第二オタロード(後編)
いらっしゃいませ
ごゆるりとお楽しみください
そんなこんなで第二オタロードにやって来たあーちゃん、いっくん、うっちンのJK三人組だが。
「何故にビルの屋上に降りるのでしょうか?」
いっくんが操作するフライングプラットホームは、よくある雑居ビルの薄汚れた屋上に降下した。
「んー、説明してもいいけどぉ。メンドイ♥️」
「色々あるのよ色々」
テヘペロと舌を出すあっちゃんと、FPFに識別タグを設置するいっくん。
「その札は? 防犯対策なら有料駐車場に停めるのがよろしいのでは」
「いっくんはバランスブレイカーだし。縄張り争いに発展するから、普通のトコ使えないんよ」
「縄張り争い」
「ホウチ区画だからねぇ、ここってば」
「法治?」
「放置、だね。微妙な違いで大違いだ」
あーちゃんの言葉遊びを、手持ちのデバイスから音声と文字で指摘するいっくん。
「とっても嫌な予感が増大中です!」
「ホントうっちンの思考回路、成長してるぅ! 空気が読めるようになってきてンじゃん!」
「良くも悪くも経験は経験だからな。主神経細胞も刺激受けて、軸策の結束が進んでるんだろ」
女三人よれば、との言葉通りにキャイキャイ騒いでいると下につながり扉が開き、片腕だけが肥大したサイボーグが出てきた。
エンジンそのものを組み込んだような右腕は、いかにも違法改造してます、堅気ではありませんと自己主張している。
「あの、いっくんさん、あっちゃんさん。えと」
うっちンがそんな見た目に気圧され、いっくんの後ろに隠れるが、
「お待ちしておりました。どうぞ」
当のサイボーグは慇懃に頭を下げつつ横に避ける。
「ありがとー」
「お疲れさん」
「え……あの、お疲れさまです?」
その横をさらりと進む二人に、おずおずといっくんの制服の裾をつまみながら通るうっちン。
ちらりとサイボーグを見上げると、タトゥーが入った顔がニコリと笑顔のようなものを浮かべたが。うっちンの主神経細胞群は、そんな入力情報に恐怖という計算結果を出力した。
時々点滅する蛍光灯。暗い階段を降りながら。
「今から本屋にいくんですよね。近いのですか?」
「行くけど。その前にやっときたいことあるから、そっちユーセンかな」
「んで、私は両手空けときたいから、地声でいくんでヨロシク」
いっくんは何時も片手に持ってるデバイスを懐にしまい、あっちゃんはよく判らない電波を飛ばし始めた。
「ここに寄ってからじゃないとな」
三階の荷物が乱雑に置かれた共用廊下を通って、何時もより少しハスキーで、少し割れた声を珍しく口から出しながらいっくんが扉の前で止まる。
その扉には『いらっしゃいませ』という文字と。とても扇情的な軍服を模したレオタード少女の等身大ポップが飾られている。胸部装甲はあっちゃんの方が厚そうだ。
「ここ来ンの久々だぜー! おっじゃまー!」
何ら気負わず、ドアを開けるあっちゃん。開くと同時に、中からはテンション高めの叫ぶような歌が流れる。
右にある『302』という部屋番号の下に飾り気もなく「空想科学保管研究所」とラベルが貼られていた。
その下に営業中という札があり、営業時間の所には『気が向いたら』と書かれていた。
縄張り争い
第二オタロードには、既存の商店会に広域指定暴力団や新規売り出し中の反社会的勢力が入り交じり、利権争いをしている
軍人くずれもいるが、軍人くずれだからこそ伊号小隊のいっくんには手を出さない
たまにチンピラが突っかかってボコられるのが、第二オタロードの風物詩の一つになりつつある
伊号小隊
『伊号』との秘匿名称で呼ばれる決戦兵器群によって構成された小隊