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侯爵家の裏事情2〜婚約解消と同時に旦那様が出来ました〜

作者: パル

お読み下さりありがとうございます。


この作品は、『侯爵家の裏事情1〜転生姉妹は婚約破棄の舞台に挑む〜』の続きにもなっています。

単話でも楽しめるようになっています。




「うわぁー! うん。カッチョいいー!」



 目が覚めると、私の目の前には大、大、大好きな彼の寝顔があった。


「……ん?……あぁ、今朝もか?……ほら、もう少し寝るぞ」


 そうだった。私とグレイルは夫婦になった?なった。なったのだ。


 そう言って、私を引き寄せてから抱き枕のように扱うのはグレイル・スプリング。私の旦那様だ。


 そして私はヴィオラ。スプリング侯爵家の転生長女である。


 シルベスター侯爵家の次男だった彼は、私が跡取りとなったスプリング侯爵家へと婿入りした2つ年上の再従兄弟。




 グレイルの冷ややかな藍色の瞳はちょっと怖く見える。

 艶のある銀色の長髪は仄かに色気を感じさせ、王宮騎士として毎日体を鍛えている彼の体には見目の良い筋肉がお付きになっている。

 顔良し!体型良し!性格良し!そんな私の旦那様だ。


 しかし、どうしてこんなに冷ややかな瞳なのだろうか?朝から隣りにある美しい寝顔に心臓がドキドキと波打つ。

 ……が、彼が瞼を開いた瞬間にバクバクと心臓音が変わる。

 冷ややかな瞳で射殺されるような?私に死亡フラグが立ったかのようだ。



 私達は新婚ほやほやで、グレイルがスプリング侯爵家に婿として住むようになってからまだ10日しか経っていない。


 まだ慣れないのが、朝目が覚めると彼の顔が私の隣にあることだ。

 そして目覚めた私は二度寝など出来ない。だって、朝限定のグレイルの寝顔を見ていられるから!

 とてもカッコいい!ツヤツヤ肌がキレイ!どれだけ見ていても飽きることのない美しい寝顔の旦那様。


「あまりジロジロ見るな。寝ろ」


「あぁー。お願い。目を開けないで!」


 グレイルはパチリと目を開き、ジロリと私を睨んでそう言った。


「お願ーい。まだ目を開けないでー!」


 私が再度、目を閉じるように言うと「フンッ」つっけんどんに鼻を鳴らすが、やっぱり彼は優しくて、瞼を閉じてくれるのだ。


 そして、瞼を閉じた後で毎朝私に告げるの。


「朝から可愛い過ぎだ」


 ……ほらね!


 そんな彼に私も毎日お返しする。


『チュッ』


 そして、リップ音の後に彼の胸に顔を埋める。

 どうしてかって?


 だって、その後で彼は目を開けるから。寝顔を堪能したい私は、そこから妄想世界へと突入するわけ。


 あぁーたまらん。



 といっても、ずっとそうしてはいられない。


「そろそろ起きるか」


 ベットからグレイルが下りると伸びをした後で、彼を見つめて耽っている私に首を傾げる。


「なんだ?朝からしたいのか?」


「はぁ?何ハレンチなこと言ってんの?そんなわけないでしょう」


「違うのか?」


「違うわよ」


「そうか、残念だ」


 そう言って、サッサと自身の着替えを終えると私の着替えを持ってきて、私の着替えをテキパキと終わらせる。


 毎朝思う『侍女より出来る男』



「行くぞ」『チュッ』


 着替えが終わると私の唇に軽く唇を重ねてリップ音を鳴らす。


 起きたばかりの私には、まだまだハードルが高い。


「だ、だから……起きてからはハレンチは……まだ、だ、だめよ」


 私は顔を真っ赤になり、恥ずかしくって俯きながら言う。


「仕方がないだろう。直ぐに慣れるさ」


「な、慣れる?」


「あぁ。毎日すれば当たり前になるだろう?たまにするから、慣れないのだ」


「そう、そうね。毎日すれば……?」


 ……ん?……慣れなくてもいいのよね?




◇◇◇



 私とグレイルが夫婦となった日は、私の学院卒業パーティーの日だった。


 その日、この国ドルジア国の王太子である第一王子のアルフォンソ殿下から、私は婚約解消を言い渡された日でもある。


 更に婚約を解消した後で、アルフォンソ殿下はスプリング侯爵家の転生次女である私の妹プリムラと婚約を結んだ。


 せっかく転生して新しい人生を謳歌したい私は、アルフォンソ殿下との婚約を望まなかった。

 それとは逆に、妹のプリムラはアルフォンソ殿下との未来を望んだ。


 私とプリムラは、お互いに協力しあい前世の知識と経験を活かしてアルフォンソ殿下の婚約者という立場を交換する計画を立てた。



( そう! 仕組んで、仕込んで、仕掛けたの!)



 この世界は、前世で私が書いていた執筆途中の小説の中だった。

 だから、アルフォンソ殿下が婚約者と婚約破棄をして可愛いヒロインと婚約を結び直すことを知っていた。

 そして、私はプリムラをヒロインにすることを決意した。

 プリムラの髪をピンクに染め、ブサイ…ク……いや、ちょっと可愛さが足りなかった顔もメイクで美しく変身させる。

 そうして、やっとプリムラがアルフォンソ殿下との未来を得ることができたわけ。


 私が協力したのは、アルフォンソ殿下との婚約解消を望んだからだけではない。

 前世で私はプリムラにいじめられていたのだ。

 そんな相手と今世では仲良く?

 ……そんなの無理。

 早いとこ離れたいのが本音だ。

 彼女が王家に嫁いでくれれば、早々会うことも無くなるし。そのために協力したわけ。




 卒業パーティーでは、騎士服で現れたグレイルにダンスに誘われ……彼が、パートナーが居なくなった私の為に勤務中に抜け出して会場内へと来てくれたのかと思っていたら。


 ――違った。


 後から彼が教えてくれたのだが、彼が所属していた騎士団内では学院での私の噂話を何度か耳にしていたらしい。

 この国の王太子とその婚約者の話は、騎士達の訓練中に話題の種に……おつまみにされていたみたい。

 私のことを良く知る彼は『私が婚約者に蔑ろにされている?違うな?蔑ろにされるように仕向けているはずだ』そう思いながら話題に上がる度に話を聞いていたらしい。

 その中で、王太子が卒業パーティーで婚約破棄を言い渡すという情報を耳にしたという。


 休日だった彼は、会場の警備を任せれていた騎士達の中に紛れ込み、中の様子を伺っていたということだ。


 最初にダンスを踊る相手は、家族、婚約者、婚姻相手の誰かと踊るのが習わしだ。


「婚約解消をされた時点で、必然的に夫となった俺が行かないわけがないだろう?」


 そう。彼は私の婚約解消が決まると同時に夫になっていたのだ。



 


 卒業パーティーの帰りに、グレイルはスプリング侯爵家の馬車に同乗してきた。


「ヴィー。俺はダンスを一緒に踊ったよ」


 馬車の中で、彼はそう言って私の手を取り顔を覗き込む。


 そして、私は思い出した。どうして忘れていたのだろう?

 多分……転生者だった記憶が蘇ったことと、アルフォンソとの婚約を取り消すのに、婚約破棄から婚約解消を目指していたことですっかり忘れてしまっていたらしい。


「……あ、あぁぁぁぁぁー!」


「まさか忘れていたとは言わないよな?」


「お、覚えています。大丈夫。覚えていますとも!」


「婚約が取り止めになった瞬間から履行されるのだったよな?」


「その様にしました……よね」


 そもそも私が言い出した『グレイルと結婚したい』と……。




 前世での私は、言った言わなかったで口論となる職場で働いていたために、全てにおいて必要なことは書面に残すことを日常にしていたのだ。

 そして、それは転生後も継続されていた。

 前世の記憶を思い出す前から、約束事は書面に残すことを必須としていた。


 私はアルフォンソ殿下との婚約が取り止めになった瞬間から履行される婚姻届けの書面を、グレイルと一緒に神殿に提出していた。


 それは、彼が14歳で私が12歳のとき。大好きだったグレイルに私は結婚を迫ったのだ。ませガキだったな。


 両家とも仲が良かったこともあり、すぐに書面にした。

『ヴィオラが16歳を迎えた日に婚姻する』と。

 記入日と4年後の年齢、お互いの名前を記入した婚姻届。

 両家の両親の合意書も用意した。

 しかし、提出寸前でアルフォンソ殿下の婚約者探しのお茶会が催された。そして、まさかの婚約者に選ばれてしまった。


「絶対に王子様とは結婚しないから、グレイルとの結婚届を提出する」


 そう言って、グレイルに私のファーストキスを押し付けた。

 そして、泣きながら両親を説得してグレイルと神殿に書面を届けに行った。


 もともと作成していた書面に『他者との婚約取り止め後、その時点で婚姻を履行する』と付け足して――。


 そして、私は思い出した。


「……あ、あぁぁぁぁぁー!」


「今度は? 何を忘れていたんだ?」


 今、私はサラリと流していたが、そうだった。

 グレイルと……チュウしちゃってたんだー!


「な、何も? 何も忘れていないわ」


「では、なぜそんなに急に顔が赤くなったんだ?」


「気のせいよ!」


 子供の頃と変わらないグレイルの様子に私は笑って済ませ、忘れていたことを心の中で謝ったのだった。





 スプリング侯爵邸に着くと、グレイルが久しぶりに来た我が家に懐かしさを感じているようだ。

 キョロキョロと邸を見回しながら、年少時代の思い出を話す彼は、見た目と違ってメチャクチャ可愛い。


 廊下を進み応接間へ入ると、父様が先に婚姻届けの写しを取りに扉から出ていった。

 その後でソファーに座ろうとする。……が、グレイルは眉間を寄せてしわを作ると冷たい視線を私に向ける。

 そして彼は低い声でドレスを着替えてくるように言う。

 面倒臭い。私は渋々一度部屋へと着替えに戻った。


 彼の表情からすると、どうもアルフォンソから贈られたドレスだと思っているようだ。

 こんな地味なドレスを王家が贈るわけがないでしょう?そう思いながら自室にあるトルソーに着せられたドレスの前に立つ。

 宝石が散りばめられた綺羅びやかなブルーのドレスを目の前にして、私はグレイルの先ほどの苦々しい表情を思い出すと『ふっ』吹き出してしまった。

 しかし、この目の前にあるドレス。王家から贈られてきたものだが……質屋では引き取ってくれるだろうか?



 侍女のマロンが着替えの手伝いに入室してくると、入浴の用意も済んでいるということだ。

 せっかくなので、入浴を済ませてから部屋着に着替え侯爵家の本邸へと戻る。


 侯爵本邸へと……戻る?

 そうだったぁー! 私の私室は別邸にあることをグレイルに言ってなかったわ。

 日常、本邸と別邸の行き来を繰り返しているのが当たり前過ぎて……すっかり忘れていたわ!

 ちょっと時間がかかったけど、彼はゆったりしながら思い出に浸っているわね。

 



 応接間へと戻ると、グレイルが今日一番の笑顔で出迎える。

 そんなにドレスが気になっていたのかな?そう思いながら彼の隣に腰を下ろす。


 すると、グレイルは耳を真っ赤にして私をガン見している。


「な、なに?」


「やっぱりヴィーは、そのままの姿の方が目茶苦茶可愛い」


 あー……なるほど。

 入浴してきたために素っぴんだ。


「そう?ありがとう。久しぶりに容姿を褒められたから照れちゃうわ」


 これからは、ありのままの姿でいられることを思うと嬉しくなった。

 だって、毎朝鏡台の前にいる時間は苦痛だったから。

 マロンにブサメイクをしてもらっている間『動かないで下さい』『喋らないで下さい』『寝ないで下さい』私の侍女は一生懸命。

 同じ位置に、同じ大きさ、同じ数のソバカスを描き、太さも角度も変わらないようにと眉を描く。

 プロ意識が高いのだ。

 誰も私の顔など見ないというのに――。


「髪の色は? 洗っただけでは戻らないのか?」


 気がつけば、私の髪を一房すくいマジマジと見ている彼。


「染めてから2週間くらい経ちましたので、段々と戻ります。後10日くらいすると、元に戻ると思われます」


「ヴィーの藤色の髪が早く見たい」


 今は茶色だが、素の私は藤色にゴールドがかった髪色をしており瞳の色は葡萄色だ。

 見た目がキツイ印象を与えるので自分の容姿はあまり好きではない。

 しかし、グレイルの言葉一つで早く髪色を戻したいと思ってしまう。



「コホン。そろそろ……いいかな?」


 対面する席では、父様が咳払いをすると口を開く。

 あっ、父様がいるのをすっかり忘れていた。

 父様は、テーブルの上に置かれていた書面を見るようにと促す。


「執務室にて保管しておいた婚姻届の写しだが……二人はこのままでいいのか? 届けを出してから年月が経っていることだし、今ならまだ白紙に出来ると思うぞ」


 父様にそう言われ、彼の方へと振り返る。


「ヴィー」彼は、小声で私の愛称を呼ぶ。


 昔と変わらない。

 深く暗い碧色の瞳が揺れている。

 その表情は私への『助けて』のサインだ。


「父様。私達には深い思いがあるからこそ、書面を神殿に提出したのです。今更白紙になど致しませんわ」




 そして、その日の夜から本邸で候爵夫妻が使用する部屋を私とグレイルに与えられた。

 父様も母様も、事情があって別邸に住んでいるのだ。


「ヴィー」


「グレイル。私……」


「いいよ。何も言わなくていい」

「あぁ、でも一つだけ聞く」

「俺が相手じゃ嫌か?」


「……グレイル。一緒に人生を共に生きて行きたいのは貴方だけだったわ。今からでも遅くない?」


「あぁ。遅くない」


「グレイル。大、大、大好き」


「昔の言い方そのままだな」



 そうして、私達は夫婦になった。



◇◇◇



 朝食の席につく前に、先に来ていたお祖父様とお祖母様に朝の挨拶をする。


 その後で、私達が席に着くとお祖母様が私達をニコニコと微笑みながら見る。


「いつ頃式を挙げるのか、予定はまだ決まらないの?」


「結婚式は、まだ先になります」


 グレイルがお祖母様の問いに答える。

 式を挙げる話など全くしていないのだが、一応妥当な言葉を選び私も答えた。


「父様と母様が落ち着いたら日を選んでくれると言っていました」


 私が口を開いた後で、グレイルは鼻で笑うと「プリムラ嬢が先ですから」シレッと言う。まぁ、その通りなんだけどね。


「まぁ。婚姻届けを出してあるからといっても、スプリング侯爵家とシルベスター侯爵家の結婚式なのですよ。父様と母様に任せてはなりません。貴方達でさっさと決めておしまいなさい」


 鼻息を荒らげてそう言うお祖母様の隣では、お祖父様が頷きながら既に朝食を口に運んでいる。


「でも、お祖母様。私達は先に新婚旅行に行くつもりなのです。だって、婚約を取り消された後にすぐ婚姻だなんて……世間に知れたら、2つの侯爵家が白い目で見られてしまうでしょう?」


「新婚旅行か。いいじゃないか。楽しんで行ってくると良い。婚姻届は受理されているんだ。結婚式は、その後で決めてもいいんじゃないか?」


 さすがお祖父様!いいこと言う!



 こうして私達は、結婚式の予定は先へと引き伸ばし新婚旅行へと旅立つことになった。

 両親達も、ゆっくり旅行を堪能しておいでと言ってくれているし。グレイルも1年間の王宮騎士の休みをもぎ取って来たし。


 旅行期間は半年以上1年未満を予定している。

 長い? うん、長いよね!

 でも……今までのことを振り返ると、

『この世界にきて、やっとゆっくり出来る』

『この世界にきて、やっと自分の人生が始まる』と言う気持ちでいる私には長いとは思えない。

 愛しい旦那様と一緒に世界を満喫してくるつもりだ。


 プリムラからもやっと開放されたし。

 ひと月分のアイプチと作り方を箇条書きしたメモを「父様からプリムラに渡して欲しい」とお願いしたし。

 彼女の顔が戻ったとしても、自分でどうにかするでしょう。




「では、いってきます♡」


 卒業式の日から……いや、結婚してから17日後に邸を出発して、愛しい旦那様と私は新婚旅行へと旅立った。


 行き先?……不明なんだよね!

 まぁ、その時々で考えながらのゆるり旅!


 ……お土産?

 それは、帰ってきたらのお楽しみ!

 ゆっくり土産話を聞かせるわ!


 

誤字脱字がありましたら

申し訳ございません。


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