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リード・ヴ・ルム

本来なら、今回で依頼の全貌を明らかにするつもりでしたが、微妙な長さになってしまったので思い切って分割しました。なので、今回は少し短いかもしれませんが、どうかご了承下さい。

 『それで? 貴様ら、何用でここに参ったのかな?』


 「あ……あ……」


 突如、目の前に現れた龍にガミーヌは驚きを隠せず、腰を抜かして終始気の抜けた言葉を発していた。そんな彼女を美しくも寒気を覚える光輝く巨大な黄色い目玉が覗き込んでいた。


 『おやおや、これはまた随分と臆病な雛鳥が迷い込んだらしいな。あまりの恐ろしさに言葉すら失ったか』


 「な、なんですって? ちょっと待ちなさいよ。見た目の迫力で少し驚いちゃったけど、誰が臆病ですって!?」


 恐怖で体が硬直していた彼女だったが、煽られた事により体の震えは一瞬で収まり、龍相手に指を差しながら啖呵を切った。


 『貴様の事だよ小娘。雛鳥が気に入らないのなら、生まれたて子羊と言い直してやろうか?』


 「むぎぎ……!!! さっきからあなた何様のつもり!!? それが依頼を頼む者の態度!!?」


 目の前の龍にからかわれて、すっかり怒り心頭なガミーヌ。依頼人として心構えがなっていないと、声を張り上げる。


 『何だと……?』


 すると次の瞬間、龍の雰囲気が一変し、張り詰めた空気が流れる。


 『貴様、今なんと言った?』


 「あらー、聞こえなかったのかしら? 私達はあなたが出した依頼を受ける為に、わざわざやって来たのよ。それなのに出会って早々罵られるなんて……もう帰っちゃおうかなー!!!」


 わざとらしく大声で嫌みを口にする。が、龍の方は訝しげな表情でこちらを見つめていた。


 『小娘……嘘を申すな。そこにいる“小僧”ならまだしも、貴様の様な貧弱者が冒険者だと?』


 エクスを“小僧”扱いしながら、ガミーヌが冒険者である事を疑っている様子だった。そんな龍に対して、ガミーヌは得意気な表情で依頼書を突き付けた。


 「これを見なさい。私達は正式に……ではないけど(小声)……冒険者ギルドからやって来た正真正銘の冒険者パーティーよ!!」


 突き付けられた依頼書を覗き込む龍。すると右手を顎に当てながら、首を少し捻る。


 『うーん、確かにそれはワシが書いた依頼書に間違い無い……だがしかし……』


 そして、改めてガミーヌとエクスの姿を覗き込む。


 『ワシは数世紀の時を生きている。それ故、本質を見極める事は朝飯前だ。しかし……』


 「な、何よ……さっきから人の体をじろじろと見て……」


 『小娘。貴様からは何も感じない。才能の欠片一つもな』


 「なっ!!?」


 『次いでに言えば小僧。貴様からも何も感じない』


 「…………」


 『そう言う訳だ。分かったらさっさと代わりの者を寄越すのだな』


 「……ふ、ふざけんじゃないわよ!! どうして才能云々で断られなきゃいけないのよ!!?」


 理不尽としか言えない依頼拒否に、ガミーヌの怒りが爆発。龍相手という事を忘れ、喚き散らす。


 「大体ね!! あんたみたいな龍に私達の何が分かるって言うのよ!! 危険度数10の依頼だから期待してたけど、依頼人がこんな“マヌケ”だったとはね!! そんなに見るのが好きなら、これからもずっとのんびり品定めでもしてるといいわ!!! お望み通り、代わりの冒険者を連れて来てあげるから!!」


 『……おい、待て』


 エクスを連れて帰ろうとするガミーヌを引き留める龍。


 「何!!? まだ何か用があるの!!?」


 『貴様、今ワシの事を“マヌケ”と言ったか……?』


 「……!!!」


 その瞬間、ガミーヌの脳内に電流が走った。不適な笑みを浮かべながら、ねっとりとした様子で喋り始める。


 「えぇ……そう言ったわ、“マヌケ”ってね。だってまさか見た目なんかに騙されるだなんて、あの聡明で伝説的な存在である龍とは思えないわ」


 『つまり貴様らは見た目以上に才能がある……そう言いたい訳か?』


 「まぁ、これまで幾つもの難関依頼をこなして来たわ。そう、見た目以上にね!!」


 『…………』


 難関依頼(危険度数1~4)。正に嘘も方便という言葉がピッタリのハッタリに対して、龍は黙り込んでしまった。


 「残念だわ。あの聡明で伝説的な存在である龍の力になれると思って来たって言うのに、その本人に断られてしまうだなんて……でも仕方ないわね。きっと何か私達では想像も付かない深い考えがあっての事でしょうね。まさか見た目だけで判断した訳じゃないだろうし……ね?」


 『ク……ククク……クハハハハハ!!!』


 ガミーヌの皮肉を込めた物言いに対して、突然片手で両目を覆いながら大声で笑い出した龍。


 「な、何が可笑しいのよ!!?」


 『いやいや、嬉しくてな』


 「う、嬉しい?」


 『かつてこれ程まで、このワシに物申す者などいなかった。それもこれ見よがしに精神を逆撫でされる事など、初体験だ。だからか少し頭に来る……』


 「ひっ……」


 『……が、それと同じ位貴様らに興味が湧いたのも事実……』


 「え?」


 『いいだろう小娘。貴様の挑発、乗ってやろうではないか』


 「そ、それってつまり……!!?」


 『この依頼、貴様らに託すとしよう』


 「わぁ……よっし!!」


 何とか依頼人から依頼を受けられた事に、ガミーヌは小さくガッツポーズを取った。


 『さて、依頼内容を話す前に自己紹介するか。小娘、名は?』


 「あっ、私はガミーヌよ」


 『ガミーヌ……それでそっちの小僧は?』


 「…………」


 龍の問い掛けに無言のエクス。緊張している訳でも無く、端から答えるつもりが無い様だ。その態度に龍の表情が曇る。


 『おい、貴様に聞いているのだ。さっさと答えぬか!!』


 「ちょ、ちょっとこんな時まで無言を貫くの!? あっ、えっと彼はエクス。私の仲間よ」


 「…………」


 『全く……今度からは連れの会話能力を鍛えた方が良いぞ』


 「分かってるわよその位……それで? あなたの名前は?」


 『うむ。ワシは気高き龍の一族でも最高位の存在。名を……“リード・ヴ・ルム”である』


 「“リード・ヴ・ルム”……何だか言いにくい名前ね。取り敢えず呼び名は“ルム”で良いかしら?」


 『それで構わぬ』


 「それじゃあルム。そろそろ依頼内容の方を聞かせて貰おうかしら?」


 『いいだろう。ワシから貴様らにやって貰う仕事はたった一つ……龍の墓場を荒らす賊。“邪龍教団”を討伐して貰いたい』

次回、いよいよ依頼全貌が明らかに!!

邪龍教団とはいったい何者なのか!?

次回もお楽しみに!!

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