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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

我こそはボディーシートウーマン~汗と涙とボディーシートの異世界転移録~

作者: 旨煮あなご

 私、滝汗(たきあせ) 虹美(にじみ) 17歳

 高校生活を謳歌している乙女です!

 憧れの先輩を目で追いつつも勇気が出なくて話しかけられない。そんなよくある普通の高校生活をしていたのだけど、ひょんなことから異世界転移デビューすることになりました。




 私の学生生活はいつものようにクラスメイトに布教活動から始まる。


「みんなも経験あると思うんだけど、やっぱ暑くなる季節に欠かせないものがあるよね。

 リルトンのレモンティー?違う違う。もっと重要なものがあるでしょ!

 ボディーシートだよ!え?制汗スプレーじゃないのかって?いやいやいや、確かにスプレーも悪くない。だけど腕とか足とか鎖骨周りとか全体的に汗が滲んでなんかじっとりして不快だなぁって思ったときはスプレーよりボディーシート使うでしょ。」


 私は人よりちょっと代謝がいいから家から学校まで徒歩で10分の通学路でさえ、夏になればすぐべたつき汗をかき始める。

 私がなぜここまでボディーシートを勧めているかと言えば、中学生の頃同じクラスに好きだった幼馴染から言われたある一言があったから。そいつは幼稚園から一緒で、家も近く小学校までは一緒に学校に行っていたが中学生になるとサッカー部活の朝練の為に幼馴染とは別々に学校に行くようになった。

 中学校が丘の上にあり、坂を上りやっとのことで校門までたどり着く。当然私は大量の汗をかいていた。そんな状態で教室に入ったとき、目が合った幼馴染が私に向かってこう言ったのだ


「虹美、汗ヤバいなウケる」


 私がコンプレックスを抱えていることをクラスの男子たちと笑いながら言ってきた。私だって好きでこんな体質じゃない。そんな風に言われ何も言葉を返せなかった。好きな人に言われた一言が、今でも心に刺さっている。好きだからこそ、あの言葉がどれほど痛かったか……。以来汗をかくたびに嫌な思い出がフラッシュバックする。

 そんな私を救ってくれたのがボディーシート。

 休み時間になったときに友達がこれ使ってみて?と一枚渡してくれた。使った時の衝撃は今でも忘れられない。それ以降私はボディーシートの布教を始めた。


 本当に学校生活で欠かせないし、ボディーシートと付き合いたいぐらいの気持ち。ボディーシートを作ってくれた企業様本当にありがとうございます。

 今は憧れの先輩に汗でべたついた状態なんて見られたくないから汗をかいたかもって思ったらすぐに使っている。


 ぜひみんなにも使ってもらってこの良さを分かってもらいたくて、クラスメイトに布教しまわっていた。

 ついたあだ名はボディーシートウーマン

 略されてすでにうーちゃんになっている。


 そんな放課後の帰り道。買い物帰りのママチャリに乗った主婦や犬と散歩している人などと同じように家に向かって歩いていた。そんなとき普段横を通り過ぎる公園に今日は違和感を感じた。まだ日も暮れておらず明るい時間にもかかわらず子供も大人も誰もいない。立ち止まりよく見れば滑り台がぐにゃりと歪んで見えた。

 歪んで見える滑り台がきになってしまい公園に足を踏み入れた瞬間、パッとまぶしく光りあたりはとてもいい香りに包まれた。

 これはまるでピレオのさらさらパウダーシート可憐な花の香りのよう。

 まぶしくて閉じた目を開き、目に入ってきたのは広大な草原に小さな白いや水色、薄桃色の花が絨毯のように満開の美しい景色。空は淡い青とピンクのグラデーション。きれいな景色に呆然としていると澄んだ声が響き渡った。


「虹美、よくぞ来てくれました。私はあなたを待っておりました。」


 名前を呼ばれたが、この美しい声に聞き覚えはない。


「自己紹介がまだでしたね、私はボディーシートの精霊セーレーナ。ボディーシートを愛する貴女の愛により力を得た精霊です。」


 なんと!私がボディーシートを愛しすぎているが故に生まれたという精霊だと!?しかし姿が見えない。こよなく愛するボディーシートの精霊が見えないのがつらい、心からの感謝を直接目をみて伝えたいのに!いやしかし、そもそもここはいったい。さっきまで公園にいたのに私はいったいどうなってしまったのか。

 これはもうこちらから呼びかけるしかない。


「精霊さんどこにいるんですか?姿が見えないです。私はいったいどういう状況なんですか?」

「セーレーナとお呼びください。姿が見えないのはまだ私に実体化できるだけの力が無いのです。虹美がいまどういう状況なのかは簡単にお話いたします。」


 セーレーナさんは精霊さんと呼ばれたことに少し不満を持っているようだった。

 私の愛から生まれたという存在はまだ力が完全ではないようだった。愛が足りないの!?こんなに愛してるのに!?

 そんなことを思っていたら目の前に簡素な造りの一組のテーブルセットが現れた。水が入った透明なグラスが机に置かれており、もてなしをしてくれているようだった。椅子に腰かけセーレーナさんからの説明を待つ。


「まずは突然のことで何もわからなく不安なお気持ちにさせてすみません。こちらに招いたのはお願いがあり貴女を呼びました。虹美に救ってほしい人達がいるのです。」

「救ってほしい人?私なんの力もないですよ?」

「実は虹美が住んでいる世界はとても特殊な世界でして、宇宙で一番転生転移に適応している星なのです。そのため色々な世界が召喚術を使って各自の世界へ呼び出しているのです。聞きませんか?神隠しにあうとか」


 神隠しなんてのは都市伝説のようなものだと持っていたし、なんならラノベの中でしか起こらないものだと思っていた。そんなに地球は転生転移させやすいのか!って今この状況もしかしなくとも……。


「例にもれず私も今転移しているということですか?」

「そうです。私はまだ生まれたばかりの精霊、一人では人間を召喚する力はありません。私がここに虹美を呼べたのは他の神々から力を分けてもらい、貴女と繋がることが出来たからのです。」

「なるほど。……私は何をしたらいいですかね?ていうかできることなんてあるんですか?」

「虹美にお願いというのは他でもありません。すでに異世界に転移転生した方々にボディーシートを届けてあげてほしいのです。」

「ボディーシートを届ける……??」

「はい、異世界というのは様々な環境があるのですが、私も虹美と同じくボディーシートの良さをどんどん伝えていきたいのです。そこで虹美と同じ日本から異世界に転移したり転生したりしてる人達で日常生活で不快な思いをしている人たちにボディーシートを差し入れというか届けてほしいのです。」


 すでに異世界へ行っている諸先輩方に旅や生活での快適を提供しに行くというすごい使命を与えられたものだ。しかも大好きなボディーシートを布教するという。


「それはぜひやらせてください!むしろ私以外にボディーシートを勧められる人なんているのかというぐらい適任な役回り!」

「虹美ならやってくれると信じていました。私は全力でサポートいたします。その証にこちらを。」

 シャボン玉のようなものに包まれた銀色の細身のバングルが目の前に現れた。

 シャボン玉に触れるとパッとわれてバングルが光ったかと思えば、右手首に収まっている。


「このバングルをつかってボディーシートを召喚することが出来ます。また地球に帰ることもできます。私に力が増えれば、この場所でまたお話しすることもできます。ただし、まだ自由自在にはできません。異世界で対象となる転生転移者を救えたらバングルに力がたまるのでその力をつかって移動することになります。ですのでまずは初心者向けの転移者の所にお送りますので、どうかその者をお救いください。」


 そういうと辺りがパァーっと光りだしあまりの眩しさに目を閉じてしまった。

 再び目を開けば目の間には森。

 右も左も樹・樹・樹!背の高い樹木が私を囲んでいる。見上げた空はところどころ曇りの青空。気温も暑くもなく寒くもなく過ごしやすい温度である。朝なのか昼なのかわからないけど明かるいことだけは確かだった。どこに来たのだろうか。辺りに人の気配はなく、私はどこに向かったらいいのかすらわからない。


 なんの説明もないまま異世界に来たということは分かった。

 ふと自分の服を見るとさっきまで制服だったはずなのに、見知らぬ服に変わっている。異世界アニメの町娘風の服だ。バングルだけがそのまま右腕についていた。このバングルでボディーシートを召喚出来るとか言っていた気がするけど、果たしてどうやってやるのか。


「いでよボディーシート」


 小声で言ってみたが何の反応もない。ほかの方法を試してみるかと念じてみても、バングルのついた腕を振り回しても、適当な呪文ぽいものを言ってみても何の反応もなかった。


「ええええええええ!?使い方ぐらい教えてからにしてよ!!」


 私の悲しい叫びが木々の間に吸い込まれていった。

 こうなれば自棄である。誰も見てないことをいいことに魔法少女とか戦隊ものみたいに決め台詞風に遊んでやろうとウキウキで大きな声を出した。


「きれいなサラサラお肌へスキンチェーンジ!!ボディーシートアターーーック!!」

「今ボディーシートって言った?」


 私は声にならない悲鳴をあげた。誰もいないと思って中二ならぬ高二17歳全力の決め台詞っぽい『ボディーシートアターーーック!』 をまさか誰かに聞かれるなんて…。非常に恥ずかしい。穴があったら入りたいし、家に帰って布団にこもりたい。っていうかネットミームになってる絶叫するマーモットぐらい『あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”!!』って言いたい。

 恐る恐る振り返れば、同い年ぐらいの栗毛のボブヘアの女の子が怪訝な表情でこちらを見ていた。


「あ……………………、えっと……」

「ねぇ、今ボディーシートって言った?」


 表情を変えぬままじっとこちらを見ている。言語は聞き取れるが私が動揺しすぎてまともに言葉を発していないので通じるかわからないが会話を試みる。


「あ……はい。ボディーシートっていいました。」


 それを聞いたボブヘアの女の子は目を輝かせた。


「貴女も転移者なのね!私、カオルっていうの。転移者同士仲良くしましょう!っていうかボディーシートって譲ってもらえないかな?いくら払えばいい!?」


 ものすごい食いつきようだ。どんなものが欲しいのだろう。っていうかあの恥ずかしいボディーシートアタックまでやって出てこなかったのに、どうやって出せばいいんだよ。


「本当はいい香りするやつが欲しいけど贅沢は言わないから。除菌シートとかでもいいので!ちょっとべたついたこの状況を何とかしたいの!」


 彼女の必死な声が自分と重なった。わかる。べたつき無くしたいし快適になりたいよね。

 こういう時はパウダー入りのサラサラになれるやつが個人的にお勧めだ。

 どうにかして彼女にボディーシートをプレゼントしたい。


 バングルをさすり願った、『どうか通販サイトみたいな感じでたくさんのボディーシートの中から好きなものを選ばせてくれ』と。


 するとアイパ〇ドぐらいの大きさの半透明のモニターらしきものが目の前に現れた、そこにはブランドごとに区切られ、きれいに整列されたボディーシートのパッケージ画像が並んでいた。


 カオルと名乗った彼女に適したのは、おそらく王道中の王道、ピレオのピンクのパッケージのやつであろう。

 半透明のモニターには欲しいボディーシートの画像の下に数字が書いてある、300と。とくに単位がない。これは金額なのか?


「えっと300円になります……?」

「わかったわ!ほら、これでお願い」


 受け取ったお金は日本円ではなかったが、きちんと300円相当であるのが理解できた。左手に持った小銭をバングルに当てながら、モニターに触れた。

 すると手に持っていたはずのお金はバングルに吸い込まれ、目の前にバングルが現れた時のようにシャボン玉のようなものに包まれたおなじみのボディーシートが現れた。


 ピンクのパッケージのボディーシートを手渡せば、すぐに封をあけ一枚手に取り首や腕など拭いていった。


「本当にありがとう。ちょっと畑作業してて汗ばんじゃってたの。町まで出ないとお風呂入れないから面倒だったんだよね。めっちゃ助かったよぉ~」


 拭き終わったシートはカオルの手から光の粒となって消えていった。ゴミにならないのはいいことだ。


 それからしばらくカオルと雑談をした。聞くところによるとカオルは私と同い年で塾帰りに異世界転移させられたという。もらった能力はハーブから精油をつくる力で、そのためにあまり人の立ち入らない場所に畑を作りここでハーブを作っているんだとか。もともとアロマが好きだったからその知識を生かして庶民や貴族向けにアロマチートでここで暮らしているとのこと。同い年だが異世界歴は私より半年ほど長く、この世界の常識についてやできた友達などとても楽しくこの世界で過ごしているというのが伝わった。

 なぜ、あの場に来たのかと聞いたら私の「使い方ぐらい教えてからにしてよ~!!」という声が聞こえてこちらの様子を見に来たところ、あの恥ずかしい状況に立ち会ってしまったということらしい。「わかるわかる。私も来たときはすごいテンション上がっちゃってさ」と同意を得られたが、人に見られてはいないカオルには私の恥ずかしさなどわからないだろう。話が出てくるたびに穴に入りたくなる。


「ねぇ今日は泊まる家ある?私の家に泊まりにおいでよ!」


 誘われるまま同性だしとカオルの家についていった。そこには小さなログハウスがあり、横にはハーブの植えられている畑があった。それなりに広く一人でこれを手入れしているというのはなかなかだ。

 そういえば、バングルを使って移動が出来ると精霊のセーレーナさんが言っていたがいったいどうやるのだろう。そう考えた瞬間目の前がまた眩しく光り目を開けられなくなった。


 目を開くとそこには学校帰りに通った公園の前にいた。転移した時間とさして変わりないのか道を通るママチャリに乗った主婦、犬の散歩中の人が歩いてた。服も制服に戻っており白昼夢でも見たのか?とおもったが、私の腕には銀色のバングルがついたままだった。


 ただいまと家に入り、自室のベッドに倒れこむような形でダイブした。いったいさっきまでの出来事は何だったのかと。仰向けになり天井にむかい右手を伸ばす。


「セーレーナさんって本当にいたのかな」


 そんな独り言をつぶやくと何度目かの眩しい光に包まれた。


「虹美、本当にありがとう。おかげで少しだけ力が増えました」


 自分の部屋から一転セーレーナさんと出会ったきれいな景色な場所へと転移していた。

 目の前にはテニスボールぐらいの淡い緑に光る球があった。


「セーレーナさん?」

「はい!なんでしょう」


 光る球はふわふわと揺れている。声は間違いなくこの光る球から聞こえてきた。


「なんでなんも説明もないまま転移させたんですか!?おかげですーーーーーーーーっんごい恥ずかしいめにあったんですけどぉぉぉぉぉぉぉぉ!?どう責任取ってくれるんですかぁぁ!!!あ”ぁ”ん!!」

「ひぃぃ!ごめんなさいごめんなさいごめんなさい!!」


 私のあまりの剣幕に怯え声のセーレーナさん。いや私の主張は間違っていないと思う。まじで説明不足だったの本当によくない。おかげで無意味なボディーシートアターーーックをする羽目になった。この恨みはらさでおくべきか……。


「説明もろくにせず本当に申し訳ございません。異世界転移についてあまりに飲み込みが早かったのでなんとかなるかなと送り出してしまいました。」


 セーレーナさんの言い分は、私が転移についてすんなり受け入れた故に異世界でも臨機応変に対応できるだろうと。そんな勝手な思い込みでそのまま送るなんて酷すぎる。

 申し訳なさそうに今更ながらバングルの機能について説明を受けた。


 ・バングルにモニターオープンまたはそれに類することを念じれば、あの半透明のモニターのようなものが出る。

 ・マイページで自分のステータスが確認できる。

 ・数字については所謂魔力と呼ばれるようなものを消費する。

 ・人助けに使うとレベルが上がり、魔力が増える。

 ・金銭が吸い込まれると感謝のポイントがたまる。ただし金額に影響を受けない。

 ・感謝ポイントをためることによって異世界と現世を行き来できる。またセーレーナさんの力にもなる。

 ・吸い込まれた金銭は異世界で2倍の金額として利用できる。

 ・言語変換能力が付与されている。

 ・バングルは異世界では使えるし他人からも見えるが、現世では使えない上に他の人から見えない。

 ・人助けという善行を行っているので現世への還元として意中の人への好感度が少しだけ上がる。


 上記を踏まえれば、自身の魔力だけでもボディーシートは出せるが、特に何のメリットもなく、他人の為に使うことでレベルが上がり、また金銭をもらうことで感謝ポイントがたまり異世界と現世の行き来が出来るようになる。


「このバングルは虹美から万が一離れてしまっても元に戻ってくる仕様になっているので無くす心配はありません。このほかに何かつけたい機能はありますか?できる限り対応していきたいと思います。」


 希望を叶えてくれるならそれは思いつく限りのことを願っておかなければ。

 私だってラノベぐらい読んだことはある。

 ラノベの主人公たちはチートと呼ばれる能力があるわけで、私にもそれを得られる機会が訪れるならチートは欲しい。異世界を快適に過ごしたいもの。


「そうしたら、無限収納空間魔法かそれがだめならその能力がついた鞄が欲しいのと資金に困りたくないからお金が無限に出る財布とか?食事も大事だよね、体に悪そうなものとか毒とか見分けられるようになっておきたいし、飲み水も重要だと思うから、そういうの自分で作れたり出来るように仕手欲しいし、それから野宿とかちょっと嫌だから簡易的でいいから持ち運べる部屋というか家とか欲しいかも。それから異世界とかこっちの常識通じなさそうだし、身の安全第一じゃん?ってことは身を守れる装備とかアイテム、魔物とかに襲われたときに対応できるように全属性の魔法が使えるようになりたいのと、ってかトイレとか絶対日本と違って衛生面ヤバそうだから異世界がどんな環境でもいいようにトイレはちゃんと個別にしたいっていうか。お風呂ないとこかあり得ないし、そういう水回りしっかりしておきたいかも!それから……」

「に、虹美?少し落ち着いて?あともうちょっとゆっくりしゃべってもらっていい?ごめんなさい聞き取れなかったわ」


 恥ずかしい思いをした分ここぞとばかりに思いつく限りの希望を早口でまくし立ててしまったようだ。ほんのちょこっと反省しないこともない。

 異世界に行くなら安全に快適に行きたい。転生ではなく転移でしかも行き来が出来る利点も活かしていきたい。


 ゆっくり自分の希望をすべて伝えたが、今のセーレーナさんの力で出来そうなことは毒の見分けが出来るようになるスキルぐらいしか現状できないらしい。もう少し力を得たら無限収納魔法ならいけるかもしれないと言っていた。


 私はとりあえずバングルを使いこなせるようになろうと、一旦モニターを開いた。マイページアイコンを見つけタップする。

 すると私のステータスが出てきた。


 タキアセ ニジミ (17)

 ◆称号

 ボディーシートウーマン(友人からの親しみを込めた呼び名)

 ◆レベル

 5

 ◆体力

 2800/3000

 ◆魔力

 700/1000

 ◆感謝ポイント

 800(次回レベルアップまで残り1200)

 ◆スキル

 ボディーシート召喚

 毒鑑定(S)

 ◆所持金

 600


 感謝ポイントをためることでレベルが上がるとあるけどきっとセーレーナさんのレベルが上がるのだろう。いままで見えなかったセーレーナさんが今は光る球としてみることが出来る。

 きっとレベルが上がったらもうちょっと違う形になるかもしれない。力をつければ無限収納できるようになるかもしれないし、次も頑張るぞぉ!っていうか称号ボディーシートウーマンって……。


「セーレーナさん他に助けが必要な人がいたらお知らせが来るの?」

「はい、今まさにお願いしようと思っていたところです。勇者バルクの元に行き彼を救ってほしいのです。彼は転生者で元は細井(ほそい)茂弥史(もやし)という日本人でした。ですので虹美が転移者だと告げれば、同郷ですのですぐに打ち解けられるはずです。どうか彼を助けてあげてください。」


 そう言い終わると、当たり前のように目の前が眩しくなる。


 前回とは違い最初の感想は暑い。しかも湿気が多く蒸し暑いというのが正しい。木々の生い茂る様子はジャングルといった様だ。またも服装は変わっていて、長袖長ズボンに今回は手袋長靴を着用している。

 やたらと肌を露出させないようになっている。

 早速もらったスキル毒鑑定を使ってみると、景色の所々に赤黒い場所が見えるようになった。足元にもあり、見てみれば小さな紫色した花が咲いていた。

 ポップアップする形で小さな画面が出てきて詳細が書かれていた。


 *毒華アレアレ 花粉が人体につくと赤みを帯びた肌荒れを起こす。 付着したときの処置:消毒


 これは便利だ。毒鑑定を使用したまま、勇者バルクという人を探さなければならない。

 だが、前回同様きっと近くにいるのだろうと思っていると、すこし離れたところから野太い声がした。


「おりゃああああああああああああああああ!」


 ぶぉぉぉんと風を切るような音がしたあと、辺りは静かになった。

 声の方に向かうとそこにはそれはもう滝のような汗を流した筋肉隆々の上半身が胸当てだけというそんな装備で大丈夫か?の大剣をもった男が立っていた。よく見ると露出している肌の部分はすこし赤い腫れのような状態になっている。もしやあの花の花粉がついてる?


「何やつ!!」


 大剣を向けられ思わず両手を上げるしかできなかった。


「こんなところに女子一人でどうやってきた?」


 セーレーナさんに同郷だからすぐに打ち解けると思うって言われたけど、伝える前にやられそうなんですけどぉぉぉ!?


「あ、あの日本から来ました滝汗虹美と言います。精霊の導きでここに来ました。勇者バルクはあなたですか?」

「に、日本から来ただと!?確かに俺はバルクだ。君は転移者なのか?」

「はい、私はバルクさんにボディーシートを届けにきました。」

「ぼ、ボディーシート……?」


 私より汗をかいているバルクには、やはり男性に人気のあるニャツビーのシリーズではないだろうか。モニターをオープンしてニャツビーブランドシリーズで絞り込み機能を使った。暑い気温だし、冷感のあるものにしようと色々出てきたが選択できるのがアイスシャボンとフリーズピーチだけだった。桃かぁぁ?と思ったのでアイスシャボンを選択すると数値は400と表示されていた。


「バルクさんすみませんが400円くださいませんか?」

「あ、あぁかまわないが……」


 そう言って腰についていた小さなポーチから小銭を出した。私は400円を受け取りバングル吸収させアイスシャボンのボディーシートを召喚した。それをバルクに渡すと目を輝かせていた。


「ま、まさかこれは!!」


 袋から一枚シートを取り出し首の後ろに当てた瞬間


「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」


 叫び声をあげたかと思うとものすごいスピードで体を拭いていく、胸当てまで脱ぎだした。


「待って!?乙女がいるのに!!?てか脱ぐなぁぁぁあ!!」


 お年頃17歳の私に男性上半身を見る機会などそうそう無く見てはいけない気がしていたがチラッと見えてしまったものは仕方ない。

 拭いたところから赤みがあった肌が普通の肌に戻っていく。もしかするとシートに含まれるエタノールが消毒の役割をしてるのかもしれない。

 使い終わると消えていくシートに驚きつつもなくなっては新しいシートを出し拭き足りないところを拭いていく。そして下を向きわなわなと震えているバルクは、ガバッと顔をあげると


「このひんやり感……戦える!オレは今、誰よりも軽い!!」


 猛スピードでどこかに向かったかと思うと、向かった先の方でドォォン!という大きな音がした。そしてバルクが土煙をあげながら走ってこっちに戻ってきた。


「聖なるシートの使徒よ!!ありがとう!!俺は今誰よりも強い!!魔王も倒せる気がする!ありがとう!!」


 私の前で跪き私の両手を包むように握られた。一瞬こんな筋肉達磨に握られたら手が折れるんじゃないかと思ったが、そんなことはなく感動の涙を流しながら両手を包むだけだった。

 こんなに感謝されるとは思わず、照れからどうしたらいいのかわからなくなってしまう。


 ちょっとはがゆいので早くおうちに戻りたい。そう願ったらまたも景色が光りだした。

 たった一日で転移にも慣れたものだ。自分の部屋に戻ってきている。

 だが少し疲れてもいる。そりゃそうだろう異世界転移初心者が1日の間に2回も異世界に行って人救ったのだから。


「なんか……もう異世界の人間関係、学校より濃くなってきてない?」


 私はそっとバングルを見つめた。

 ……次はどんな汗と出会うんだろうか


ちょっとひさびさに書こうかなって思って書いてたら楽しくなってきてそれなりに書いてしまいました。

連載版を作ろうかなと検討中です。

感想や評価いただけるとモチベに繋がるのでお待ちしております。

あと、完結済みの作品も見ていただけると嬉しいです。↓↓

「スマホで料理召喚の独身貴族~映える写真は異世界無双に向いてるかも~」

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