因縁の二人
遂にコロシアムトーナメントが開催となります。
今回、有力な戦士達の紹介と、重要な人物が登場します!!
コロシアムでの受け付けを済ませたガミーヌ達。宿屋で一晩を明かした後、三人は案内スタッフに、出場者達が集まる控え室へと案内される。
既に中では多くの出場者達が、今か今かと待っていた。ピリピリとした空気に、張り詰めた緊張感が肌を通して伝わって来る。
「ほほぅ、これは熱気ムンムンじゃな。皆、闘志に溢れているのが見て分かるわい」
「全員、自分の腕に絶対の自信があるんでしょうね。まぁ、私もだけど」
ある者は精神を統一させる為、その場で座禅を組み、またある者は鍛え上げた筋肉を暖めようと、ギリギリまでシャドーボクシングをしている。
「あっ、シヴァハ。 ねぇ、ちょっと!!?」
ふと周囲を見回すと、そこにはシヴァハの姿があった。壁に寄り掛かり、静かに時が来るのをじっと待っている様子だった。ガミーヌ達が手を振って呼び掛けるも、話す気は無いのか、一度視線が合ったと思ったら直ぐに外されてしまった。
「……まぁ、良いわ。取り敢えず、適当に時間を潰しましょう」
シヴァハの素っ気ない態度に思う所はあるが、気にせずガミーヌ達は大人しく空いている場所で待つ事にした。すると、ガミーヌ達の存在に気が付いた、やたらガタイの良いスキンヘッドでレスリングパンツ姿の男が、ちょっかいを掛けて来る。
「おいおい、いつからコロシアムは託児所になったんだ?」
「誰よあなた?」
「ははっ!! この俺を知らないとは、どうやらもの凄いド田舎からやって来たお子様の様だな。俺の名は“ムスケル”!! コロシアムトーナメント七回目連続出場の超ベテラン戦士だ!!」
そう言うとムスケルは、全身に力を込めて筋肉を膨張させ、ポーズを決めて見せる。時折覗かせる白い歯が光っている。
「始まった……ムスケルの新人潰し……」
「ふふっ、可哀想に……」
どうやら恒例になっているやり取りらしい。ヒソヒソと周りの出場者達が話し始める。するとムスケルは、両手と首をポキポキと鳴らす。
「お嬢ちゃん、悪い事は言わねぇよ。さっさと家に帰って、ママのおっぱいでも吸ってるんだな」
片方の口角を上げ、得意気に話し掛けるムスケル。そんな彼に対して、ガミーヌは呆れた表情を浮かべる。
「なぁーんだ、七回も出ているって事は只の雑魚って事じゃない」
「な、何だと?」
「あら、だってそうでしょ? 七回も出ている癖に一度も優勝経験が無いって事は、それだけ弱いっていう証明じゃない」
「テ、テメェ……!!!」
「あらあら、ムキになるって事は自覚あったのね。意外だったわ、てっきり自分の弱さも理解出来ない筋肉ダルマだと思ってたわ」
「ブッ殺す!!!」
ガミーヌに煽られ、頭に血が上ったムスケルは顔を真っ赤にしながら、ガミーヌ目掛けてその巨大な拳を叩き込もうと振りかぶる。ガミーヌも腰の剣に手を添えて、いつでも引き抜ける様に構える。
両者がぶつかりそうになった次の瞬間、控え室の扉が勢い良く開かれる。全員が扉の方に顔を向けると、そこにはコロシアムの案内スタッフが立っていた。
「もう間も無く開会式となります。出場者の皆様は、今すぐ移動をお願いします」
そう告げると、控え室の扉を閉めようとする。その途中で一旦、扉を閉めるのを止め、ガミーヌとムスケルの二人を見る。
「……因みに、試合外で戦闘を行った場合、その良し悪し関係無く、関わった全ての出場者を失格とするので、そのつもりで……」
その言葉を最後に、今度こそ扉を閉める案内スタッフ。それからゾロゾロと出場者達が控え室を後にする。
ムスケルは途中まで振りかぶっていた拳を下ろし、つまらなそうに鼻を鳴らす。
「ふん、命拾いしたな……」
「そっちがね」
「……覚えてろよ。お前はこのムスケル様が、試合で必ずブッ殺してやるからな」
威圧するかの様に、厳つい顔を近付けて捨て台詞を吐くと、そのままズカズカと他の出場者をはね除けて、控え室を後にする。
「血の気が多い奴じゃの」
「全くね。あんなのでもコロシアムの戦士になれるだなんて、ここもレベルが落ちたものね」
「じゃが、あの鍛え上げられた肉体は本物だぞ。もし、あの時やりあっていたら、お主も危なかったんじゃないか?」
「それ、本気で言ってる?」
「さぁ、どうかの?」
惚けた様子のルムを訝しげに見つめるガミーヌ。
「……まぁ、別にいいわ。それより私達も向かいましょう」
「そうじゃの」
これ以上の会話は不毛だと考え、ガミーヌ達も出場者達の後を追い掛ける。
***
こちらはコロシアム会場。ぐるりとリング上に囲まれたその場所は、歴戦の戦士達が己の命を掛けて戦う神聖な地。地形による有利不利が発生しない様、場には石ころ一つ落ちていない。
観客席は既に隅から隅まで埋め尽くされており、全員試合が始まるのを興奮した様子で待ち続けていた。
そんな中、観客席よりも少し上の一つ飛び出した区画。実況席と呼ばれる場所に、一人の男が姿を現す。桃色のモヒカンにサングラスを掛け、両耳と右鼻、そして下唇にそれぞれピアスが付いている一風変わった容姿をしていた。
男は咳払いを一つすると、右手に魔力を集め、口元に持っていく。そこに向かって声を発すると、通常の何倍も大きな声が周囲に響き渡る。
「皆様!! いよいよこの日がやって参りました!! 四年に一度執り行われる一大イベント!! コロシアムトーナメントの時間が!!」
男の言葉に観客達は、一層大きな盛り上がりを見せる。
「腕に覚えのある歴戦の猛者達が、己の命とプライドをかけて戦う!! 優勝者には一生涯の賞金と、コロシアムの歴史にその名前が永遠に刻み込まれる!! 更にコロシアムは冒険者ギルドから支援を受けている関係から、活躍を見せた冒険者にはランクアップが約束される!!」
男が口を開く度に、観客達が盛り上がりを見せる。
「実況・解説は毎度お馴染み“グレル”がお送りするぞ!!」
会場の熱気がピークに達したのを感じ取ったグレルが、案内スタッフに合図を送る。
「さて、前置きはこれ位にして、今年のコロシアムトーナメントに出場する勇敢な戦士達の入場だぁああああああああああ!!!」
それと同時にコロシアムの門が開かれ、中から出場者達が次々とやって来る。その光景に、観客達の興奮が更に高まる。
「ここで何人かの有力な戦士の紹介だ!! まずは今回で七回目の出場となるこの男!! 怪力自慢のムスケル!!」
「うぉおおおおおおおおおおお!!!」
グレルの紹介に応え、ムスケルは観客達に向かって雄叫びを上げる。観客の何人かがムスケルを応援する。
「続いて、その足に絶対の自信を持っている男、神速の“シュネル”!!」
「僕の、足に、ついて、来れる、かな?」
やたらと大きいムスケルとは正反対に、短めの金髪に細身のシュネルが言葉を発する度に、その姿が消え、別の場所へと現れる。
「おおっと!!? ここで“俺達は二人で一人だ”と言い張り、無理矢理参加を認めさせた。コロシアム史上最も掟破りの双子!! “ツヴィ”と“リング”だ!!」
「「僕達双子、二人で一人!!」」
瓜二つの姿をした、低身長でぽっちゃり体型の双子ツヴィとリング。仲良さそうに手を取り合って、入場して来る。
「まだまだいるぞ!! そのあまりに残虐な戦いから、観客全員を吐かせた男!! “グラオザーム”!!」
「血……肉……ヒヒヒッ……ヒヒ……」
全身を掻きむしり、血を体中から流し続けるグラオザーム。目の焦点が合っておらず、何処か上の空の様子だった。
「ここで現れたのはコロシアムトーナメントの紅一点!! 血生臭い戦場に咲いた一輪の花!! “ブルーメ”!!」
「うふふ、こんにちは~」
我が強い個性豊かな戦士達の中から、おっとりとしたゆるふわ系の女性ブルーメ。観客達に手を振って挨拶をしている。これには、観客達……特に男性陣は大盛り上がりである。
「次に現れたのは……ああっと!! コロシアム史上最弱の男!! “シヴァハ”だ!!」
「……ふん」
シヴァハの名前が上がった瞬間、観客達からブーイングの嵐。公平な立場にいる筈のグレルまでも、親指を下に突き出してブーイングしている。が、そんなの特に気にせず入場するシヴァハ。
「さて次の戦士は……な、何と!!? 今回のコロシアムトーナメントにはあの男も出場する様だ!! 皆様、この男の事をご存じでしょうか? 数十年前、冒険者ギルドに突如現れ、数々の異名を残し、そのあまりに傍若無人振りから、周囲の人間が“エクスルール”という暗黙の掟を定める事となった存在!! エクスキューショナーこと、“エクス”!!」
「…………」
今まで以上の熱弁を披露するグレル。一方、相変わらず無言のまま、切っ先の無い剣を地面に引き摺るエクス。そしてそんなエクスの姿に観客達の盛り上がりも最高潮になっていた。
「そして、その他にも油断ならない曲者揃いばかりが集まっているぞ!!」
「……って、ちょっと私の紹介は!!?」
エクスを最後に有力な戦士達の解説を終了するグレル。思わずツッコミを入れるが眼中にすら無いのか、無視されてご立腹のガミーヌ。
やがて全ての戦士達が会場へと入場を終える。
「さぁ、ここで今回のスペシャルゲストをご紹介致しましょう!! 皆様、あちらの特別席をご覧下さい!!」
そう促され、観客達と戦士達が一斉にグレルの指差す方を向く。そこは、丁度ガミーヌ達が入場して来た門の真上に位置する場所。所謂、バルコニー席と呼ばれる特別な観覧席である。そこに各国の著名人とおぼしき人達が座っている。そして、その中の二人が立ち上がり、コロシアム全員に顔を見せる。
「!!?」
その二人の顔を見て、ガミーヌは驚きの表情を見せる。そこに現れたのは、豪華で派手なドレスを身に纏い、これまた豪華で派手な扇子を扇いで涼しむ、つり目で冷酷そうな女と、軍服の様な服に身を包み、今まで取ったであろう勲章を見せびらかすかの様に胸元に付け、そして無駄に宝石が付いている王冠を被っている、白髪で長い髭を蓄えた細目の男だった。
「本日、スペシャルゲストとしてアリスクラット王国からお越し頂きました。アリスクラット王国国王“ブーゼ・フォン・ロイヤリティー・アリス”国王陛下と、その第一妃であらせられる“ヴィス・フォン・ロイヤリティー・アリス”王妃です!!」
「あ……あ……ああ……」
「…………」
興味無さそうに適当に振る舞う二人を見ながら、開いた口が塞がらないガミーヌ。そして来る事を知っていたかの様に、じっと見つめるエクスであった。
ガミーヌの最終目標であるアリス家の現当主とその妃。
そして同時にエクスの復讐相手でもある二人。
漸く敵の姿が明らかとなった!!
という所で今回はここまで!!
次回もお楽しみに!!
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