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激化する戦い

何とか勝利を収めたガミーヌ。

果たしてこのままトーナメントを勝ち残れるのだろうか。

 初出場のガミーヌが、最大出場記録保持者であるムスケルに勝利を収めたこの結果に、観客達は感極まっていた。


 「凄いぞあいつ!! ムスケルを倒しちまいやがった!!」


 「それに見たかよ、最後の一撃!!? いったい何をしたんだ!!?」


 「武器を捨てたと思ったら、いつの間にか倒していたぞ!!?」


 「私、あの子のファンになっちゃった!!」


 「最高だぜ、ガミーヌ!! フゥウウウウウウウ!!!」


 観客達による熱い声援を尻目に、何も語らずクールに会場を去っていくガミーヌ。


 「……ガミーヌ……ねぇ……」


 そんな彼女の姿を訝しげに見ながら、名前を呟くのはバルコニー席で退屈そうにしているヴィス王妃であった。右手の掌を頬に当てて、不思議そうに首を傾げる。


 「どうかしたか?」


 すると、隣に座っていた夫のブーゼ国王がこちらを一切見ずに、声を掛けて来た。そこに心配や興味という感情は含まれず、只国王として王妃を気に掛ける行為を周りの貴族連中に示しただけに過ぎない。


 そして、それは王妃自身も理解しており、国王の方に一切目を向けずに淡々と答える。


 「いえ、何処かで聞いた名前だと思ったけれど……駄目ね、思い出せないわ。つまり大した事では無いという事。多分、最近買った奴隷の名前とかそんな所だと思うわ」


 「そうか」


 継母とはいえ、自分の娘の名前、そして姿を見たのにも関わらず、一向に思い出せなかった。それだけガミーヌに対する愛情の薄さが伺える。


 だが、ここでもっと異常なのは、ガミーヌの実の父親であるブーゼ国王も、思い出していなかった事である。例え色んな女性との間に子供を儲けているとしても、大切な娘の名前を忘れてしまうなど、この男の恐ろしさが垣間見える。


 これ以上、二人の会話が広がらない所で、ガミーヌの姿が会場から完全に見えなくなる。体を休めようと控え室へと向かう途中、ふいに足がふらついてしまい、思わず壁に寄り掛かる。


 「……っ……はぁ……はぁ……」


 脇腹を抑え、ゆっくりと腰を床に下ろす。勝ったとはいえ、ガミーヌも無傷ではない。寧ろ、ダメージ自体はガミーヌの方が大きいとさえ言える。もし、あの最後の攻撃でムスケルが気絶していなかったら、負けていたのは間違いなくガミーヌの方だったろう。それだけ、ギリギリの戦いだったのだ。


 「(全身が痛い……骨が何本か折れてるわね。ボアベアよりも強いタックルって……あの筋肉ダルマ……どういう鍛え方してるのよ……)……うっ……!!」


 体を動かそうとすると、全身を激しい痛みが襲い掛かる。とても動けそうに無かった。


 「(次の出番まで、時間はある……なら、ちょっとだけ……ちょっとだけ寝てもバチは当たら……な……い…………)」


 次の瞬間、ガミーヌの意識は闇へと消えた。その直後、彼女の側を巨大な影が横切る。




***




 「……ん……んん……っ……」


 目が覚めると、そこには知らない天井が広がっていた。どうやらベッドの上に寝ている様だった。首を動かして、周囲を確認すると、そこには自分と同じ様に負傷して、横になっている人達がいた。


 よく見れば、体のあちこちに包帯が巻かれている。体を起こそうとするも、未だ全身に激しい痛みが襲い掛かる。それでもガミーヌはゆっくりと体を起こし、ベッドの上に座る。


 「ここは……?」


 「目が覚めた様だな」


 「?」


 声のする方向に顔を向けると、そこには顔に包帯をぐるぐる巻かれた屈強な見た目の男が横になっていた。その姿に見覚えがあるガミーヌは、恐る恐る声を掛ける。


 「あなた……もしかしてムスケル?」


 「あぁ、お前さんの一撃……効いたぜ。と言っても、実際はこの俺の拳な訳だがな」


 「だから何? 自分の拳で負けたから、あの戦いは無効だとでも言いたいの?」


 「そうじゃねぇ、あれは俺の完全な負けだ。認めるよ、お前は俺よりも強い」


 「あ、ありがとう……」


 素直に褒められる事に慣れていないガミーヌは、少し照れ臭そうにする。


 「それで? ここはいったい何処なのよ?」


 「ここは戦士達の休息所。所謂、治療部屋だ。負傷した戦士達が運ばれてくるのさ。俺もお前も、そこそこ重傷だったからな」


 「成る程……あなたがここまで運んでくれたの?」


 「いや、残念ながら俺じゃない。俺が自力でここに辿り着いた時には、お前は既にそこで横になっていた」


 「そっか……誰か分かればお礼が言えるんだけど……って、トーナメントは!!?」


 ここまで運んだ人物にお礼を言いたかったが、近くにそれらしい人はおらず、聞いても誰が運んで来たのかも分からない。そんな中、ガミーヌはふとトーナメントの事を思い出して慌て始める。


 「落ち着け、まだトーナメントは終わっていない。俺達のが終わってから三回戦程進んだだけだ」


 「それなら良かった……(ルムは無事に初戦を突破したかしら……)」


 「……戦いの様子が気になるなら、そこの窓から覗くと良いぞ」


 「え?」


 ムスケルが指し示したのは、壁に作られた縦長の窓だった。ガミーヌは痛む体に鞭を打って、何とかその窓まで辿り着く。覗き込むと、そこには先程までガミーヌ達が立っていた会場の様子が確認出来た。


 「確かにここなら、トーナメントの進み具合も確かめられる。ありがとう、ムスケル」


 「勝者への当然の権利だ。精々、そこから次の対戦相手の研究でもするんだな」


 憎まれ口を叩きながらも、ガミーヌを助けてくれたムスケル。彼に感謝しながら、ガミーヌは窓越しにトーナメントの様子を確かめる。


 すると、丁度実況解説のグレルが次の対戦相手を紹介している所だった。


 「さぁ、続いて六回戦!! 顔全体に包帯を巻き、文字通り全てが謎に包まれている人物。本名不明、“イレギュラー”!!」


 グレルの言葉と共に現れたのは、ムスケル以上に包帯を顔に巻き付け、その素顔を見せない戦士だった。イレギュラーと呼ばれるその人物は、一切のブレ無く綺麗に歩いて会場へと向かう。


 「イレギュラー……」


 「対するはその足は正に神の足の如く!? 神速の“シュネル”!!」


 と、そうグレルが口にした次の瞬間、目にも止まらぬ速さで、それこそ先に入場したイレギュラーよりも速く会場に辿り着いたシュネル。


 「遅過ぎるぜ」


 「は、速い!!?」


 観客達は勿論、グレルや窓越しから見ていたガミーヌにも、シュネルの動きを見切る事は出来なかった。


 「さ、早速見せ付けてくれた!! シュネルの神速!! 果たしてイレギュラーは、この速さに追い付けるのだろうか!!?」


 「ははっ、そんなの出来っこないね。大人しく棄権した方が身の為だぜ。じゃないと、その包帯を全身に巻く事になるんだからよ」


 「…………」


 「あらら、ビビって言葉すら出せなくなっちゃったか。まぁ、無理も無いかな。この俺の速さを見て、戦意喪失する奴は大勢いるからな。ここで棄権したって、恥じゃないぜ」


 「……知ってるか? 海を越えた島国では“足がはやい”ってのは、腐りやすいという意味にも使われているんだ」


 「あ?」


 「本来は青魚に使う言葉らしいけど、この場合はあんたに使った方が適切だろう」


 「……俺の足を馬鹿にした事、後悔するなよ……」


 「互いに適度な挑発を交えた所で、六回戦……始めぇえええええええええ!!!」


 そう言って、グレルはいつもの様に手に持った銅鑼撥で銅鑼を叩き鳴らす。それと同時に、シュネルが目にも止まらぬ速さでイレギュラー目掛けて突っ込んでいく。


 「(一撃で終わらせてやる!!)」


 気が付いている様子は無い。シュネルは、その勢いのままイレギュラー目掛けて拳を叩き込もうとする。そして次の瞬間……!!


 「「「「!!?」」」」


 「ごげぇ!!?」


 「…………」


 拳を叩き込んだのは、シュネルでは無くイレギュラーの方だった。放たれた拳を避け、シュネルの腹にカウンターを叩き込んでいた。それは速さが自慢のシュネルでさえ、捉えきれない程の速さだった。まともに攻撃を食らったシュネルは、両手でお腹を抑え、その場から動けなくなってしまった。


 「あんたの速さ、確かに目を見張るけど、それが生かされるのは直線の時のみ。並大抵の相手には通用するだろうけど、それ以上の相手には今みたいにタイミングを合わせられて、逆に重い一撃を浴びせられる事になる。まぁ、次回までに対策しておく事だね」


 「て、てめぇ……」


 「本当はタダで教える気は無かったんだけど、これでチャラにしてやるよ」


 「うぐっ!!」


 そう言うと、イレギュラーは動けないシュネルの首目掛けて手刀を食らわせ、強制的に意識を奪って見せる。その場に倒れ、ピクリとも動かなくなったシュネルを他所に、イレギュラーは早々に会場を後にしていく。


 「「「「…………」」」」


 しばらくの間、観客達やグレル、そしてガミーヌも開いた口が塞がらなかった。そして次第に興奮の声が沸き上がる。


 「す、凄過ぎる!! な、な、何とあのシュネルをたった二発で倒してしまった!! 圧倒的!! そのあまりの強さに私もテンション爆上がりだ!!」


 これまでの白熱した戦いとは打って変わって、一瞬で決着が付く戦いに新鮮さも相まって、グレルの実況も熱が入る。


 「…………」


 そんな中、ガミーヌもイレギュラーの異常な強さに驚きを隠せなかった。


 「(確かに理屈では、タイミングを合わせればカウンターを叩き込める。けど、それは相手の動きを何十回、何百回と見た場合の話。あのシュネルが神速で動いたのは、開会式の時の一回とさっきの一回のみ。そのたった二回だけで、動きを見切ったというの? あのイレギュラーって戦士……いったい何者なの?)」


 疑問が膨れ上がる中、グレルが七回戦の戦士紹介に移っていた。


 「さぁ、七回戦の相手は……“ルム”VS“ブルーメ”!!」


 「ルム!!」


 その言葉に、ガミーヌは食い入る様に会場を見つめる。いよいよルムの初戦が始まろうとしていた。

次回、ルムの人間形態での実力が明らかとなる!!

次回もお楽しみに!!

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