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序章「0」

「キミの場合は、それが正解なのか?」


 少女は言う。


「うん、これが正解だ」


「そうなんだね。じゃあ、行ってらっしゃい!」


 少女は今まで誰にも見せてこなかった涙と元気と笑顔を僕だけに見せた。


その人間らしい行動に少し怖くなった。


前に進むのが。


だけど、前に進んでいく。


進んだ先に何があるのか分からない。


何のために歩いているのかも分からない。


この行動は全て無駄になるのかもしれない。


だけど、それだけれども進む。


進まなければいけない。


止まってはいけない。


後ろで泣いている少女の顔をもう一度見る事さえ許されない。


振りむいてはいけない。


また戻ってしまうから。


前の自分に戻ってしまうから。


「もしもなんて存在しない」


そんなの、僕が一番わかってた。


いや、分かってる振りをしていた。


そして、僕は自分を偽ってしまった。


理由は分からない。


ただの怠慢か、


はたまた、傲慢だったのか。


分からない。


何故かは分からない。


ただただ、歩き続ける。



どれくらい歩いただろうか。

そんなの、考えたところで意味はないのだろう。

ただただ無駄に生きるだけの人生。

キミが消えた世界。

光の消えた世界。

そんな世界でも、苦しさはある。

今、感じている息苦しさ。

そして今の体でも感じられるほどの冷たい何か。

これは、水?

水の中に居るのか。

感覚を奪われてさらにどこに進んでいるのかわからなくなる。

そして、水が無くなったのか息苦しさと冷たい感覚が消えた。



床が無くなった。

そして、落下し続ける。

まるで今まで積み上げてきたものが崩壊したかのように、落下していく。

何がなんだか分からないまま。



いつ、着地するのだろうか。

分からない。

ただ、もしこれが今まで積み上げてしまったものが崩壊したせいで落下しているのだとしたら

意外と頑張っていたのかもしれない。


そして、なんの前兆もなく全身にとてつもないような痛みが走る。

おかしいな。

なんでだろう。

もう痛覚は無いはずなのに。

もしかしたらまた「0」に戻ったのかもしれない。

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― 新着の感想 ―
主人公の内面の葛藤や、少女との関係性が非常にリアルに描かれていて、読んでいて胸が痛くなりました。前に進まねばならないという強迫観念と、それに伴う恐怖や不安が、水中や落下という象徴的な表現で巧みに描かれ…
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