなって、超知識欲しいのに、生きていく上で必要な知識しかない。

 いや、これらは全部良いんだ、こまけー事など気にするなを地で行く俺だから、一番の問題は。


「あぁ、ハーレムが作れる位の力付けなきゃなぁ」


 そうだ、元の世界でもそうだが、生きていく上でお金は必須なのだ。いや、まぁ別の俺一人ならここに来るまでの様に野にいる動物やら魔獣やら狩って生きていくことも可能だが、そんな野人みたいな生活をしたいわけじゃない。ハーレムを作るとなればお金はもとより相応の物が色々と必要になるだろう。目立ちたい訳じゃないが、それも押し通せるだけの権力も付けなければならない。

 幸いなことに、俺の見た目は悪くない。とはいっても、特別良いわけじゃなくて、村では有数の色男だけど、都会に出たらただの人ってレベルくらいだろうか。ってか、エルフとか妖精族とか超絶な見た目を誇る種族もいるのだ、早いとこイチャイチャしたいなぁ。

 っと、話がそれたか。ともかくだ、村にもそれなりに美人や美少女はいたのだが、一人を愛するならいざしらず、ハーレムを作るのは無理っぽそうだったし、だからこそここに来たのだ。


「そう、ダンジョン要塞の名高き要塞都市エルトランになぁ!」


 思わず叫んでしまっても許されるだろう。だってここまで来るのに生まれ故郷を後にして3ヶ月かかったのだから。とは言え、元の世界ではユーラシア大陸横断位の距離あるし、間には帰らずの森だの死の谷だの屍の山だの物騒な場所もとにかく直線で突っ切って来んだし、実際商人とかに聞いたんだが、普通年単位で移動する位の距離を3ヶ月で移動したんだ、寧ろ快挙かもしれない。

 やぁ、ハイスペックって素晴らしい。


「さて、とりあえずさっさと宿とってギルドに登録しなきゃな」


 要塞都市の異名どおり周りを城壁が覆っている巨大な都市。無論通行料も掛かるわけで、半銀貨1枚もかかる。

 因みに、元日本人の俺はつい元の世界基準で考えてしまう癖が付いてしまってて、石貨1枚が1円で、半青銅貨1枚10円青銅貨1枚100円以降同じ法則で、半銀貨、銀貨、半金貨、金貨、白金貨と価値が上がっていく。しかも、物価が大体10分の1なのだから、結構な料金だろう、ってか、入場料1万円とかどんなライブだよって話だ。や、物によっちゃ逆に物価が10倍だったり、同じだったりするから、まぁそこは異世界って事なんだろうなぁ。いや、今は元の世界が異世界か。

 しかし、一獲千金が狙える為に入都市希望者が無茶苦茶多い。ってか、アリの大群が巣穴を目指すかのような長蛇の列が出来てる……うわぁ、俺今日入都市出来るのかなぁ?


「ここまで来て待ちぼうけとか……勘弁してくれよ」


 最後尾に大人しく並んだけど、果たして頭の上にある太陽が沈む頃には都市に入れるかってとこか。いや、要領が良かったり事情を知ってれば早々に入れるのだろうけど、現実に列を無視して入ってる奴らもいるし。ただ、俺の心許無い所持金と相談する限り下手な事をするのは止めよう。


「まっ、これも一興ってやつか」


 要は考え方だ。某巨大マーケットだの祭典だのライブだの、基本待ち時間は長いのだ。無論色々抜け道はあるのだろうけど、俺としてはその場の雰囲気を楽しむのも醍醐味の1つだと常々考えていたのだ。

 今回も例に漏れることなく、寧ろ高揚した気分をキープ出来るし、予定をきっちり整理出来るので別に悪いことではない。1番勿体ないのは、こういう時間を不貞腐れたりして無駄にすることだ。まぁ、完全に持論だけどな。


 さて、それじゃぁ中に入っての事を順序だてをしておこう。

 旅先で情報収集を怠らなかったので、ある程度中の事は把握してるが、とりあえず宿を取るのは必須だろう。ってか、都市に入れたのに野宿とか嫌だ。何が悲しくて公園で寝泊りせねばならんのか、ギギギ。

 で、次は冒険者ギルドに登録だな。詳しいことはここで聞けるだろうし、まぁ後は流れだなぁ。まぁ、ダンジョンで稼げるだけ稼ぎまくってハーレム作成だなぁ。さぁ、どんな嫁達が俺を待っているのかなぁ、ぐへへへへ――。



「おい、お前の番だ」

「あっ、了解!」


 どうやら妄想してるうちに順番が回ってきたようだ。ってか、列の長さ変わってねーんだけど。太陽さん殆ど顔を隠しちゃってるけど大丈夫? いや、俺が大丈夫だったから良いか。

 そんな事を考えながらも、何やら続けて言おうとしていた衛兵に表面的には多分人当たりのよい笑みを浮かべて半銀貨と半青銅貨を併せて渡す。ふふふ、このくらいは旅の商人から聞いて知ってるのだぜ。途端面倒くさそうな表情から急に態度を変えた衛兵。うむ、このくらい分かりやすい奴は寧ろ好きだからよし。


「……分かってるじゃないか。入って良いぞ」


 分かりやすく口にしながらチラッと次の待ち人を見る衛兵。しかし、勘が鈍いのかはたまた単純にお金がないのか、あまり反応を示さない少女……少女!! しかも結構可愛い!! うっひょい、可愛いは正義だ素晴らしい!!


「さぁ、それじゃぁ次の者からは明日の朝から――」

「ちょっと、もう相当待ったのよ。それに明日の朝とか、野宿しろってこと!?」

「あぁ、規則だからな、そうやってズルズルと許していたら、我々も仕事にならんのだよ」


 さっと少女の手元を確認した後、表面上は申し訳なさそうに言う衛兵。うむ、その表情作るの上手いなぁ。そうやって下手に出られるとある程度以上頭の回る者は諦めるしかない。もし食ってかかったら下手すると入都市拒否されかねないからな。

 そんなぁと漏らしながらってか、この子声も可愛いなぁ、癒されるわぁ。うむ、次の奴はオヤジだし何か寝袋とかバッチリ準備してるみたいだし、これで欠片も罪悪感なく実行できるな。


「あっ、すみません、彼女僕の連れなんですよー」

「えっ?」


 爽やかにかつ有無を言わせず衛兵と握手する俺に、女の子が困惑した表情を浮かべる。いやぁ、その顔も素敵、脳内データベースに保存保存っと。いやぁ、これは嬉しい出会いだ。まさかフードの下は素敵なお顔でしたとか、俺得過ぎる。そりゃこんだけ可愛ければフードで顔隠すよなぁ。うん、違いない。


「あぁ……そりゃぁ悪い事したな。ほら、行った行った」

「ありがとうございます。ほら、行くよ」

「えっ、あの、ちょっと」


 最早表情を作る事すら失敗している衛兵に、さっと頭を下げて女の子の手を繋ぎ歩き出す、って、超柔らかいんですけど!

 当然このやり取りに次のおっさんが物申しているけど、衛兵は次は頑として受け付けない、ってか石貨位のチップじゃもう無理だって、だってさっき俺が渡したのはこう言う厄介事も頼みますって意味で半銀貨2枚渡したんだし。多分これ以上は貰いすぎにもなるし、諦めなさいな。

 完全に俺得過ぎてトリップしながら都市に女の子連れで入っていくのだった。










「あのっ、いい加減手放してくれない?」

「おっ、ごめん」


 何も言わないことを良いことに、少し連れ歩いた後痺れを切らした感じで女の子に告げられ。内心で滝の涙を流しながらも笑顔で謝りながら手を放す俺……って、何故睨むの?

 あるぇー? 俺何か悪い事したっけ?? 全力で困惑していると、すっと手を差し出す女の子。当然両手で握りしめる。


「違う、さっきのお金!」

「あっ、そういう事。うん、ありがたく~」


 納得して半銀貨1枚回収する。あーあ、これでこの子ともお別れかぁ。まぁ、顔見知りにはなれたし、徐々に仲良くなれば良いか。って、何か睨まれたままなんですけど?


「どうかした?」

「……何したの?」

「へっ? あぁ、さっきの? 単純にチップ渡して通して貰ったんだけど? 時間直後だと割とああいうやり取り多いし、慣れてなさそうだから勝手にやっちゃった。

 あっ、俺が勝手にやったんだから、チップ分は気にしないで」


 うむ、これでフォローもかんぺ――。


「余計なお世話! どうせあんたも私を馬鹿にしてるんでしょう?」

「はぁ? いや、超可愛いし、俺のハーレムに入って欲しいなぁって思ってるだけだけど?」


 正直に物申す俺に、更に眉間にシワを寄せる女の子。なんで?


「このゲスめ。人間はこうやってすぐ他を見下す」

「待った、ゲスなのは認めるよ。所詮ハーレム作ろうとしてる人間なんだし。って、君も人間じゃないの?」


 うわー、どんどん表情険しくなるよ。なんで善意でやったのにこうやって嫌われるかなぁ。そう言えば旅の途中でも割と女の子に嫌われるんだよなぁ……まぁ、ハーレム入ってって勧誘してりゃぁ仕方ないっか。

 勝手に自己完結してると、女の子は余りにも衝撃的な言葉を俺に叩きつけてきた。


「私は犬族だ! 欲まみれのって、何をする!」

「マジだ、犬耳だ、素敵すぎる、ってかマジで可愛い、ほんと可愛い、超絶可愛い」

「おっ、おい。ひ、人の話を聞け」


 女の子がいや、犬耳の俺の嫁が何か一生懸命言ってるが、その姿すら更に可愛さを引き立てるだけだ。フードで隠すとか勿体なすぎるわ。もう、全力で撫でる俺。うわぁ、銀髪の髪の毛超サラサラだし触り心地素敵過ぎて止まらないし。やばい、やばい、これマジでやばい。


「うん、聞く、超聞く。可愛い、超可愛い。どうしよう、可愛すぎる。卑怯だ」

「お、おい。全然聞いてないじゃない……はうぅ。なんでそんな……あなたこそ卑怯だし」

「うん、俺卑怯。君超可愛い。あっ、ごめんまだ撫でていい。ってか、撫でさせて下さいお願いします」

「……全然止める気ないくせに何言ってるの?」

「いや。止めろって言うなら止めるよ。嫌われたくないもん。でも、もう撫でてるし止まらないだけ」


 うん、無茶苦茶なこと言ってるし、俺ぶっ壊れてる自覚はあるんだ。でも、しょうがなくね? 前世から通じての夢が叶ったんだし。銀髪犬娘とか俺得過ぎる。あー、結婚してぇ。いや、嫁だから既にしてるか。でも、他にもいっぱい二次元嫁居るし、三次元嫁も作っていくけど皆をそれぞれオンリーワンって断言出来る位愛するから許してね。俺の愛はマグナムビックハートなのさ。


「……ねぇ、本当に私可愛い?」

「君が可愛くないなら他に誰を可愛いと言えば良いの?」

「な、ならそこの人よりも?」


 突然指さす嫁の指先には、まぁそこそこ可愛いかなぁ位の赤ちゃん抱いて旦那らしき男と腕を組んでる女性がいてって、他人のモノかい。俺の持論なんだが、俺のモノを奪ったら死で償わせるが、代わりに人のモノは絶対取らないって決めてるんだ。その時点でアウトだし、そもそも嫁の方が遥かに可愛い。


「君が圧倒的に可愛くて何故選んだのか分からない」

「じ、じゃぁあの人よりも?」


 今度の女性も中々に可愛らしく、多分お店の看板娘か何かなのだろう。一生懸命働く姿にどこか興味を惹かれた。よし、後でハーレム入ってくれないか口説きに行こうと心に決めて、とは言え今は可愛い女の子より嫁の方が遥かに重大なわけで、じっと目を見て真摯に言い切る。


「当然君の方が可愛い」

「うぅ、じゃ、じゃぁこの人よりも?」

「あうっ、何するの!?」


 あやぁ、テンパリ過ぎたのか隣を歩いていた多分冒険者らしきお姉さんの腕引いちゃったよ。まぁこういう姿も可愛いなぁ。流石俺の嫁。で、お姉さんは凄い美人さんで、多分10人に聞いたら8~9人はお姉さんの方が綺麗って言うだろうなぁ。俺も言うもん。っても、俺は美人さんより可愛い子の方が好きだし。中身が可愛かったら別問題だけど、ハーレムに入ってもらうかは中身次第ってところかな。


「うん、君の方が遥かに可愛い。あっ、お姉さんは凄く美人だと思いますけど、俺のハーレムに入れるかは中身次第ってところですねぇ。ってそうだ、君は俺のハーレム入ってくれないの?」


 周囲の音が止まったかと錯覚した。そのくらい周りに緊迫した空気が漂う。発生源は2人の女性……じゃなくて、綺麗なお姉さん。プレッシャーが半端ない。きっと見た目通り冒険者なんだろうなぁ、ダンジョン入るためにレベル制って何かお手軽に強くなれるオプション付けてもらえるみたいだし。


「貴様、私が誰か知ってて言ってるのか?」


 凄いドスが効いた声で、徐々にプレッシャーが高まっていくって、もしかして俺がのほほんとしてるからプレッシャー上げてるのかなぁ? 十分受けてるし、ただ慣れてるから表情出してないだけで、嫁が苦しそうにしてるから止めて欲しいんだけどなぁ。周りの人は知らねーけど。


「知るわけないじゃん。俺今日この都市についたばっかりだし。っても確かに初対面でハーレム云々は気分悪くするよなぁ。ごめんなさい。

 でも、俺これ変えれないんだ。だってハーレム築くのは決定事項だし。その為にわざわざここにきたんだからさ。

 あっ、でも別に強制的に入れるってわけじゃないから、こうして思ったことをそのまま口にしてるの。勿論散々色んな人に注意されてるから忠告は出来ればなしの方が嬉しいなぁ。

 そうそう、だから普通に拒否ってくれていいし、でも、とりあえず少しでも仲良くしてくれると俺個人的に嬉しいなぁって感じ……ごめん、犬耳の君があまりに可愛すぎて暴走してた自覚ありますごめんなさい。でも、反省しても後悔はしない!」


 言い終えると同時に剣閃が煌き、頭上から降りおろされた長剣をギリギリで躱して地面に突き立てられたそれを右足で抑える。うむ、流石に泣いていいかな? 当たったら普通に死ぬよ。

 ガックリ項垂れながら、何故か驚愕の表情を浮かべるお姉さんに頭を下げる。


「ごめんなさい、まさかいきなり斬り殺そうとするくらい嫌うとは思ってなくて。今後視界にも入らないように気をつけるから許してください」


 何故ここまで下手に出るか。それは簡単、俺は弱いからだ。だって、才能が折角あっても自己流でしか修行出来てないんだぜ。大層な名前の場所を通った時だって、偶々俺がいなせる相手しか出なかっただけだし。お姉さんの一撃をこうも鮮やかに凌げたのも、多分俺を歳相応の若造と油断して貰ったおかげだろう。何も男なら多分普通に勝てるとは思ってるけど、ダンジョンでそれなりにレベルを積んだ相手とか普通に死ねるって。

 って、おかしい、嫁どころか周りの野次馬達も全員驚愕の表情で固まってる。そうか、ハーレム云々ほざいてるか……いや、これはチャンスだ。声高らかに言っておこう。


「何か皆の反応が凄いことになってるけど、ついでだから俺の野望を宣言しておく。

 俺はここにハーレムを作りに来た。今はまだ只の小僧だけどいずれハーレム王として君臨してやる!

 ……だから、我こそはって女の子、俺が住居構えたらとりあえず面接だけでも来てください。ハーレムは無理って子でも俺の好みだったら、高待遇でメイドとして雇いますから。あっ、勿論同意なくエッチィ事もしないから安心してねー」


 ……何か雰囲気が澱んで来た気がする。なんで? あれ、いつの間にやら真剣な表情で構え直すお姉さんって、ちょっ、待って! 普通に死ぬからあああああああああああ。







 俺が何とかお姉さんを撒いた頃、太陽さんがおはようと顔を出し始めましたとさ。

 ……何が悲しくて一晩中命懸けの追いかけっこしなきゃならないのさ? 厄日だったのかも、ってか、これ以上悪くなりたくないから厄日って事にしてくださいお願いします。

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