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帰還、そして……

前回、見事邪龍モドキを倒したガミーヌとエクス。

そして二人の前に死んだと思われていたルムが現れるのであった!?

 「ルム!!? 生きてたの!!? ま、まさかオ、オバケなんて事は……」


 『よく見ろ、ちゃんと実体がある』


 「で、でもその“穴”は……」


 まるで何事も無かったかの様に平然としているルムだが、その体には邪龍モドキの光線によって空いた風穴が幾つも残っていた。


 『ワシら龍は生物界の頂点だぞ? これ位の傷、何て事は無い』


 注意深く観察すれば、確かに風穴は空いてはいるが、そこから血は一滴も流れていなかった。


 『まぁ、流石にあの時は不意を突かれてしまったからな。突然の痛みで少しの間、意識を失ってしまった』


 「何よそれ……私はあなたが死んだと本気で思って!! 落ち込んでたのがバカみたいじゃない……」


 『ほぅ、出会ってまだ数時間の仲じゃが、もうワシの事が恋しくなる位、好きになったか?』


 「バ、バカ言わないでよ!!? 誰があんたの事なんか好きになるもんですか!! わ、私は只、依頼を受けた冒険者としての責務を果たせなかった事を……」


 ニヤニヤとした表情を浮かべながら、面白おかしくからかって来るルムに対して、顔を真っ赤にしながら恥ずかしさを隠す様に、必死に言葉を並び立てるガミーヌ。


 『冗談はさておき……』


 「ちょっと!!? 冗談って何よ!!?」


 興奮から大声を上げるガミーヌを無視して、話を続けるルム。


 『お前達には驚かされたぞ。まさか人間だけで……それもたった二人だけでモドキとはいえ、龍を倒してしまうとはな』


 「ま、まぁ、正直あんなの大した事無かったわね。私とエクスの二人がいれば、どんな相手も目じゃないわ」


 『それにしては、最後の爪が甘い様だったが?』


 「あ、あれはあれよ!! えー、そ、そう!! あなたにも活躍のチャンスを上げようと思ったの!! よかったわね、少しは役に立てて!!」


 『そうだったか。それはそれは、随分とお優しいお心遣いな事で。ここに感謝の意を示そう』


 「どういたしまして」


 こうしたガミーヌとルムの皮肉めいたやり取りが続く中、倒した邪龍モドキの体が切り落とした頭と共に、ゴポゴポという音を立てて、骨ごと地面に溶け始めた。


 「こ、これは……」


 『さらばだ、同胞よ。今度こそ、安らかに眠れるぞ』


 「ルム……」


 完全に溶けきり、地面に吸収された邪龍モドキ。やがて濡れた地面も乾き、後には何も残らなかった。それをルムは最後の最後まで見届けた。その時のルムの表情は、悲しんでいる様にも見える一方、かつての同胞が安らかに眠った事に喜んでいる様にも見えた。


 『小娘達……いや、ガミーヌとエクス。お前達二人には感謝してもしきれん。我が同胞の魂を賊から救ってくれた事、心から礼を言う』


 そう言いながら、ルムは体と頭を地面に付けて、ガミーヌとエクスの二人に感謝を述べた。


 「ちょっ、いきなりどうしたのよ? また、からかってるの?」


 『ワシら、龍の一族にとって頭を地に付ける行為は、相手に対する最上級の礼だ。最も、これは龍にとって最大の屈辱的行為でもある為、バカみたいにプライドが高い龍は死んでもやらないのだかな』


 「それを私達に?」


 『それだけの事をお前達はしてくれた。もっと胸を張れ。お前達は歴史上、最も偉大な事を成し遂げたのだぞ。場合によって、後世に語り継がれるやもしれん』


 「後世に語り継がれる……ふふふ、そうよねぇ。やっぱり、私って凄いわよねぇ。だってだって、危険度数10の依頼をたった二人で達成させちゃったんだから。これはもう一気にマスターランクまで上がっちゃうわねぇ」


 ルムに褒められたガミーヌは、あまりの嬉しさと恥ずかしさから、顔一杯に笑みを溢しながら体をくねくねさせ、自己肯定し始めた。


 『さて、それで報酬に関してなんだが……』


 するとルムは自身の顎に爪を立て、そこから一枚の鱗を剥がした。


 『この鱗をやろう』


 「えっ、たったこれだけ? 最も偉大な事を成し遂げたのに、その報酬が鱗一枚?」


 『只の鱗では無い。それはワシの“逆鱗”だ。他の鱗とは比較にならない程、貴重な代物だ。売ればかなりの金額になるだろう。それか武器や防具に加工して貰うのも手だぞ』


 「へぇー、それだったら有り難く頂こうかしらね。それじゃあ、報酬も無事に貰った事だし、そろそろ私達はギルドに戻るわ」


 『もう行ってしまうのか?』


 「えー、何よ、もしかして出会って数時間の私達と離れるのが、そんなに寂しいの?」


 『うむ、自分でも信じられないが、凄く寂しく感じる。こんな気持ちは初めてだ』


 「お、おぉ……これは予想外の反応ね……」


 散々、からかわれた仕返しに、こっちもからかおうとしたが、まさかの返答に戸惑うガミーヌ。


 「あなたが人間だったら、私達のパーティーに加わらないかって誘うんだけど、流石に龍がメンバーだとね……」


 『そうか……成る程な……よく分かった。いや、引き止めてしまってすまなかったな』


 しばらく何かを考え込むルムだったが、直ぐ様納得した様子でガミーヌ達を見送る事を決断した。


 「ごめんなさいね。たまに遊びに来るから、その時はこのガミーヌ様の英雄譚を嫌って程、聞かせて上げるわ」


 『それは楽しみにしているぞ』


 こうしてガミーヌ達はルムとの別れを告げ、危険度数10の依頼を達成した事を伝える為、冒険者ギルドへと戻って行くのであった。


 『…………』


 二人の背中をじっと見つめるルム。中でも特にエクスの姿を凝視していた。


 『(モドキとはいえ、龍の首を切り落とすとは……人間が一生掛かっても出来ない芸当だ。奴は一体……)』


 エクスに対する一抹の不安を抱きながら、ルムは二人が見えなくなるまで見届けるのであった。




***




 冒険者ギルド。龍の墓場から戻って来たガミーヌ達は、真っ直ぐ受付へと向かった。すると二人が到着するのを見計らったかの様に、あの塩対応受付嬢がカウンター側に姿を現した。


 「これはこれはガミーヌ様、エクス様。本日はどの様なご用件でしょうか?」


 「ふふん、驚きなさい」


 ガミーヌは得意気な表情を浮かべながら、危険度数10の依頼書をカウンターの上に置いて見せた。


 「これは……」


 「私達、危険度数10の依頼を達成したのよ!!」


 その大声はギルド中に響き渡った。すると次の瞬間、辺りは騒然とし始めた。


 “き、危険度数10だって!?”


 “本当に存在していたのか!?”


 “しかもそれを達成したって、あいつら何者だよ!?”


 “危険度数10って事は……まさかマスターランク!?”


 ざわざわと周囲が騒ぎ立つ中、ガミーヌは鼻を膨らませ、満足そうに笑みを浮かべる。しかし、まだ完璧じゃない。一人、最もぎゃふんと言わせたい者がいた。


 「どう? どうなのよ? 何とか言ってみたらどうなの? 私達、あの危険度数10の依頼をこなしたのよ!!」


 そう、目の前にいる塩対応受付嬢である。いつも素っ気ない態度を取る彼女に、何としてでもぎゃふんと言わせたかったガミーヌ。その反応を期待して待っていた。


 「ガミーヌ様……」


 「うふっ、何かしら?」


 「こちらの依頼書はギルドマスターの部屋にあった物の筈ですが、何故ガミーヌ様がお持ちに?」


 「!!?」


 ガミーヌはすっかり忘れていた。この依頼書は、ギルドマスターの部屋から勝手に持ち出した物だという事を。そして実は目の前の塩対応受付嬢こそ、そのギルドマスター本人なのだが、その事をガミーヌは知らない。


 「えっと……それはあの……!!」


 慌てて弁明しようとするが、今更何を言っても只の言い訳になってしまう為、結果何も言えなくなってしまった。


 「そうですか。勝手に持ち出したんですね」


 「うっ!!! は、はい……そうです……」


 “何だ、勝手に持ち出したのか”


 “って事は、別にあいつらマスターランクじゃないのか”


 “あーあ、驚いて損した”


 遂には正直に答えてしまい、周りの反応もガッカリとした様子に変わり、平常に戻った。


 「マスターランクで無い者が、危険度数10の依頼書を勝手に持ち出した挙げ句、許可も無しに達成してしまうとは……前代未聞ですね」


 「で、でも結果的に達成したんだから……」


 「よって、ガミーヌ様とエクス様のお二人は冒険者の称号を剥奪」


 「そんな!!?」


 「本日を持って、お二人は冒険者を辞めて頂きます」


 「…………」


 喜びから絶望へと一変してしまった。自身の軽率な行動が原因で、冒険者を辞める事になってしまった。ガミーヌの頭の中は真っ白になっていた。


 「……と、言いたい所ですが……」


 「え……?」


 「実際、危険度数10の依頼を達成したのは事実……。よってその業績を考慮した上で、ガミーヌ様をゴールドランク、エクス様をプラチナランク昇格と致します」


 「ほ、本当に!!?」


 「はい、本当でございます」


 「や、やったぁああああああああああああああああ!!!」


 邪龍モドキを倒した時以上の喜びを見せるガミーヌ。あまりの嬉しさから、エクスの体に抱き付く。


 「やったわよエクス!! 昇格よ!! 私はゴールド!! エクスはプラチナ!!」


 「ですがその代わり、依頼達成の際に支払われるギルドからの報酬は無しとさせて頂きます」


 「別に良いわよそんな物。それにしても、あなたも素直じゃないわね。私達の事を凄いと思ってたなら、正直にそう言えば良いのに」


 「いえ、私はあくまで規則に従ったまでです」


 「規則って……相変わらずの塩対応ね。ちょっとは褒めてくれても良いんじゃないの?」


 ガミーヌに対して何も答えず、変わらない営業スマイルで微笑む塩対応受付嬢。


 「まぁ、ランクが上がったのなら別に構わないけど。さて、それじゃあ私はもう宿に帰るわ。今日は色々あって、精神的にも肉体的にもクタクタ……エクス、また明日ね」


 眠そうに欠伸と背伸びをするガミーヌ。エクスに別れを告げて宿へと向かった。


 「…………」


 「…………」


 残ったのはエクスと、塩対応受付嬢もといギルドマスターの二人。無言で向かい合っていると、ギルドマスターがエクスをカウンター側に招き入れる。


 そのまま二人は他の受付嬢や冒険者達に気付かれない様、ギルドマスターの部屋へと向かう。ギルドマスターが扉を開けると先にエクスが入り、後から入ったギルドマスターが部屋の扉を閉めた。


 その次の瞬間、エクスは持っていた剣をギルドマスターの首筋に当てた。


 「おやおや、穏やかじゃないね」


 「…………」


 今にも剣が引かれ、首が切り落とされそうな雰囲気だが、ギルドマスターは驚く素振りも見せず、至って冷静な態度だった。


 「…………」


 「私がわざとこの部屋の鍵を開けておいて、彼女に依頼書を盗ませたのがそんなに気に食わないのかい?」


 「…………」


 「確かに彼女が万が一にでも死んでしまったら、君の目的である復讐は永遠に果たされない。だけど、こうでもしなければ一生掛かっても君達はマスターランクに到達する事は出来ないだろう?」


 「…………」


 「勿論、私の権限を使えば簡単にマスターランクに昇格させられる。でもね、それじゃあ私が面白くないんだよ」


 「…………」


 「私は別に君の復讐が果たされようが、果たされまいがどっちでも良いんだよ。要は面白いかどうかなのさ」


 「…………」


 「それに忘れた訳じゃないよね。今、君がこうして五体満足に生きられるのは、あの日あの時私が君を助けたお陰なんだからね」


 「…………」


 「冷たい雨が降る中、ボロ雑巾の様に倒れていた君を私が助けたお陰で、あの娘と出会う事が出来たんだ。つまり君は私に大きな借りがあるんだよ」


 「…………」


 するとエクスは、ギルドマスターの首筋に当てていた剣を下ろした。


 「そう、それで良いんだ。これからも供に頑張ろう。復讐の為に……」


 「…………」


 そして二人のやり取りは誰にも知られず、静かに幕を閉じるのであった。

エクスとギルドマスター、二人の関係とは……。

そんな事よりも、ガミーヌはゴールドランク、エクスはプラチナランクに昇格!!

次に二人に待ち受ける物とは!?

次回もお楽しみに!!

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