表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
37/46

不穏な影

先週は更新出来ず、申し訳ありませんでした。

リアルの方が忙しく、書く時間がありませんでした。

今後もこうした事態になるかもしれませんが、どうかご了承下さい。

 ルムとブルーメの戦いは、見事ルムの無血勝利となり、観客達が興奮で沸き立つ中、休息所の窓から戦いの様子を眺めていたガミーヌも、興奮が冷めずにいた。


 「さすがはルム!! まぁ、私の仲間なんだから当然の結果よね!!」


 そう言いながらも、嬉しそうに笑みを浮かべて小躍りするガミーヌ。そんなはしゃぐ彼女の様子を見て、ムスケルが鼻で笑いながら話し掛けて来る。


 「ふっ、どうやらお仲間は勝ち上がった様だな」


 「えっ……えぇ、ど、どうやらそうみたいね!? べ、別にどうでもいいけどね!!?」


 先程とは打って変わって、興味無さそうな振りをするガミーヌ。素直になれない彼女に、ムスケルは自分を負かした奴だが、中身はまだまだ子供なのだと、何処かホッとしていた。


 そして、負けた腹いせにそれを弄って辱しめる事も考えたが、ムスケルも一端の戦士。プライドがあった。敗者は只黙って事実を受け入れるしかない。


 「そうか、それなら“大丈夫”そうだな」


 「大丈夫そう? いったいどういう意味よ?」


 先程のガミーヌの言葉に対して、ムスケルの返しは適切とは言えなかった。その事が妙に気になったガミーヌは、思わず聞き返す。そんな彼女にムスケルは、本気か?という驚きの表情を浮かべるも、直ぐに本気だという事が伝わり、同時に呆れた表情を浮かべる。


 「あー、成る程な……それ以前の問題だったか……」


 「いったい何なのよ。何か知っているのなら、まどろっこしい言い方しないで、今すぐ教えなさいよ!!」


 自分だけ知らない。自分だけ除け者。それはガミーヌにとって、堪え難い物だった。苛立ちを隠せず、先程よりも強い口調で聞き返す。


 「いいか、これはコロシアム“トーナメント”なんだぞ?」


 「それが? 何だって言うのよ?」


 意外にもアッサリと教えてくれたムスケル。しかし、ガミーヌの理解力が乏しく、これだけで察する事は出来なかった。すると今度は、言葉を選んで分かりやすく答えるムスケル。


 「つまりだ、このままお前とお前の仲間が勝ち上がって行けば、必ず何処かでぶつかり合う時が来るって事だ。そうなった時、お前は仲間に剣を振るえるのか?」


 「そ、それは……」


 ムスケルに言われて、初めて気が付いた……という訳じゃ無い。度々、脳裏を過った事だ。しかし、ガミーヌは考えない様にした。現実から目を背けた。まだ時間はある。まだ大丈夫と物事を先送りにした。そして遂に、他人の口から告げられる事で、どうするべきかを無理矢理考えさせられる事となってしまった。


 「お前が強いのは、この俺が保証する。だが、お前の仲間は別格だ。間違いなく、優勝に最も近い存在と言える。そして悪いが今のお前の実力じゃ、勝つのは不可能だ」


 「っ……!!!」


 「一方で、お前の仲間はお前の事をえらく慕っている。もし、お前とぶつかり合う事となれば、恐らく向こうはお前を思って棄権するだろう。だが、そんな情けを掛けて貰って優勝しても、お前は嬉しいか?」


 「そんな訳無いじゃない!!」


 嬉しい訳が無い。そんな事をされてしまっては、仮にそれで優勝出来たとしても、八百長という事で取り消されてしまう。何より、折角仲直りしたルムとの関係が、再び悪くなってしまう恐れがあった。ガミーヌが声を荒げて叫ぶ中、ムスケルが冷静な態度で、始めにした質問を聞き返す。


 「じゃあ、戦えるのか?」


 「…………」


 押し黙ってしまうガミーヌ。たった一言、「戦える!!」と言えれば良かったのだが、そこまで割り切れる問題では無かった。


 「……ちょっと……外の空気を吸って来るわ……ここはあまりに……むさ苦しいからね……」


 数秒経って漸く出た言葉は、結局先送りにする物だった。苦しい言い訳までして、ここから一秒でも早く離れたかったのだろう。ムスケルは何も言わず、黙ってその背中を見送る。最早、仲間が勝ち上がって喜んでいた姿は、何処にも無かった。


 「少し……意地悪が過ぎたか……」


 天井を見上げ、ポツリと呟くムスケル。いずれ分かる事とはいえ、今のガミーヌに突き付けるのは、あまりにも酷である。敗者は只黙って事実を受け入れる……にも関わらず、大人げない行為に一人静かに反省するのであった。



 

***




 休息所から逃げる様に出たガミーヌ。外の空気を吸うと言っていたが、実際は俯きながら、とぼとぼと重い足取りで当ても無く歩き続けていた。


 「(考えもしていなかった……コロシアムに出て、軽く優勝して、またランクを上げるつもりだった……)」


 ふと足を止め、ぼんやりと会場を眺めると、そこでは出場している二人の戦士達が、血だらけになりながら戦っていた。


 そんな二人の姿を自身とルム、そしてエクスと重ね合わせる。その瞬間、心臓の鼓動が一段と速くなり、ガミーヌは逃げる様にその場を後にする。


 「はぁ……はぁ……」


 呼吸を整え、気持ちを必死に落ち着かせようとしている。しかし、どうしても余計な事を思い浮かべてしまう。


 仲間同士で戦えるのか。八百長をして貰うのか。それともわざと負けるか。頭の中は戸惑いと緊張で、ごちゃごちゃになっている。


 「もう……こんな事になるなら、私一人だけで出場するんだったわ……」


 生まれて初めての冒険者、仲間、パーティー。皆で何か一つの物事に取り組むという楽しさ。そんな子供ながらのワクワクを抑えきれず、結果この様に思い悩む事になってしまった。


 「……ん?」


 そんな中、ガミーヌの目線の先に、見覚えのある人物が立っていた。


 口元を覆い隠すボロボロな赤いマフラー、それと同じ色合いをした赤髪の長髪。そして傷一つ付いていない綺麗な白い肌。それは“シヴァハ”に間違いなかった。


 「あいつ、こんな所で何やってるのよ?」


 ガミーヌが歩いて来たこの場所は、戦士達の控え室からも、休息所からも、会場への出入り口からも遠い場所だ。ガミーヌの様に、ルムやエクスなど誰かと鉢合わせず済む様に、意図的に歩いて来なければ辿り着けない。


 ましてや、シヴァハはまだ一回戦すら終えていない。もうすぐ自分の番だというのに、こんな所にいるのはあまりにも不自然であった。そして見た所、シヴァハは“誰かを待っている”雰囲気であった。


 「ねぇ、シヴァ…………」


 と、呼び掛けようとした所で、ガミーヌは咄嗟に曲がり角の壁に身を隠し、様子を伺う事にした。待っている相手は誰なのか気になるというのは、あくまでも建前。本当は目の前の現実から少しでも、目を背けられる出来事が欲しかった。


 しばらく様子を伺っていると、ガミーヌとは反対の方角から、人影がこちらに向かって来るのが分かった。 やがて、シヴァハが待っていた相手の姿が明らかとなる。


 『いやー、悪かったな。出番がもうすぐなのに、突然こんな所に呼び出したりして』


 「別に間に合えば問題無い。それよりも、お前こそ途中で会場を抜けて来ても大丈夫なのか、“グレル”?」


 意外も意外、そこに姿を現したのはコロシアムトーナメントの実況及び解説役の“グレル”だった。


 しかも、話から察するに呼び付けたのはシヴァハでは無く、グレルの方らしい。大事な現場を離れてまで、シヴァハに会いに来た。


 「心配するな。観客達には一時的なトイレ休憩と説明してある。序盤ならともかく、後半の今だからこそ使える手だ。だからこそ、お前の順番を後の方に根回ししておいたのさ」


 「成る程、お前が実況を捨ててまで会いに来るだなんて、可笑しいと思った」


 「当たり前だろ? 俺にとって、この仕事は命より価値がある。さて、時間もあまり無い事だし、早速本題に入らせて貰うが……」


 そう言いながらグレルは、サングラスを外す。そして次の瞬間、グレルはサングラスを持ったまま、その腕でシヴァハの首を押さえ付け、壁に叩き付ける。シヴァハは下手に抵抗せず、されるがままだった。


 「!!?」


 突然の出来事に声を上げそうになるガミーヌだが、何とか両手で口を抑えて、声が出るのを防ぐ。


 サングラスを外したグレルの目は、一切眉毛が生えておらず、更に眉間にシワが寄っており、そしてとても堅気とは言えない程、鋭い眼光をしていた。そんな恐ろしい見た目をしているグレルに怯む事無く、睨み返すシヴァハ。すると、グレルがもう片方の手でモヒカンの髪を掻き上げ、話し掛ける。


 「お前さ、いったいどういうつもりな訳?」


 それは先程までの陽気な声とは裏腹に、低めで脅す様な凄みが含まれる声をしていた。


 「何の話だ?」


 グレルの質問にシヴァハは、瞬きすらせずに答える。


 「惚けんじゃねぇ。何でお前がこのコロシアムトーナメントに出てるのか、聞いてんだよ」


 「決まっている。勿論、優勝する為だ」


 「優勝だぁ? おいおい、俺の聞き間違いか? 優勝……優勝するか……ふざけんじゃねぇぞ!!」


 「ぐぅっ!!!」


 そう言うとグレルは、シヴァハの首を押さえ付けている腕の力を強める。一層苦しさが増し、思わず声が漏れるシヴァハ。


 「なぁ、シヴァハよ。お前、忘れてねぇよな。お前はこれから先ずっと、“負け続ける”んだ。じゃないと、お前の“妹”がどうなっても良いのかなぁ!!?」


 「……“妹”?」


 グレルの言葉から聞こえた“妹”という言葉に反応するガミーヌ。


 「誰だ!!?」


 「!!!」


 次の瞬間、グレルが大声を上げる。。ガミーヌはビクッと体を震わせ、咄嗟に壁を背にして隠れる。そんな中、慌てて辺りを見回し、近くに誰かいないか探そうとするグレル。その内、誰もいない事を確認すると単なる空耳と判断し、シヴァハへの問い詰めに戻る。


 「それで? どうなんだ?」


 「あぁ、勿論覚えている」


 「じゃあ、さっきの言葉は悪ふざけって事だよな? 次の試合でお前は勿論棄権するつもりなんだよな?」


 怒り狂った表情から打って変わって、薄気味悪い笑みを浮かべるグレル。その質問にシヴァハは、数度呼吸を繰り返した後……。


 「……あぁ、そのつもりだ」


 その言葉を聞いたグレルは、シヴァハの目を真っ直ぐと見つめた後、持っていたサングラスを再び掛け直す。


 「いやー、良かった良かった。その言葉を聞けて安心したよ。俺はてっきり、お前が妹を見捨てて反抗しようとして来ているんじゃないかって、ヒヤヒヤしたんだ。だってそうだろう? お前が反抗して来たら俺は……お前の妹を殺さなくちゃならなくなる」


 グレルは笑いながら、両手でシヴァハの両肩をポンポンと叩いて答える。


 「でも、冗談だと分かって一安心だ。それじゃあ、俺はそろそろ会場に戻るよ。お前も、早く控え室に戻った方が良いぞ。もうすぐ試合だからな」


 そう言って、グレルは片手を振りながら、元来た道を戻ろうとする。


 「あっ、そうだシヴァハ。最後にもう一つ……」


 すると、途中で立ち止まるグレル。振っていた手を止めて、人差し指を立てる。


 「変な気は起こすなよ」


 その言葉を最後に、グレルはその場を後にするのであった。


 残されたシヴァハ。そして、隠れて話を盗み聞きしていたガミーヌ。二人はしばらくその場を動けなかった。そんな中、シヴァハはガミーヌがいる方向に向かって話し掛ける。


 「もういなくなった。出て来ても大丈夫だ」


 「……気が付いていたのね」


 隠れている事がバレていたガミーヌ。誤魔化しも通じないと察し、大人しく出る事にした。


 「寧ろ、あんな声を出してバレなかった事の方が奇跡だ。グレルが戦士じゃなくて良かったな」


 「当然、話してくれるのよね?」


 グレルとの関係。妹の話。聞きたい事は山程あった。ガミーヌの問い掛けに頷くシヴァハ。


 「あぁ、全て話そう。俺の事……グレルという男の事……俺とグレルの関係……そして……コロシアムの“闇”について……」

次回、遂に明かされるシヴァハの過去!!

そして、このコロシアムに隠された闇とは!?

次回もお楽しみに!!

評価・コメント・ブックマークお待ちしています。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ