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戦士の国“クリーエ”

凄く恥ずかしい事をしてしまいました。

本来、こっちに投稿しないといけないのに、間違えて『この世に正義も悪もありはしない』の方に投稿してしまいました。

もし、混乱された方がいたら申し訳ありません。

 旅人は語る。世界屈指の貿易都市が“ラフス”なら、世界屈指の武力国家は“クリーエ”だ。そもそも、何故クリーエは戦士の国と呼ばれる様になったのか。


 始まりは二人の男達による喧嘩だった。草木が一本も生えていない荒野のど真ん中、屈強な男二人が殴り合いをしていた。原因は誰も知らない。大切な人を殺された、金品を盗まれた、肩と肩がぶつかった、顔がムカついたなど、様々な憶測が飛び交うが結局の所、真相は闇の中。


 二人の実力は拮抗しており、喧嘩は予想以上に長引いた。一日……二日……三日……やがて一週間が過ぎた辺りで異変が起こった。二人の争いを端で眺めるギャラリーが出来ていたのだ。


 最初は一人だった。偶々通り掛かった冒険者が、面白半分に観戦していた。しかし、激しくぶつかり合う二人に目が奪われ、興奮を覚え、やがて時間を忘れて見続ける様になっていた。その内、ギャラリーの人数が一人、二人と増え始め、一ヶ月後には数百人という規模まで膨れ上がっていた。


 そして遂に、皆が待ち望んでいたその時がやって来た。二人の喧嘩に決着が付いたのだ。果たしてどっちが勝ったのか、その結果は実の所誰も覚えていない。だが、重要なのはそこじゃない。二人の喧嘩は終わったが、興奮したギャラリーの熱は一向に冷めなかった。冷める気配すら無かった。


 そんな中、ふと誰かが口にした。


 『ここに喧嘩専用の舞台を作らないか? 』


 この一言に、全員の心は突き動かされた。まず、貴族達が建設の為の資金を提供した。次にその金で行商人達が各地から資材を持ち寄った。次に設計士達が図面を引いた。最後にその図面に沿って、大工達が資材を組み立てた。


 そうして生まれたのが、後に語られる事となる戦士達の決闘場“コロシアム”の原型である。


 完成したコロシアムの噂は瞬く間に世界中へと広がり、腕に覚えのある戦士達が己の実力を確かめようと、コロシアムへと集い始める。そしてそんな戦士達の世紀の一戦を見物する為、更なるギャラリーが足を運んで来る。


 やがて、移動の手間と金銭を抑える方法として、コロシアム周辺に自宅を建て、そこに引っ越して来る者達が現れ始める。そうして数世紀に渡って人口を増やしていき、最終的に一つの国家として生まれたのが、この戦士の国“クリーエ”なのだ。




***




 「……って、所かしらね」


 ガミーヌ達は現在、戦士の国として有名な“クリーエ”に来ていた。幾つもの建物が並んで出来上がった街道を歩きながら、世の中の情勢について疎いルムに対して、ガミーヌがクリーエの歴史を得意気に語っていた。


 「ほぅ、よく知っておるな」


 「ふふん、このガミーヌ様に知らない事なんて無いのよ。特に国の成り立ちと歩んだ軌跡についてだったら、どの歴史家よりも詳しいと自負しているわ」


 素直に感心するルムの態度に、鼻を高くして気分を良くするガミーヌ。遂には歴史の専門家よりも詳しいと自称する様になった。そんな中、ルムがふと過った疑問を口にする。


 「ん? だが、その話おかしくないか?」


 「は? 何処がよ?」


 これにはガミーヌも少しムッと来た。何も知らない素人相手に、自身が誇る知識にケチを付けられた様な感覚だった。今の説明におかしい点など何処にも無い。そう言わんばかりに、強めの口調でルムに聞き返す。


 「二人が喧嘩していた所までは良いが、その喧嘩が一ヶ月以上も続くなど、あまりに不自然じゃないか? その間、一度も休憩しなかったという事か?」


 「そ、それは……き、きっとそれだけ白熱した勝負だったのよ!!」


 「食事や睡眠も取らなかったというのか? それは最早、人間の域を越えているぞ」


 「だ、だから、食事や睡眠位はしていたんじゃないの!? その辺の話を詳しくすると、お話としてぐだっちゃうから!!」


 「そうなると、何度か心と体を休めたのにも関わらず、その場で喧嘩を繰り返している事になるな。そこまでして決着を付けたい理由とは何だろうな?」


 「さ、さぁね、それは誰も知らないのよ」


 「まだある。喧嘩を観戦していたギャラリーだが、そんなのがいたら、さすがの二人も喧嘩を途中で止めると思うのだ。何故なら、見世物では無いのだからな」


 「あ、あれよ……そう、喧嘩に集中していて周りが見えていなかったのよ!!」


 「何百人もいてか?」


 「うっ……!!」


 聞くのも野暮といえる疑問を、ずけずけと聞いて来る。これにはガミーヌも押し黙ってしまう。そんな彼女に対して、お構い無しにルムは次々と疑問を投げ掛ける。


 「それにたった二人の喧嘩を何百人ものギャラリーが、どうやって観戦していたのだ? 草木が一本も生えない荒野のど真ん中という事は、建物などによる高低差が無いという事。どんなに工夫したとしても、後ろの者達は確実に見れないと思わないか?」


 「……るさい……」


 「よく考えてみれば、その場に資金を提供する貴族、調達する商人、図面を引く設計士、建設する大工が揃っているなど、偶然だとしても随分と都合が良すぎやしないか?」


 「うるさい……」


 「後、移動の手間と金銭を抑える為に、コロシアム付近に引っ越したというが、水や食料がまともに無い様な場所に移り住むなんて、そいつらは生活能力が無いのか? それとも、そうした問題を解決する策があったのか? ガミーヌ、お話としては申し分無いが、いまいちリアリティに欠ける内容……「うるさいわね!! お姉ちゃんのお話に間違いがある筈無いでしょ!!」……っ!!?」


 突然、大声を上げてルムの会話を遮るガミーヌ。息を切らして、興奮した様子に一瞬驚くが、それよりも気になる台詞が聞こえた。


 「……“お姉ちゃん”?」


 「……何でも無いわ……悪いけど、用事を思い出したから、少しの間一人で行動するわね」


 そう言うとガミーヌは一人、エクス達の側を離れようとする。その哀愁漂う背中に思わずルムが引き留める。


 「お、おい、いくらお主でも一人は危険だぞ?」


 「……大丈夫よ、よく遊びに来ていた国だから、地形は大体頭に入ってる……」


 「よく遊びに来ていた? 今回が始めてじゃないのか?」


 「あっ……もう……いいから今は放っておいて。一時間後、コロシアム前で待ち合わせって事で……」


 ルムの指摘にハッとしながら、自分に嫌気が差す様に首を横に振り、待ち合わせの時間と場所を指定して、その場を足早に去っていく。


 呆然と眺めるルムに対して、エクスは片時も離れまいとガミーヌの後を追い掛けようとする。しかし、大剣を引き摺る音に気が付いたガミーヌが“キッ”と、睨みを利かせながら振り返る。


 「一人にしてって、言ってるでしょ!!!」


 「…………」


 その両目に涙を浮かべながら、エクスに向かって怒鳴るガミーヌ。そしてそのまま一度も振り返らず、走って二人の側を離れてしまうのであった。


 しかし、それでも構わず後を追い掛けようとするエクス。すると、ルムが肩を掴んで物理的に引き留める。


 「今は本人の言う通り、そっとしてやろう。どうやらワシは、触れてはならない逆鱗に触れてしまった様じゃ……」


 「…………」


 エクスが再びガミーヌの方を向き直した時には、彼女の姿は何処にも無かった。その事実を確認したエクスは、掴んでいるルムの手を払いのけ、一人何処かへと歩き始める。


 「お、おい!! 何処へ行くつもりだ!!?」


 「…………」


 「こ、こんな土地勘も無い所でワシを一人にするな!!」


 「…………」


 「おい、聞いておるのか!!?」


 ルムの必死な訴えに耳も貸さず、エクスは何処かへと去ってしまった。そうして初めての場所に一人取り残されてしまったルム。


 「こ、これからどうしたら良いんだろうか……」


 右も左も分からぬ状態。コロシアムがどっちなのかも知らない為、立ち往生してしまう。


 「今からでもエクスの後を追うか? いや、だがガミーヌの事も気になるしな……うーん、どうしたものか……」


 「ようよう、そこの綺麗なネエちゃん」


 「ん?」


 これからどうするべきか困り果てていると、茶髪で襟足長めのチャラそうな男と、ハゲで頭に深い傷痕が付いている男が声を掛けて来た。


 「今、一人?」


 「なら、俺達とお茶でもしねぇか?」


 「…………(ニコッ)」


 如何にも、下心がある二人組を見たルムは満面の笑みを見せるのだった。

いきなり関係がギクシャクしてしまう三人。

果たして、無事にコロシアムへと集まれるのだろうか!?

次回もお楽しみに!!

評価・コメント・ブックマークお待ちしています。


次はこんなミスが無い様に気を付けます。

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