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冒険者ギルド

少しずつ投稿日数がズレていますが、誤差の範囲として許して下さい。それでは第三話をどうぞ。

 馬鹿なのか!!?


 この場にいる全員がそう思った。


 つい数秒前に、二人の若き男女の首が斬り飛ばされたというのにも関わらず、それでも尚エクスルールを破ろうとする愚か者が現れた。


 整った顔立ちに、思わず見惚れてしまう程の枝毛一つ無い金髪縦ロール。満面の笑みから溢れる八重歯が非常に愛らしく、何処も剥げていない赤く彩られた鉄の胸当てから、ルーキーなのは一目瞭然だった。


 少女は両手を腰に当て、胸を張って自信満々な態度で口を開く。


 「あら、ごめんなさい。自己紹介がまだだったわね。私はガミーヌ・フォン……いえ、“ガミーヌ”。只の“ガミーヌ”よ。まぁ、この私とパーティーを組むんだから、名前位覚えなさいよ。これからよろしくね」


 そう言いながらエクスに手を伸ばし、握手を求めるガミーヌ。その様子に一同が“終わった”という表情を浮かべ、天を仰いだ。


 が、次の瞬間、信じがたい光景が目の前に飛び込んで来た。


 何とあのエクスが90度体の向きを変えて、大通りから外れて行ったのだ。これには全員目を丸くするが、直ぐ様理由に気が付く。


 「あっ、おい見ろ。あの子が立ってる場所!!」


 エクスの目的地は冒険者ギルド。その為、必ず何処かで道から外れる必要がある。その境目にガミーヌは立っていたのだ。よく見れば、剣で出来た溝がガミーヌの目の前で左にカーブしていた。


 「つまり……?」


 「エクスルールを破った事にはならない。奇跡的にな……」


 全員がホッと胸を撫で下ろした。三体目の死体が生まれずに済んだと一安心している所、握手を見事にスルーされたガミーヌは全身を怒りでぷるぷると震わせていた。


 「ちょっと!! 待ちなさいよ!!」


 「「「「!!?」」」」


 大声を張り上げ、エクスの後を追い掛けようとするガミーヌ。そんな彼女を数人の男女が止めに入る。その内の一人が羽交い締めで動きを押さえ込む。


 「何なのあんた達は!!? 離しなさいよ!! 私はエクスに用があるんだから!!」


 「いやいや、一旦落ち着いて!! わざわざ助かった命を無駄に散らす必要は無いよ!!」


 「離せって……言ってるでしょ!!」


 するとガミーヌは全身を大きく振るわせ、何とか拘束を解いた。そして静止を振り払い、そのまま冒険者ギルドに駆け込んだ。


 彼女の後ろ姿を最後に、住民達は深い溜め息を漏らし、諦めるのであった。




***




 冒険者ギルド。ラフスを訪れた者なら一度は寄るべき超メジャー施設。冒険者の登録は勿論の事、部屋の中央に取り付けられた巨大な掲示板から、気に入った依頼を受ける事も出来る。


 それ故に受付カウンターは、いつも混雑している。五人体制で回そうとするが、それでも人手が足りない程だ。


 更にこの施設には二階があり、そこでは酒とちょっとしたツマミを販売している。だから冒険者ギルドは昼夜問わず毎日どんちゃん騒ぎ。いつも冒険者達の笑い声と話し声で絶えない。


 その筈なのだが……何故だか今日は不気味な程に静まり返っている。まるで目の前に野生の熊でも現れたかの様に、飲み掛けの酒を前にしても誰一人として身動き一つしていなかった。


 その理由は明白。エクスが扉を開けて入って来たからだ。


 エクスが通る道はいつも決まっている。入り口から受付カウンターまでの一直線。室内でも剣を引きずる為、外と同様に床には真っ直ぐ伸びた一本の溝が生まれていた。それに沿ってエクスは歩いて来る。


 誰も彼と目を合わせようとはしない。目の端で捉えはするが、決して後を追ったりはしない。触らぬ神に祟りなし。皆、嵐が過ぎ去るのをじっと待っていた。


 やがて一人の受付嬢の前に立つエクス。


 「これはエクス様、本日はどの様なご用件でしょうか?」


 眼鏡にスーツと見本的な受付嬢の女性。他の者達と異なり、エクスに対して恐怖心などを抱いている様子は一切見られない。受付嬢が用件を伺うと、エクスはローブの中から、人間の首を取り出し、カウンターに置いた。


 「依頼達成の報告ですね。はい、確かに承りました。こちらが報酬金となります」


 冒険者ギルドの依頼は討伐から護衛、未知なる場所の探索など、多岐に渡って存在している。その中でもエクスは討伐依頼しか受けない。


 討伐は、ギルドまたは個人が指定した対象を殺す事が目的の依頼であり、基本的に討伐した証明としてその者の持ち物や体の一部を持ち帰るのだが、エクスは何故か必ず“首”を持ち帰る。


 冒険者達は依頼の報酬金だけで無く、討伐した者の装備や素材を剥ぎ取る事で、己を強化していく。しかし、エクスだけは他の者達とは違い、証明する為だけに価値の無い首だけを持ち帰る。こうしたやり取りも、エクスが死刑執行人と呼ばれる要因なのかもしれない。


 それはそれとして、討伐対象とはいえ人間の生首を差し出された受付嬢。普通なら卒倒してもおかしくない状況だが、慣れた様子で淡々と生首を回収し、エクスに報酬金を支払った。


 エクスは報酬金を受け取ると、即座に依頼の紙を手渡した。


 「依頼の受託ですね。はい、承りました。少々お待ち下さい」


 そう言って奥へと引っ込む受付嬢。エクスはその場を動かず、戻って来るのを待っていると……。


 「逃がさないわよ、エクス!!」


 ガミーヌがエクスの後を追い掛けて来た。自分からエクスに関わろうとするガミーヌに対して、冒険者達の注目が集まる。そんな視線を気にする事無く、ガミーヌはエクスの真横に立つ。


 「無視するなんて良い度胸ね。この私がパーティーに入れてあげるって言ってるんだから、素直に入りなさいよね」


 そう言うと再び同意の握手を求めるガミーヌ。しかし、エクスは握手どころか視線すらも動かさない。何ならガミーヌの存在にすら気が付いていないのではと思う程、微動だにしなかった。


 「ちょっと!! また無視する気!!?  レディである私から誘っているって言うのに、それに乗らないなんてあんたそれでも男なの!!?」


 キャンキャンと子犬の様に喚き散らすガミーヌ。しかし、エクスは相変わらず無反応だった。


 「ムギギギ……」


 反論すら返さないエクスに、ガミーヌは地団駄を踏みながら睨み付ける。すると奥から受付嬢が戻って来る。


 「お待たせしましたエクス様。依頼を正式に受理致しました」


 受付嬢の話に反応を示すガミーヌ。


 「依頼? それってどんな依頼なの?」


 「猛獣“ボアベア”の討伐依頼です」


 受付嬢から依頼書を受け取り、中身を確認する。


 「へぇー、丁度良いわ。ねぇ、その依頼私が手伝って……あれ?」


 依頼の内容にニヤリと口角を上げるガミーヌ。改めてエクスに声を掛けようと振り返るも、既にエクスの姿は無くなっていた。


 「あ、あれ? エクスは!?」


 「エクス様なら依頼の受理を聞いた後、直ぐに出て行かれました」


 よく見れば、エクスがいなくなった事で、他の冒険者達が再び騒ぎ始めていた。短い間とはいえ抑圧されていた分、いつもより煩く感じた。そんな周囲の騒ぎ声よりも大きな声でガミーヌが叫ぶ。


 「ちょ、ちょっと!! どうして教えてくれなかったのよ!!」


 「聞かれませんでしたので」


 塩対応の受付嬢にたじろぐガミーヌ。


 「うぅっ、もう!! この私を置いて行こうだなんて、そうはいかないんだからね!!」


 しかし、直ぐ様気持ちを切り替え、置いて行かれた事実に腹を立て、ガミーヌは顔を真っ赤にしながら、慌ててエクスの後を追い掛けて行く。


 「またのご利用お待ちしております」


 そんな彼女に受付嬢は丁寧に頭を下げ、見送るのであった。

自分のイメージするお転婆姫の性格はこんな感じなのですが、皆さんのイメージするお転婆姫とはどんな感じですか?

良ければ感想等で教えて下さい。


では次回もお楽しみに!!

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