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師弟対決(前編)

皆様、明けましたね。

今年もよろしくお願いします。

年末年始は何かと忙しく、書き上げる時間が作れませんでした。これからも投稿頻度は著しく遅くなると思いますが、どうか暖かい目で見守って頂けると幸いです。

 「な、何であなたがこんな所にいるのよ!?」


 「何でとは随分な言い方だな。久し振りの師匠と弟子の再会、もっと手放しで喜ぶのが普通だろう」


 「まともな師匠ならね!! あなた、私に何をしたのか忘れた訳じゃ無いでしょうね!?」


 「はて? いったい何の事を言っているんだ? お前を休まずしばき回した事か? それとも、重り付きの足枷を履かせて崖から海に突き落とした事か?」


 「バッチリ覚えているじゃない!! あなたの修行という名の拷問のせいで何度死にかけた事か……」


 「おいおい、人聞きの悪い事を言うな。全てお前の為にやった事だぞ。着実に強くなっていたというのに、こんな置き手紙だけ残して中途半端に放り出して……」


 そう言って、懐から封の空いた紙切れをヒラヒラと見せる。


 「そんな事より、私の質問に答えて!! どうしてあなたがこんな所にいるのよ!? ハッ!? もしかして私を連れ戻しに来たのね!? そうなんでしょ!! だからわざわざ二人きりの状況を作り出したんでしょ!?」


 「ZZZ……ZZZ……」


 捲し立てるガミーヌを他所に、フォールは器用に立ったまま眠る。


 「このっ……!! クソババアが!!」


 プツンと、堪忍袋の緒が切れるガミーヌ。剣を両手に握り締め、無防備なフォール目掛けて勢い良く振り下ろす。


 「全く……相変わらずだな。お前はすぐムキになって、感情に身を委ねる。だから太刀筋も読みやすい」


 「っ!!?」


 しかし、ガミーヌの剣がフォールに当たる事は無く、少し体を傾ける事でギリギリ避けて見せた。


 ガミーヌは驚きの表情を浮かべながらも、体は本能的に動き距離を取る。


 「ほぅ、反応速度はまぁまぁだな。どうやら、あたしの下を離れた後もちゃんと修行していたみたいだね」


 「はぁ……はぁ……と、当然でしょ。私は絶対あの二人を見返して、お姉ちゃんを助け出して見せるんだから……はぁ……はぁ……そ、そんな事より早く私の質問に答えなさいよ!!」


 疲れても無いのに息が上がってしまう。逆にフォールの方は冷静その物だった。ガミーヌの言葉に対して、顎に手を当てて思案し始める。


 「まぁ、別に隠す事でも無いからな。教えても良いだろう。今日ここに来たのは、お前の言う“あの二人”の護衛だ」


 「護衛? あなたがあの二人を?」


 無くは無い話だ。フォールの実力は国の中でも一、二を争う。そんな強者に守って貰える。これ程、安心な事は無いだろう。しかし、一方で大きな疑問があった。


 「その護衛がどうして持ち場を離れて、コロシアムになんか参加してるのよ。今だって、二人の側を離れてるじゃない」


 守るべき存在から離れる。護衛役にあってはならない事。ガミーヌが疑問に思うのは当然である。すると、フォールは答えにくそうに片手で頭を掻き始める。


 「……それはだな……あの二人には他にも護衛が付いているから、あたし一人が抜けたとしても問題は無い……というより護衛なんかいてもいなくても、関係無いんだがな……」


 「それってどう言う意味?」


 「ん? あぁ、今のは単なる愚痴だから気にするな。あたしが持ち場から離れた理由はガミーヌ、あんたに説教する為だ」


 「せ、説教!!?」


 含みのある言い方に思わず聞き返すが、フォールは答える気が無い様だった。それよりも、持ち場を離れた理由が説教という事にガミーヌは驚きの声を上げる。


 「あんた、試合であたしが教えた“奥義”を使っただろう」


 「奥義……もしかして、ムスケルの時の事を言ってるの? えぇ、それなら使ったわよ」


 「…………」


 ガミーヌがそこまで言うと、フォールは剣を引き抜き、目にも止まらぬ速さで間合いを詰め、剣を振り払った。


 「あぶなっ!!?」


 フォールが剣を引き抜いた瞬間から、嫌な予感を覚えていたガミーヌ。咄嗟に持っていた剣を縦に構える事で、フォールの斬撃を防ぐ事が出来た。


 剣同士がぶつかった衝撃で、両手がビリビリと痺れる。完全に殺す気の一撃だった。


 「い、いきなりどういうつもり!!? 後、一手遅かったら死んでたわよ!!?」


 本来なら恐怖を抱く場面だが、相手は所謂旧知の仲であり、フォールの事をよく知るガミーヌからすれば、彼女が何の意味も無く攻撃して来る筈が無い。故に恐怖よりも、怒りと疑問が沸き上がった。


 「師との約束を守れぬのなら、殺されても仕方無いだろう?」


 「約束って……何の約束よ?」


 「……はぁー」


 フォールは深い溜め息を漏らすと、再びガミーヌとの間合いを詰め、今度は剣を下から上へと勢い良く振り上げた。


 「ちょっと!!?」


 ガミーヌは咄嗟に剣でガードするも、フォールは振り上げた剣をその勢いのまま、今度は振り下ろして来た。


 「会話すら……!!」


 それも何とか防ぐガミーヌだったが、フォールの追撃は止まらない。続けて薙ぎ払い、突きと間髪入れずに攻撃して来る。


 「まともに……!!」


 防戦一方のガミーヌだが、次第にフォールの攻撃に慣れ始め、その剣捌きをいなせる様になって来た。


 「会話出来ない訳!!?」


 「……ほぉ」


 そして、遂にフォールの攻撃に対してガミーヌはカウンターを叩き込み、結果フォールの剣は手元を離れ、数メートル先へと弾き飛ばされた。


 「はぁ……はぁ……どう? これで少しは会話する気になった?」


 「いやいや、本当に成長した様だね。あたしの下から逃げ出した時は、根性無しと思っていたけど、こうなる事が分かっていたら、もっと早く旅立たせていたよ」


 「いいから質問に答えて!!」


 「分かったから、そうイキリ立つな。ええっと……あぁ、約束の話だったな。あんた、奥義を使う際の条件を覚えているかい?」


 「条件? えぇ、勿論。耳にタコが出来る程、あなたに言い聞かされて来たからね」


 奥義の条件は三つ、自分が瀕死である事。相手が勝利を確信して油断している事。剣を手放す勇気を持つ事。


 「それが何だって言うの? ちゃんと守ったじゃない」


 ガミーヌの言う通り、これら三つの条件を守ったからこそ、格上であるムスケルに勝利を収める事が出来た。しかし、フォールは首を横に振った。


 「いや、残念だがあんたは条件を守れなかった」


 「はぁ!!? どういう事!!?」


 「一つ目と三つ目は問題無い。問題は二つ目だ」


 「二つ目って、相手が勝利を確信して油断している事よね。ちゃんと守ってるじゃない!!」


 「そもそも、何故その条件なのか覚えているのか?」


 「当然じゃない。あの奥義は完全に初見殺しの技で、避けられたり見られたりしたらもう二度と当たらないからでしょ?」


 「あぁ、その通りだ。それで? あんたはその初見殺しの技を何処で使ったんだっけ?」


 「はぁ? 何寝惚けた事を言ってるのよ。あなたも見ていたんだから知ってるでしょ。コロシアムの会場で……って、まさか!!?」


 ここまで話した所で、漸くガミーヌは自身が犯した過ちに気が付いた。


 「そうだ。あんたは初見殺しの技を皆が“見ている”前で披露した。勝ち目が無いと思われた戦いに勝利した。そんな奴の噂が広がらない筈が無い。つまり、今後奥義を使う場面になっても、十中八九相手には当たらないって事さ」


 「そ、そんなのやってみないと分からないじゃない。それに人の噂だって長続きしない。少し経てば皆忘れるわよ」


 「実力の無い者ならそうだろうね。だけど、悲しい事にこの奥義を使うのは格上相手だ。そんな奴が自分を殺せるかもしれない技の事を簡単に忘れてくれると思うかい?」


 「そ、そんなの……その時になってみないと分からないじゃない……」


 強がってはいるが、ガミーヌは不安に襲われていた。もし、この先ムスケルの様な格上の相手と戦う事になったら。もし、その時奥義が通用しなかったら。


 永遠に答えの見つからない自問自答に、ガミーヌは絶望を感じていた。


 「……だけど、あの状況で奥義を使わなかったら負けていたのも事実……」


 「そ、そうよね!!? あの状況なら使っても仕方ないわよね!!?」


 まさかのフォールに、救いの手を差し伸べられるガミーヌ。何の疑問も抱く事無くすがり付く。


 「そして、もう奥義が使えないのも事実な訳だけど……」


 「うぅ……」


 上げてから落とすフォールの言葉に、喜んだり落ち込んだりとコロコロ表情が変わるガミーヌ。


 「そこでだ。救済措置を取る事にした」


 「救済措置?」


 そう言うとフォールは弾き飛ばされた剣を拾い、ガミーヌに向ける。


 「今からあんたに稽古を付けてやるよ」


 「なっ、何ですってぇええええええええええええええ!!?」

次回、ガミーヌとフォールによるガチンコバトル!!

次回もお楽しみに!!

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