表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/5

第二オタロード(前編)

いらっしゃいませ

ごゆるりとお楽しみください

「ここが不良が集まると噂の場所……おばあ様、ゆうこはちょい悪になってしまいました」

「大袈裟ぁ! ちょっと客質が違うだけだって」

「ワードチョイスが昭和」


 いっくんのフライングプラットホームから降りたうっちン、あーちゃんが好きに言う。

 ここは何時ものショッピングモールから少し離れた、国道の向こう側。低階層のビルと家屋が空中通路で繋がれてたり、路肩販売やすれ違えないほど狭い路地。戦中戦後の闇市が、そのまま無秩序に拡大し奇妙なバランスで維持されている。

 数寄者達が集い騒ぐ混沌街、通称「第二オタロード」。

 何故ここに来たのか、少し遡る。



「見てみてみー! どぅよ!」


 いーっと、自分で口を左右に引っ張りながら、あーちゃんがドヤ顔する。

 その開かれた口には、キレイに噛み合わされたギザギザの歯が入っていた。


「この前の舌外すときに入れたし! 可愛いっしょっ」


 肉食者なギザ歯だが、楽しくてしかたがないと言わんばかりの笑顔とよく合っている。


「満面の ドヤ顔先輩 いとおかし」

「詠むな、可愛いけども」


 無表情にホホだけは染めてるうっちンが、あーちゃんを撫でながら新たな階悌に進もうとしていた。


「それにしても奇遇なんだけど」


 と、いっくん。

 相変わらずのスティックデバイスを咥えたまま、ファッション誌(紙に印刷されている!)のページを指す。

 そこには、八重歯を付けて可愛くなろう、との文言と。歯を見せて笑う少女が写っていた。


「実は私もしてみたんだ、ギザ歯」


 そういって開かれた口には、それは見事な牙が生えていた。上下四本。喉にかぶりついて、とても効率よく血が吸えそうだ。


「リアルな吸血鬼はちょっと、その」

「何でそれ」


 瞬間で素に戻るうっちンとあーちゃん。


「いっくんさんは綺麗系の顔立ちですから、牙は可愛いより格好いいとか怖いとかになっちゃうんですよ」

「ジャンルがホラーかエロティックサスペンスなんよ、いっくん」

「いや、これ、今流行ってるって」

「流行っていたとしても、可愛くはないかと」

「なしよりのなしなし」

「あ、ナノマシン注入機能もあって!」

「より可愛げがありません」

「スペック厨とかないわー」

「……嘘やん」


 衝撃のいっくん、突然の大阪人化である。


「本屋の……あいつが」

「また騙されたン? あっほでー」

「ほんや……とは?」

「あー、うっちンは知らないか。本、は分かるよね」

「はい。紙媒体の記録集ですね」

「そそそ。そこの雑誌もそれな、それを売ってる店のことを本屋っていうんだけど」

「ああ、そのままの意味でしたか」

「なんだけどー。いっくんが言ってるのは、そんな本中心に集めてる、行き付けのレトロショップの名前のほうな」

「レトロショップですか、ここの専門店街にもありますよね」

「ここのは高級志向だし、アンティークだし」

「興味わいてきました」

「お、行っとく? いっくんいるし調度いいか」

「調度いい、とは」

「うっちンとあーしだけだと、狙われるし」

「嫌な予感がしてくるとはこの事でしょうか」

「うっちンも成長してるってことじゃん」


 落ち込むいっくんを横目に、トントン拍子にことは進み。


「ほらほら、何時までも落ち込んでない! 行くよー」

「あまり行きたくはないのですが」

「『(`;ω;´)』」

「スマホに顔文字出すなし、早くフラポ出す出す」


 そして冒頭に戻る。

フライングプラットホーム


文字通り空中に浮く板に、手すりや椅子を着けたもの。

自転車やバイクに替わる次世代移動手段と目されてはいるが、価格的にそう広まっていない。

道交法上は軽車両に分類され、速度と高度を制限されている。

戦中は装甲化されたものが警らに監視、移動空中銃座としてよく使われており、いっくんのは横流しされた軍用機を改造したもの。頑丈で使いなれてるのが一番、と話している。

当然可愛くないが、丸みがあって愛嬌はある、らしい。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ