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危険度数とランク

皆様、遅ればせながら新年明けましておめでとうございます。今年もマーキ・ヘイトの作品をよろしくお願い致します。

 ガミーヌとエクスがパーティーを組んで数日。ここ冒険者ギルドでは、何事もない平和な日々が続いていた。


 「ちょっとどういう事よ!!?」


 今日までは……。


 ギルド内にガミーヌの怒号が響き渡る。その場にいる全員が声のする受付カウンターの方に顔を向ける。そこには張り付いた笑みを浮かべる塩対応受付嬢と、そんな彼女を歯を剥き出しながら睨み付けるガミーヌの姿があった。側にはエクスもいる。


 「ですから、ガミーヌ様ではこちらの依頼書を受け付ける事は出来かねます」


 「だからどういう事って聞いてるのよ!!」


 どうやら依頼の受託を済ませようとした所、塩対応受付嬢に断られてしまった様だ。


 「どういう事も何も、ガミーヌ様はこの依頼に適正では無いからです」


 「何よ適正って!!? 私が弱いって言いたい訳!!? 言っておくけどね、私はあのボアベアを倒した実力者なのよ!!」


 まるで自分で倒したかの様な言い草だがガミーヌ曰く、パーティーは一心同体。つまりエクスの手柄は自動的に自分自身の手柄にもなるらしい。


 「その私に適正が無いですって!!? もうあなたじゃ話にならない。ここの責任者を出しなさい!! 直接文句言ってやるわ!!」


 「…………」


 責任者を出せというガミーヌの言葉に、塩対応受付嬢は目を逸らす。まさか目の前にいるこの受付嬢こそが、ギルドマスターなどと口が裂けても言えない。言えば徹底的に追求されてしまうだろう。


 「何黙ってるのよ。いいから責任者を出しなさい!!」


 「……申し訳ございません。現在、ギルドマスターは席を外しておりまして……直ぐには対応しかねます」


 適当に誤魔化し、頭を下げて謝罪する。その様子にガミーヌは違和感を感じながらも、思考を切り替える。


 「ならもっと具体的に説明しなさい。この私の何処に適正が足りないって言うの!!?」


 「こちらの依頼書の“危険度数”が3に対して、ガミーヌ様のランクは“ビギナー”ですので、受け付ける事は出来かねます」


 「き、“危険度数”? “ビギナー”?」


 聞き慣れぬ単語に首を傾げるガミーヌ。


 「な、何よそれ……」


 「冒険者登録する際、ご説明を受けた筈ですが?」


 「うぐっ!! そ、そんな昔の事、忘れちゃったわよ……(い、言えない。登録する前日、楽しみ過ぎて寝れなくて寝不足のまま朝一番に登録して、説明を受けている間ずっとうたた寝していたなんて……絶対に言えない!!)」


 「(うたた寝していた事は他の受付嬢から聞いていますけどね)」


 何とか誤魔化すガミーヌだったが、ギルドのトップであるギルドマスター相手にはバレバレであった。


 「……そうでしたか、それでは改めてご説明致します」


 「そ、そう? あなたがそこまで言うのなら仕方ないわね。聞くのもやぶさかでは無いわ」

 

 そんなクールぶって見せるガミーヌを心の中で失笑しながら、何処からかボードを取り出した。


 「まずこの冒険者ギルドでは、世界各地から様々な依頼を取り扱っております。モンスター討伐から薬草回収。近所の店へのおつかい等の小さな依頼や、世界を揺るがしかねない危険な依頼まで存在しています」


 「世界を揺るがしかねない危険な依頼……そうよ、そういうのをやりたいのよ私は!!」


 「ですが、そうした危険な依頼に初心者冒険者を派遣すれば、冒険者本人は勿論、依頼人にも被害が及ぶ可能性があります」


 「そうね。実力も無いのに挑むなんて、無駄死にもいいところよね」


 さも、自分には実力があると言いたい雰囲気だったが、受付嬢は無視して話を続ける。


 「そこで冒険者ギルドは、依頼内容それぞれにその依頼がどれだけ危険か一目で判断出来る様に致しました」


 「それが危険度数って訳ね。そう言えば依頼書の概要に記載してあったわね」


 「はい、危険度数は0~10の全部で11段階存在します」


 「へぇー、そんな細かく分けてあるのね。因みに危険度数10ってどんなのがあるの?」


 「申し訳ございませんが、それをお伝えする事は出来ません」


 「何よケチね」


 「只、想像絶する程恐ろしい依頼だという事は、お伝えします」


 「へ、へぇ……言うじゃない。これでも私達、あのボアベアを二人だけで倒したのよ?」


 「ですが、エクス様が完了されたボアベア討伐の危険度数は“4”です」


 「“4”!!? あ、あのボアベアが4!!?」


 「更に申し上げれば、あのボアベアは森の主であった事から4に引き上げられた所謂異例であり、本来ボアベア討伐の危険度数は“3”です」


 「なっ……!!?」


 絶句。あれだけ苦労した相手が思った以上に低い数値に愕然とした。


 「ですので申し訳ございませんが、危険度数10の依頼内容をお伝えする事は出来ません」


 「ま、まぁいいわ、後で掲示板を確認するから……」


 「残念ながら掲示板には乗っておりません」


 「えっ、そうなの!? じゃあ、何処にあるって言うのよ?」


 「危険度数10の依頼書は、ギルドマスターの部屋に保管しております」


 「ギルドマスターの部屋……ねぇ」


 一瞬、不適な笑みを浮かべるガミーヌ。そんな彼女の表情を見逃さない受付嬢ことギルドマスター。しかし、何故か彼女も不適な笑みを浮かべていた。


 「それでは説明を続けさせて頂きます。危険度数の他に、実力に見合った冒険者を選別する為、その度数を受けられる必須の“ランク”を設けています」


 「出たわね。そのランクって言うのはなんなのよ?」


 すると受付嬢は、これまた違うボードを取り出して来た。


 「冒険者ギルドが冒険者に与える身分証です。登録の際にカードの様な物を渡されませんでしか?」


 「そんなのあったわね……」


 ポケットから一枚のカードを取り出す。それは顔写真付きのガミーヌという名前が刻まれた“黄緑色”のカードだった。


 「それさえあれば、他の町への通行もスムーズに行う事が出来るのです。また、依頼最中の器物損壊等のアクシデントに保険が降りたりします」


 「へぇー、色々と便利なのね」


 「そして一定数の依頼をこなして頂くと、ランクアップの試験を受けられるのです」


 「ランクアップ?」


 「ランクアップして頂くと、所持しているカードのレアリティーが上がり、受託出来る依頼の種類が増えるだけで無く、ギルド内での待遇も向上するのです」


 「依頼の種類が増えるって事は……成る程、ランクが上がれば上がる程、危険度数の高い依頼を受けられるって事ね」


 「その通りでございます。さすがガミーヌ様」


 「ふふん、まぁこの位当然よ。それで? 私のランクはビギナーって言ってたけど、実際どれ位なのよ?」


 「はい、登録直後の新人の方々を“ビギナー”と呼び、皆様必ず最初に通る道となっております」


 「な、なっ!!?」


 「ビギナーは危険度数0~1の比較的簡単で安全な依頼が受けられます」


 「か、簡単で安全な依頼……」


 「ビギナーからランクアップして頂くと、次は“ブロンズ”。危険度数0~2の依頼を受ける事が出来ます。その上は“シルバー”。危険度数0~3の依頼を。更にその上は“ゴールド”。危険度数0~4までの依頼を受けられます。そこから“プラチナ”、“ルビー”、“サファイア”、“エメラルド”、“ダイヤモンド”となり、最後に待つのはマスターランク。過去、このランクに到達した方は誰一人として存在しません」


 「(マスターランク……それになればあいつらを見返す事が出来る……)どうすればそのマスターランクに上がれるの?」


 「先程も申し上げた通り、マスターランクに到達した方はいません。かつて最高の冒険者と呼ばれた“アレク”でさえ、生涯掛けてもダイヤモンドがやっとでした」


 「そう……そう言えばエクスのランクは何処なの?」


 「エクス様はゴールドです」


 「……エクスでもゴールド止まり……道のりは険しそうね……けど、俄然やる気が湧いて来たわ。いいわ、私が史上初のマスターランクに到達して見せる!! あなた達はその歴史的瞬間を目撃する事になるんだからね!!」


 エクスに遠く及ばない実力のガミーヌだが、皆が注目する中で高らかに宣言する。中には笑い飛ばす者もいたが、ガミーヌは毛程も気にしてはいない様子であった。


 「そしてあなたも、精々私の勇姿をカウンター越しに眺める事ね」


 「はい、楽しみにお待ちしております。それではご説明は以上となりますので、こちらの依頼書は回収させて頂きます」


 「あっ、ちょっと待って!!」


 一通り説明を終えた受付嬢は、持って来た依頼書を回収しようとしたその時、ガミーヌがそれよりも早く依頼書を取った。そしてまじまじと依頼書を眺めた後、再びカウンターに叩き付けた。


 「この依頼書、危険度数3って書いてある。確かにビギナーの私じゃ受けられない。けど、ゴールドのエクスなら受けられるんじゃないかしら!!?」


 ドヤ顔で質問するガミーヌ。対して受付嬢は相変わらずニコニコとしていた。


 「確かにエクス様“個人”は受託出来ます。しかし、その依頼にガミーヌ様が同行する事は不可能です」


 「ど、どうしてよ!!? ボアベア退治の時は許されたじゃない!!」


 「あれは例外です。ガミーヌ様が勝手に行った事であり、本来なら一ヶ月以上の依頼受託禁止になっている所でした」


 「うっ……」


 「ですが、パーティーを結成した途端、依頼を受けられなくなるのは不憫だと、ギルドマスターが特例としてお許し頂いたのです」


 「そ、そう……もしギルドマスターに会ったらお礼の一つ位、言った方が良いかしら……」


 そのお礼を言うべきギルドマスターが、目の前にいる事をガミーヌは知らない。


 「それで? どうして私はエクスに同行出来ないのよ?」


 「依頼に同行出来るのは、エクス様のゴールドランク以上のランクの持ち主か、または同等のランクを持つ方でなければいけないのです」


 「じゃあ何よ。エクスと一緒に依頼をこなすには、私がゴールドランク以上にならないといけないって訳!!?」


 「はい、仰る通りでございます」


 「そんなの何年掛かるのよ!! もっと融通効かせなさいよ!!」


 「ガミーヌ様のお言葉を借りるのであれば、無駄死にを避ける為……でございます」


 「うぅ……分かったわ。今回は引き下がってあげる」


 「ご理解頂き、ありがとうございます」


 「えぇ、よーく理解したわ。よーくね……」


 意味ありげな言葉を残してガミーヌは、エクスと共に去って行った。すると受付嬢ことギルドマスターは、ポケットから鍵を取り出して何処かに向かうのであった。




***




 深夜。町中の明かりは全て消えており、月明かりだけが道を照らしていた。そんな寒空の下、エクスが立っていた。


 そんな彼の下に一人の少女が駆けて来る。誰であろうガミーヌだ。


 「はぁ……はぁ……待たせたわね。ギルドマスターの部屋って言うから警戒したけど、部屋の鍵が開いててラッキーだったわ」


 息を切らしながら近付く彼女の手には一枚の紙切れが握られていた。


 「ふふっ、やっぱり気になっちゃうわよね。いいわ、特別に見せてあげる。じゃじゃーん!!」


 そう言ってガミーヌが見せて来たのは、一枚の依頼書だった。一見、何の変哲も無い依頼書だが、問題なのは危険度数の項目。そこには“10”と記載されていた。


 「驚いた!!? 私、逸早くマスターランクになりたいから、そのマスターランクしか受けられない危険度数10の依頼書を取って来ちゃった!!」


 無邪気に笑うガミーヌ。一方でエクスは相変わらず無反応だった。


 「もう、リアクションが薄いわね。ちょっとは驚きなさい。そしてこの私に感謝しなさい。ゴールドランクのあなたじゃ、一生掛かっても拝めない危険度数10の依頼書よ。これを無事にこなせば、それは事実上マスターランクと変わらない。つまり一気に最高位冒険者になれるのよ!!」


 夢見るガミーヌに無反応のエクス。


 「ほら、善は急げよ!! ちゃっちゃと依頼を完了して、マスターランクになるわよ!!」


 そう言うとガミーヌはエクスを連れて、危険度数10の依頼に向かうのであった。

次回、驚異の危険度数10の内容が明らかに!!

次回もお楽しみに!!

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