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今回から新たな物語が始まります。

二人に待ち受ける物とは!?

 「ふっふーん!!!」


 ガミーヌは胸を張りながら、我が物顔でラフスを歩いていた。道行く人々が皆一同に足を止め、彼女の方を見る。


 「おい、もしかしてあれって、噂の新人冒険者ガミーヌじゃないか?」


 「ビギナーでありながら、危険度数10の依頼を軽くこなして、一気にゴールドランクまで上がったあの!?」


 「チラリ……」


 「何でも、龍を討伐したらしいぜ」


 「えっ!? 龍ってよくお伽噺とかに出て来るあの龍!? 本当に実在してたのかよ!?」


 「チラチラ……」


 先程から堂々と歩いているガミーヌだが、街の人々が自分の噂で盛り上がるのを地獄耳で聞き取り、一瞬だけ視線を向けたりなど、気付かないフリをしながら心境では、舞い踊る程に喜んでいた。


 「(うひょー!! そうよそうよ、もっと盛り上がりなさい!! この私こそが史上初、危険度数10の依頼を達成し、ビギナーからゴールドへ飛び級した“ガミーヌ・フォン・ロイヤリティー・アリス”よ!! そしてゆくゆくは、まだ誰も成し得た事の無い“マスターランク”になるの!!)」


 やがて歩く姿は大股となり、振る腕もゆっくり大きくなっていく。顔も斜め上に持ち上がり、心なしか鼻も天狗の様に高くなって見える。


 「しかも、あのエクスとパーティーを組んでいるらしいぜ」


 「あの死刑執行人と!? そいつはスゲェな!!?」


 「何でも、龍の首を一撃で切り落としたらしいぞ!?」


 「(そうそう、あのエクスとパーティーを組んじゃうんだから、私ってばやっぱり優秀よね!!)」


 更に話題は、ガミーヌからエクスへと変わる。仲間が誉められているというのに、まるで自分が誉められているかの様に喜びの笑みを溢す。


 「へぇー、それでガミーヌは何をしたんだ?」


 「えっと……あれ? そう言えば、そこら辺の話は全く聞かないな……」


 「(えっ、ちょっと!!?)」


 何やら雲行きが怪しくなり始めた。


 「全く?」


 「これっぽっちも……」


 「(いやいや、私だって活躍したわよ!! 例えば…………えーと……えー、と、とにかく役に立ってたわ!!)」


 何とか話題を修正しようと、自分が活躍した場面を思い返そうとするが、これといった物は無かった。


 「(言い返してやりたい!! やりたい……けど、それは出来ない!! だって、ここまでの噂は全部……私が自分で流した物だからっ……!!)」


 そう、ここまで街の人々が話していたガミーヌとエクスの活躍。それら全ては、ガミーヌ本人が流していた物だったのだ。


 ここで文句を言う事は簡単だろう。しかし、自分で流しておいた噂に対して自分でケチを付けるのは、恥ずかしい上に何よりガミーヌ自身のプライドが許さなかった。


 こうした理由から何も言わず、グッと我慢するガミーヌ。そんな彼女を他所に、話題は最悪な結果を迎える。


 「それってつまり、エクスのおこぼれでランクが上がっただけじゃねぇのか?」


 「(……っ!!!)」


 「そうだな。おかしいと思ったんだよ。入ったばかりのビギナーが、危険度数10の依頼を達成するなんて。どうせ、全部エクス一人にやらせたんだろうぜ」


 「ははっ、違いねぇ!!」


 「(…………)」


 これにより、街の人々は蜘蛛の子を散らす様、あっという間にいなくなってしまった。


 ガミーヌはその場に立ち止まり、俯くとプルプルと全身を振るわせる。今にも叫び声を上げそうな雰囲気だが、服の袖で両目を擦る。若干、袖の二ヶ所が濡れていた。


 「(…………全部……あの人達の言う通り……)」


 ガミーヌは全身怒りに振るえていた。しかしそれは街の人々に対してでは無く、ましてやエクス本人にでも無い。それは自分。


 情けなくも、彼らが言ったエクスのおこぼれは間違っていない。何度思い返しても、活躍しているのはエクスだけで、自分はというと終始わたわたしていただけだ。


 「(これじゃあ……何の為に家を出たのか分からないじゃない!! あいつらを……家族を見返す為に冒険者になったって言うのに、難しい依頼は全てエクス一人に任せてしまっている。そんなんじゃあ、いつまで経ってもマスターランクになんかなれない!!)」


 何かを決意したガミーヌは、突然走り出した。向かった先は当然冒険者ギルド。勢い良く扉を開けて中に入ると、既に受付でエクスとギルドマスター及び塩対応受付嬢がいた。


 こちらに近付いて来るガミーヌの存在に気が付き、テンプレートな挨拶を交わす塩対応受付嬢。


 「これはガミーヌ様、おはようございます。本日はまた随分と……」


 「危険度数10の依頼書を寄越しなさい!!」


 「……荒れていらっしゃいますね」


 と、大声を発して受付カウンターを両手で強く叩き付ける。これには塩対応受付嬢も呆れた様子だった。


 「私は一刻も早くマスターランクに上がらないといけないの。その為には、なるべく危険度数の高い依頼をこなして行くのが一番の近道!! 分かったらさっさと危険度数10の依頼書を渡しなさい!!」


 「……ガミーヌ様、先日の一件はあくまで異例中の異例です。本来であれば、規則違反から冒険者ギルドの除名となる所でしたよ」


 「うぐっ、それは……分かってるわ……でも、実際危険度数10の依頼を達成している訳だし、少し位融通を……」


 「更に言えば、危険度数10の依頼書はギルドマスター管轄の代物。それを勝手に持ち出したとなれば、窃盗の罪で衛兵に突き出して牢屋に放り込む所でした」


 「ろ、牢屋!!?」


 「はい、ですがそれをギルドマスターが若さゆえの過ちだと、一度限りの恩情を下さったのです」


 「し、知らなかった……ギルドマスターには、感謝しないといけないわね……」


 「えぇ、全くその通りです」


 「…………」


 何度も言うが、この目の前にいる塩対応受付嬢こそが、この冒険者ギルドのギルドマスターである。自ら噂を振り撒くガミーヌも大概だが、知らない相手に自分の自慢をするギルドマスターもどうかと思う。


 相変わらずフードを被っていて顔は分からないが、唯一事情を知っているエクスは、この状況に何とも言えない表情を浮かべているのが、フード越しからでも伝わって来る。


 「少しずつランクを上げて行けば、いつかギルドマスターと会う事も出来ますよ」


 「そうね、その時はお礼の一言でも言っておくとしましょう。それじゃあ改めて、私に見合った出来るだけ危険度数の高い依頼書を斡旋してちょうだい」


 「そうですね……現在、ガミーヌ様はゴールドランクですので……あっ、これなどは如何でしょうか?」


 ごそごそとカウンター裏で依頼書の束を掻き分ける。すると一枚の依頼書を取り出し、カウンター上に置いた。


 「……幽霊退治?」


 「ここ最近、誰も住んでいない筈の屋敷から物音が聞こえたり、女のすすり泣く声が聞こえて来るなど、様々な怪奇現象が多発しているので、その調査ともし幽霊がいるのなら次いでに退治して欲しいとの事です」


 「幽霊ね……面白そうじゃない。それ、引き受けるわ!!」


 「それではこちらで依頼の手続きを行います。受理が完了するまで、しばらく席の方でお待ち下さい。時間になったら、お呼びします」


 「了解。さて、取り敢えず私はあっちで何か食べるけど、エクスはどうするの?」


 「…………」


 食事に向かおうとするガミーヌについて行こうとせず、その場にじっと立っている。


 「あっそ、なら一人で勝手に食べるわ。実は朝から何も食べてないのよね」


 態度から察したガミーヌは、エクスを置いて一人で食事へと向かった。


 一人残ったエクスの下に、塩対応受付嬢であるギルドマスターが現れた。


 「本当に身勝手な方ですね。ガミーヌ様は……」


 「…………」


 「あぁ、心配なさらずとも依頼書の手続きは他の受付嬢に任せているので安心して下さい」


 「…………」


 「分かっていると思いますが、ここは人目に付きやすい。何処で他の冒険者や受付嬢が聞いているか。なので、ここでは常に敬語で接する様にしているんです。でも……もし、私とゆっくり二人きりで話がしたいと言うのなら、今すぐギルドマスターの部屋に行きましょうか?」


 色っぽく体を寄せようとするギルドマスター。しかし、それを華麗に避けるエクス。


 「ふふっ、つれないですね」


 「…………」


 「ご安心下さい。今回の依頼はそこまで危険な物じゃありません。物音や女のすすり泣く声は本当ですが、実害はまだ出ていませんので……」


 「…………」


 「過保護ですね。ですが、あまり深入りされない方がご自身の為ですよ。貴族を皆殺しにするという事は、最終的にあの子も殺さないといけないのですから……関わり過ぎて情が湧いても知りませんよ」


 「…………」


 二人の物騒な会話とは裏腹に、当の本人は運ばれた朝食を美味しそうに食べていた。


 「うーん、美味しい!!」

いつか訪れるであろう別れの時。

それでも二人は各々の目的の為に突き進む。

次回、幽霊が出ると噂の屋敷に突入する!!

次回もお楽しみに!!

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