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色仕掛け

グレルに言い寄る謎の女性スタッフ。

果たして彼女の正体は!?

 「お願いします、グレル様。お話を聞いて下さるだけで構わないんです」


 そう言って、恥ずかしそうにモジモジしながらも、ギュッとグレルの腕を抱き締め、微かに頬を赤く染めてすり寄る女性スタッフ。


 「話を聞くのはお前の方だ。今は仕事中だと言っているだろう。それともお前は常識が無いのか?」


 対して、グレルは冷たい態度で辛辣な言葉を投げ掛ける。しかし、女性スタッフも諦めず、しつこくアタックを仕掛ける。


 「あぁーん、そんな酷い言い方しないで下さい。ほんの些細な“お願い”を聞いてくれるだけで構わないんです」


 「話からお願いに変わっているじゃないか。ふざけるのもいい加減にしろよ。これ以上、俺の実況を邪魔するなら一生後悔する事になるぞ」


 「邪魔だなんてそんな事しませんよ。それにー……今戦っているのって、あのコロシアム史上最弱と呼ばれているシヴァハですよね? なら、勝敗は既に付いている様な物じゃないですか。ちょっと位、サボったってバレませんよ」


 「(さっきから何なんだこの女は……あっ、思い出した。こいつ、前に一度俺に給料の値上げを要求して来た奴じゃないか)」


 シヴァハの話に出て来た女性スタッフ。その女性スタッフこそ、今現在グレルに色仕掛けで詰め寄っている女であった。そしてグレル本人も、過去に詰め寄られた経験から何とか思い出す事が出来た。


 「(そうなるとこいつの“お願い”というのは恐らく……)」


 「お願いします。どうか、お給料を上げて貰えませんか?」


 「(やはりな……全く一度ならず二度までも……取り敢えずここは適当にあしらって、後でクビに…………)」


 その時、グレルの脳内に電流が迸る。未だに腕にしがみつく女性スタッフを振り払おうとするのを止め、長考し始める。


 「グレル様?」


 「(そうだ……そもそも何故この女は今話し掛けて来た? 話など仕事終わりにいくらでも出来るだろう。休憩中でも構わない。現に俺はさっきまで休憩中だった。だが、この女はわざわざ俺が仕事している時にやって来て話し掛けて来た。何の狙いがあって? まさか仕事中の忙しい時なら、俺が遠ざける為に給料を上げるとでも思っているのか)」


 しかし、グレルはその考えを否定するかの様に首を横に振った。


 「(いや、それはあり得ない。いくらこの女に常識が無かったとしても、そこまで頭が働くとは思えない。恐らく誰かが入れ知恵したに違いない。誰か……そうかっ!!!)」


 再びグレルの脳内に電流が迸る。不思議そうにこちらを見つめる女性スタッフに視線を向けた後、会場で今も戦っているシヴァハに視線を向ける。


 双子による猛攻に、シヴァハは避けたり剣で弾いたりして対処するものの、攻撃する素振りは全く見られない。


 「「おやおや、どうしたのかな? あんな大口叩いてた割に、防戦一方じゃないか」」


 「(こいつら、2対1というアドバンテージに胡座をかいている分、個人の実力はそれ程高く無い。これなら永遠に防げそうだ。しかし……)」


 チラリと実況席の方を見るシヴァハ。その瞬間、グレルと目が合ってしまい、慌てて視線を元に戻した。


 「(やはり警戒しているな。下手に長引かせれば気付かれるリスクが高まる。かといって負ければ、即座にコロシアムから追い出されてしまう。逆に勝てば俺の狙いに感付く。つまり、今の俺に出来るのはこの試合を出来る限り延ばして、ガミーヌ達が鍵を奪うチャンスを作るのみ!!)」


 そしてシヴァハは、調子に乗る双子をそのまま相手にするのであった。その一方で、グレルは再び長考し始めていた。


 「(間違いない……奴め、パチェが……妹がこのコロシアムにいる事に感付いてやがる!! そしてそれが俺の自室である事も!! でなければ、このコロシアムトーナメントに出る理由が無い。俺が長時間拘束されるこのトーナメントを狙って来たんだ!! だが、自室には確りと鍵を掛けてある。それが無ければ中に入る事は出来ない。つまり俺がお前に注意を向けている間に、協力者が鍵を奪いに来るという訳だ……はっ!!)」


 そこまで考え抜いた結果、一つの答えに辿り着いた。不可解とも言える人物の行動の意味が。グレルは、バッと女性スタッフの方を見る。


 「グ、グレル様? あ、あの……」


 「(そうか……そういう事だったのか。この女、何故このタイミングで話し掛けて来たのか、ずっと不思議だったが……シヴァハが送り込んで来た刺客という事か。それならここまで食い下がって来るのも納得だ。どれ、少し探りを入れてみるか……)」


 「グレル様? さっきからいったいどうされたのですか?」


 「いや、すまなかった。少し考えていたんだ。それで給料アップの話だったな」


 「は、はい!! そうです!! ここの所、ギャンブ……げふんげふん!! も、物入りな事が多くて……どうかお恵み下さいませんか?」


 「そういう事なら話を聞こうじゃないか」


 「ほ、本当ですか!? で、ではここでは何ですから、何処か二人きりになれる場所……そうだ、グレル様がいつもお使いになっている自室など如何ですか?」


 「(確定だ……)……そうだな、確かにあそこなら他の誰にも聞かれずに済むな。よし、早速向かおうじゃないか」


 「えっ、あっ、はい」


 そう言いながら、グレルは女性スタッフの腕を掴み、無理矢理引っ張る形で実況席を後にしようとする。


 「あ、あの……グレル様……い、痛いです。もう少し優しく引っ張って……」


 「おおっと!! これはシヴァハ、防戦一方だ!! さすがコロシアム史上最弱の戦士!! このまま何も出来ずに負けるのか!!?」


 すると突然、グレルは会場の様子を見ずに実況・解説をし始める。その間にもグイグイと女性スタッフの腕を引っ張り、実況席から出ようとする。


 「グ、グレル様? い、いったい何を為さっているんですか?」


 「対してツヴィとリング、双子の見事なコンビネーション攻撃!! これはシヴァハも時間の問題だ!! 頑張れ双子、負けるな双子!! 思わず応援してしまいます!!」


 女性スタッフの言葉を無視して、グレルは実況・解説を続ける。やがて、実況席から出た二人。その瞬間、グレルは通路の壁に女性スタッフを強く押し付ける。


 「痛っ!!?」


 「必死に痛みに耐えるシヴァハ!! そろそろ諦めた方が身の為じゃないのか!!?」


 「グレル様……な、何を……っ!!?」


 グレルの奇行に女性スタッフが怯えていると、鋭い痛みが腹部に襲い掛かる。目線を下ろすと、そこにはグレルがナイフを取り出し、女性スタッフの腹部に突き刺している光景があった。


 「あ……ああ……」


 「激しい猛攻だ!! 防戦一方のシヴァハ!! 疲れが見始める!!」


 グレルは適当に実況しながら、何度も女性スタッフに突き刺した。刺して抜いて、刺して抜いて、刺して抜いての繰り返し。血が止めどなく溢れ、地面に血だまりが出来上がる。


 「長引く試合展開に観客だけでなく、私も飽きて来ました。ささっと負けてしまえシヴァハ!!」


 女性スタッフが力無く崩れ落ちるのを見下ろしながら、実況を続けるグレル。そして意気揚々と実況席へと戻る。


 「(くくく、これでシヴァハの頼みの綱は無くなった。後はあいつに顔を見せ、作戦が失敗した事を悟らせ、おとなしく負けるのを見届けるだけ……シヴァハ、お前達兄妹は永遠に俺の所有物なんだよ。今も……そして昔もな……)」


 ニヤニヤと薄ら笑いを浮かべながら、実況席へと立ったグレル。そして会場に目を向ける。


 「最早、シヴァハに勝ち目は……てっ、なっ!!?」


 そこに広がっていたのは、先程まで防戦一方だったシヴァハが、双子のツヴィとリングを完全にノックアウトさせ、剣を持っている拳を突き上げ、高らかに勝利宣言をしている光景だった。


 「な、何だとぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!?」


 グレルが驚きと怒りのあまり、両手で頭を掻きむしりながら大声を上げる中、シヴァハと目が合う。


 「……ふっ」


 「ぐっ!! むぐぐぐっ……」


 その瞬間、シヴァハはグレルを鼻で笑い飛ばすのであった。


 「……い、いったいどういうつもりだ……!!?」

協力者である女性スタッフを消したのにも関わらず、何故か得意気な顔を浮かべるシヴァハ。

いったい何が起こったというのか!?

次回もお楽しみに!!

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