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決心

作者: 黎め

 あーあやってしまったやってしまったやってしまった、何度目かのやってしまったを思い再度やってしまったと思う。

自分があほなことはうすうす、からもはやはっきりと自覚するまでに重々承知していて、気を抜けばすぐその本性はホイキタと最前線に躍り出るから、自重して慎重に生きるようにと言い聞かせてはいるものの、気を抜く前に気は抜けて気づいたらやらかしている。

 ようするにあほなのだ。

 所持する目が異なれば見える世界が違うのは当然で、目の前のこと、から果てしなく、まで、生きている世界はそれぞれだ。より多く、見えないものまで見えるということはつまり、私なら見たくないと思うようなことまで見えているということで、それは心をくだく事柄もそれだけ増えるということだ。

 自分のことで他者をわずらわさせるのが苦手なくせに、はからずもそうさせてしまう事例が多発する私は、自ら進んで悩みを相談したり秘密を打ち明けたりすることが嫌いだ。どのみち私の求めるものは、その場しのぎの対症療法的なものやたとえそれが心のこもった熱いものだったとしても、ただの慰めなどではない。当然私のために頭を使ってくれたことには最大の感謝の意を持ちはするし幸せに思う、それでも思い上がりも甚だしいことを承知で正直に言うと、思い切って開示したところで、返してもらった反応にかえって脱力することが多いという諦念は拭えなかった。

 だからどうしても甘えてしまうのだ。かこーんと後頭部を殴って、絶対に私が自分でたどり着くよう促し連れてってくれる貴重な存在なのだ、どれだけ甘えてきたかわからない。

 何もお返しはできないし、ならばせめて。ならばせめてと決めていた。私は絶対不快な言動は慎もう、何の足しにもならないが、それでなくとも大忙しの対処しなければならないあれやこれやにわずらわされ続けているのだ、邪魔にはなっても嫌な思いをさせるようなことはすまいと決めていたのに。

 やってしまうのだ、愚かだから。

 きっと。以前までの私なら、寝込んであほあほあほと呪文を唱え、自分を責めて満足して終わりだった。私は初めて点を繋げ線をこしらえるのだ、失敗から学ぶということを成し遂げるのだ。

 それがずっと力を与えてくれたことへのせめてもの報い、合ってるかはわからなくとも少なくとも自分責めして寝込むよりかは建設的だろう。

 意気揚々と顔を上げる私は落ち込むでなく励ましている。目を養え、見える世界を広げよう、あちこちに飛ばした視点で、あらゆる角度からものを見よ。こんな私になれるとは思ってもいなかった。

 よーしやるぞ、もうやる気にみなぎる私はやっぱりあほなのかもしれない。それでもそれをよしとし、くり返すまいと努めるならば、私はひとつ賢くなったのだ。

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