偽りの僕
痛い。
この感覚を忘れていたのはきっと僕が偽りであったから。
偽りであったから痛みが無くなっていたのかもしれない。
もしそうなら、今の僕は本物なのか?
それともさらに設定を組み込まれた偽りなのか。
それはわからない。
だけど僕が今見えてるこの景色は、本物であってほしいな。
だって、凄くきれいだから。
僕が足を踏み入れていいのかも分からない。
そんな、景色だった。
暗闇という舞台で踊る星々。
その下に存在している木々。
とてもきれいだ。
こういうのをハーモニーというのか。
もう、ここから動きたくないな。
だって、きれいだから。
こんな思考になってしまうのはきっと偽りの僕だからだ。
きれいごとなんてない、本音だけで生きていく偽りの僕。
だけど、そんなの関係ない。
今は、ただ意味もなく歩いているだけ。
辛くもなく、楽しくもない。
ただ存在しているだけ。
そうして僕がぼーっとしていると、小柄な男に話しかけられた。
「君、どうしたんだい?」
この世界は人間が居るのか。いや、人間じゃないのかもしれない。他種族の記憶を喰い、その記憶に適した形に変形する化け物かもしれない。ただ、人間の可能性もあるから僕はきちんと返事をすることを決めた。
「意味もなく、生きているだけです」
そう返事をすると男は大爆笑し始めた。一体何故だ??
「お前!そういうことじゃねえよwww!!」
は?なんでこいつこんなに笑ってんだよ。むかつくな。って、誰かのために自分の時間を割くだなんて、いつぶりなんだろう。もしかしたら本当に元の僕に戻れたのかな?
「じゃあどういうことですか?」
ただただ、今は何も考えずに人とのコミュニケーションをとる。
「こんなところで何やってんだってことだよwww!!」
「ああ、なるほど。今は、静かな空で派手に踊る星を観てたんです」
「そうなのか!!じゃあ、俺も見ようかな!!」
というか、この世界はどういう世界なのだろう。もしかしたら、また魔法が使える世界なのかもしれない。もしも。もしもそうなら僕の使える魔法は無い。その代わりにチート級の能力があるんだろう。でも、そうと決まった訳じゃない。一人で考えててもしょうがないし、この人に聞くか。
「あの、いいですか?」
と言ったのだが、男は何かを懐かしむように黒色の舞台を見上げる。そうして、ワンテンポ遅く、反応した。
「どうした?」
「この世界って、どういう世界ですか?」
僕がそういうとまた大爆笑しはじめた。
「お前www!!さすがにそんなの分かるだろww!!」
「いや、僕記憶がなくて」
僕がそういうと男の人は急に笑い止んだ。
「そうか。じゃあ、教えてやろう」
「切り替えが早いですね」
「そうか?まあ、そんなの今はどうでもいいんだ。さて、この世界について、か……。お前、さては転生者だな?」
おっと、ここでその質問か。いや、転生と言うよりかは転がり込んできたって方が正しいんだろうけど……。いや、それが転生っていうのか。ってことはこの質問の答えはyesか。
「はい、そうです」
「だよな。そうじゃなかったらわざわざそんなの聞いてこないからな。じゃあ、特別に教えてやろうか。本当は、転生者には絶対に教えてはいけないって話になってるんだが、ここだったら絶対に聞かれないだろうからおしえてやろう」