ガミーヌの実力
ガミーヌのコロシアム初挑戦!!
果たしてガミーヌは無事に勝てるのだろうか!?
グレルの掛け声に合わせて、二回戦に出場するガミーヌとムスケルの二人が、並んで会場に姿を現した。
すると、たちまち観客達が歓喜の雄叫びを上げ始める。
「おぉおおお!!! 来た来た!! “コロシアムの門番”!!」
「コロシアムトーナメント、七回連続出場者!! 新人戦士の登竜門としての実力、期待しているぞ!!」
「……へぇー、七回も負けているだけあって、それなりに人気あるみたいじゃない?」
意外にも観客達から支持されているムスケル。こんな肉ダルマが何故人気なのかと、少し癪に障ったガミーヌは大人げなく煽って見せる。
「ぐっ……そうだな、全く期待すらされていないお前よりかはな」
「ムカッ!!?」
多少なりのダメージは見受けられるが、直ぐ様カウンターの煽りを返され、それは見事クリーンヒットした。
互いに苛立ちを募らせながら、血走った目付きで睨み合う。その様子にグレルが解説に拍車を掛ける。
「おおっと、両者戦いが始まる前から闘志が剥き出しだ!! これは一回戦以上の激しい戦いが期待出来そうだぞ!!」
しかし、グレルの言葉とは裏腹に、観客達に対するガミーヌの評価は、あまり芳しく無かった。
「って、言うけどさ。あのガミーヌ? とかいう奴、見た事も聞いた事も無いぜ?」
「新人戦士の内の一人みたいだけど、本当に戦えるのか?」
「おーい、嬢ちゃん。戦士ごっこなら、他所でやった方が身の為だぞ」
「「「「はははははは!!!」」」」
露骨にガミーヌをバカにして、笑う観客達。そんな彼らに無性に腹を立てたガミーヌは、文句を言おうと口を開くが……。
「やかましいぞ、テメェら!! 戦いもしねぇ奴らが戦士を馬鹿にするんじゃねぇぞ!! それでも文句がある奴は、今すぐここに降りて来やがれ!! このムスケル様が戦いの恐怖を教え込んでやる!!」
何と、先に口を出したのは先程までガミーヌの事を、散々煽っていたムスケルだった。ムスケルの言葉はコロシアム中に響き渡り、観客達は一同に黙り込み、そして次の瞬間、歓喜の声が沸き上がる。
「おぉおおおお!!! カッケェエエエエエエ!!」
「さすがはムスケルだ!! 七回も出場しているだけあって、器がデカイぜ!!」
「愛してるぞ、ムスケル!!」
怒られている側だというのに、観客達は笑顔でムスケルを応援する。ムスケルはそれを無視して、会場へと突き進む。
「……お礼は言わないわよ。別に私だけでも対処できたわ」
これから戦う手前、素直になれないガミーヌ。だが、助けて貰ったのは事実であり、このまま何も言わないのもどうかと思い、取り敢えず憎まれ口だけは叩く事にした。
「ふん、勘違いするな。別に貴様の為じゃない。只、あいつらにムカついた。それだけの話だ」
「確かに……それには同意見かも……」
「初めて意見が一致したな」
「うぇ、本当だ。何だか気持ち悪い」
「俺もだ」
そう言いながらも、少し口角を上げる二人。やがて会場に辿り着くと、互いに向かい合う。腰の鞘から剣を引き抜くガミーヌ。両手それぞれの指を強く曲げて、パキパキという音を鳴らすムスケル。
「一瞬で捻り潰してやる」
「こっちの台詞よ」
二人の準備が整ったのを確認したグレルは、再び銅鑼撥を手にする。
「さぁ、両者供に準備が整った様です!! それでは二回戦……始めぇええええええええええええええ!!!」
グレルが銅鑼を打ち鳴らし、コロシアム中に響き渡るとほぼ同時に、ムスケルは両手を伸ばしながら、ガミーヌ目掛けて勢い良く突っ込んで来る。
「うぉおおおおおおおおお!!!」
右手、左手とガミーヌの体を掴もうと手を伸ばすが、それを最小限の動きで避けるガミーヌ。
「…………はぁ!!!」
「うごがぁ!!?」
それどころか、ワンパターンの動きになりつつあるムスケルに合わせて、避けたと同時に剣で伸ばして来た右手を斬り付ける。突然の痛みに思わず後退りするムスケル。その様子に観客席でも、“おぉ!!!”という声が巻き起こる。
「この……!!!」
「へへーん。そんな攻撃、目を瞑っても避けられるわよ」
「なら、こいつはどうだ!!!」
するとムスケルは中腰になり、上半身を前のめりに丸めると、ガミーヌ目掛けて勢い良く突進して来た。
「危なっ!!?」
まるで闘牛が迫って来るかの様な威圧感と覚え、ガミーヌは咄嗟に回避する。そのままムスケルは、真っ直ぐコロシアムの壁に激突してしまう。
壁には大きな穴が空き、周辺に瓦礫が散乱する。その衝撃から上の観客が落ちて来てしまった。すると空いた壁の穴から、何とも無さそうなムスケルが姿を現す。
「へっへっへ……」
首をコキコキと鳴らし、再び中腰の前屈みになると、ガミーヌ目掛けて勢い良く突進を仕掛けて来る。それを避けるガミーヌ。そしてまた突進を仕掛けて来るムスケル。避ける、突進、避ける、突進、避けるの繰り返し。その度にコロシアムの壁にぶつかり、穴とその周辺に散らばる瓦礫が増えていく。
その様子にグレルは、「もうこれ以上は止めてくれー!!」と、コロシアムが壊されていく様に悲鳴を上げる。
「何度やっても無駄よ。あなたの攻撃はもう見切ってるわ」
「そうだな……俺の攻撃はそうかもしれない。だが、お前自身の動きはどうかな?」
「何っ!!?」
気が付けば、ガミーヌが避けた場所は、壁を崩した際に飛び散った瓦礫に囲まれていた。最早、何処にも避ける事は出来そうに無い。
「へっへっへ……この俺を只の筋肉馬鹿と思って、調子に乗ってただろう。自分が追い詰められているとも知らずに……」
「くっ……!!!」
中腰の前屈みになるムスケル。もう避けられないと悟り、剣を構えるガミーヌ。そして次の瞬間、ムスケルがその巨体でガミーヌ目掛けて渾身の突進を仕掛ける。
「これで終わりだぁあああああ!!!」
「っ……!!!」
ガミーヌは咄嗟に剣でガードしようとするも、軽く吹き飛ばされてしまう。空中を何回転もした後、地上に叩き付けられる。血反吐を吐き、体全体がピクピクと痙攣し始める。
「決まったぁあああああ!!! ムスケル必殺の一撃が遂にガミーヌを捉えた!! これはもう再起不能か!!?」
「がっはっはっはっは!!! どうだ、思い知っ……たか?」
勝利を確信するムスケルだったが、ふらふらになりながらも、剣を杖代わりにして何とか立ち上がって見せるガミーヌ。
「はぁ……はぁ……はぁ……」
「まだ諦めないのか……ギブアップしちまえよ。じゃないと、殺しちまうぞ?」
「はぁ……はぁ……あ、諦める位なら……し、死んだ方が……マシよ……」
そんなガミーヌの言葉に同調するかの様に、観客席から一回戦と同じく“殺せ”コールが発生する。ムスケルは一瞬だけ目を瞑り、そして再び目を開けた時には覚悟が決まっていた。
「そうか……なら、望み通りにしてやるよ!!!」
そう言って、ムスケルはガミーヌ目掛けてその巨大な拳を振りかぶる。
「…………」
ムスケルの拳が迫り来る直前、ガミーヌの脳内では過去の思い出がフラッシュバックしていた。剣の手解きを習っていた時、師匠である老婆の言葉。
“今からお前に奥義を授けてやる。これさえ決まれば、例え相手がどんなに格上でも倒す事が出来る。いや、寧ろ格上にこそ決まると言っていい”
“本当!!?”
“あぁ、だがそれには幾つかの条件をクリアしなければならない”
“条件?”
“一つ、自分が瀕死である事。この奥義は集中力が肝だ。だから死にかけている方が、生きる事に必死になって集中力が増す。二つ、相手が勝利を確信して油断している事。これは完全に初見殺しの技だ。つまり、避けられたり見られたりしたらもう二度と当たらないと思った方がいい。そして最後三つ目は……”
「……剣を手放す勇気を持つ事!!」
「!!?」
次の瞬間、ガミーヌは自らの剣を手放し、素手の状態になった。この行動に戸惑うムスケルだったが、今さら引く事も出来ないと、気にせず拳を振り抜く。
すると、ガミーヌは滑らかな手の動きで振り抜かれるムスケルの拳を手に取り、その勢いのまま流れる様に矛先を自分からムスケル自身に変えた。それにより、ムスケル自慢の拳はガミーヌでは無く、己の顔面に叩き込まれる事となった。
「おぶがぶげっ!!?」
何が起こったのか、まるで理解出来なかった。観客達は勿論、攻撃を食らったムスケルも訳が分からなかった。前歯が折れ、鼻も折れてしまったムスケルが放心状態になっていると、ガミーヌが拾い上げた剣を首筋に当てて来る。
「はぁ……はぁ……私の逆転勝利にね……ほら、何か言う事があるんじゃないの?」
「……あー、くそっ……まいった……ギブアップだ」
それを聞いたガミーヌは、剣を鞘に戻して颯爽と会場を後にしていく。しばらくして、グレルが慌てた様子で決着の宣言をする。
「ま、まさかまさかのガミーヌ逆転大勝利!!!」
その言葉を皮切りに、観客達も驚きと興奮の雄叫びを上げる。
「いったい誰が予想したでしょう!!? あのムスケルを無名の戦士であるガミーヌが倒してしまった!! これは思わぬダークホースの出現なのか!!?」
ガミーヌの勝利に歓喜する一方、彼女の戦いを控え室方面から眺めている、顔全体を包帯で覆っている謎の人物がボソリと呟く。
『馬鹿な小娘だ……』
何とか勝利を手にしたガミーヌ。
しかし、コロシアムトーナメントはまだ始まったばかり……。
次回もお楽しみに!!
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