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邪龍モドキ

今回は復活した邪龍の正体が判明します。

 「…………え?」


 復活した邪龍に頭から“パクっ”と、一口で美味しく食べられてしまったウロメティア。そのあまりに衝撃的な光景に、思わず放心してしまうガミーヌ。


 『ギョオオオオオオン!!!』


 「っ!!? な、何よ!? この耳障りな声は!!?」


 そんな中、邪龍の鳴き声によって何とか我に帰ったガミーヌ。しかし、代わりにそのあまりにも聞くに堪えない声に慌てて耳を塞ぐ事で頭が一杯になり、その場から動けなくなってしまった。


 やがて邪龍が吠え終わると、辺りを見回し始め、鼻を“スンスン”と鳴らしたかと思えば、何かに気が付いたのか、足下にいるガミーヌには目もくれず、何処かへと歩いて行ってしまった。


 「ちょ、何処に行くのよ!!? あの方向って……まさか!!?」


 邪龍が向かって行った先に対して、嫌な予感を覚えるガミーヌ。どうか外れてて欲しい。そんな淡い希望を抱きながら、邪龍の後を追い掛ける。




***




 そこには既に阿鼻叫喚の地獄絵図が広がっていた。響き渡る悲鳴の数々。逃げ惑う教団員達を邪龍が次々と補食していく邪龍。ガミーヌの嫌な予感が当たってしまった。ここは先程までエクスと一緒にいた場所だ。


 「エクス!! 何処にいるの!!? エクス!!」


 慌てて逃げる教団員達とぶつかりながらも、ガミーヌは必死にエクスの名前を呼び続ける。


 「邪魔だ退け!!!」


 「きゃっ!!!」


 エクスを探していると、我先に逃げ出そうとする教団員がガミーヌを押し倒し、その場から離れようとした。


 「な、何だ!!? うっ、うわぁああああああああ!!!」


 しかしその直後、邪龍の手が覆い被さり、教団員を軽々と持ち上げた。何とか逃れようと無我夢中でもがくが一向に抜け出せず、遂にはプチュと潰されてしまった。


 「こ、ここは危ないわ。一刻も早くエクスを連れてここから逃げないと……でも、いったい何処に行ったのよ……ま、まさかもう既に殺られちゃって!!?」


 姿が見当たらないエクスに、不安と焦りが募る。その時、邪龍の足がガミーヌの頭上に覆い被さり、そのまま勢い良く落下して来る。


 「い、急いで立ち上がらないと……!!!」


 現状を素早く理解し、慌てて立ち上がるが、それでも落下して来る足の範囲からは逃れられそうに無かった。


 最早生存は絶望的、半ば諦めていた。それでも手を伸ばし、一秒でも早く離れようとした。すると次の瞬間、間にエクスが割り込み、潰されそうになっていたガミーヌを間一髪の所で救い出した。


 「エクス……生きてたのね……」


 自分が生き残った事よりも、エクスが生きていた事を喜ぶガミーヌ。エクスの体にギュっと抱き付き「返事位しなさい」と、顔を合わせずに怒った。チラリと見えた彼女の横顔は、少し泣いている様にも見えた。


 「ここは危険だわ。急いでここを離れるわよ」


 そう言うとエクスと供にガミーヌは、その場を離れようとした次の瞬間!!


 「!! エクス、危ない!!」


 逃げ惑う教団員達を捕まえようと、邪龍が移動を開始した。その際、巨大な尻尾がガミーヌ達目掛けて勢い良く迫って来たのだ。逸早く気が付いたガミーヌがエクスに警告するも、到達までの距離とスピードから間に合いそうにも無いと判断し、エクスはエクスキューショナーを取り出し、尻尾の先っぽを切り落とす事で衝突を避けるという離れ業を見せた。


 「前から思ってたけど、本当にデタラメな力を持ってるのね。って、そんな呑気な事を言ってる場合じゃないわ。一旦、この場を離れましょう」


 先っぽとはいえ尻尾を切り落とされたにも関わらず、邪龍が二人に気付く様子は無く、一心不乱に捕まえた教団員達を貪っていた。その隙をつき、ガミーヌ達はその場を急いで離れる。


***




 「ふぅ……ここまで来れば取り敢えずは安心ね」


 復活を果たした邪龍から、何とか命からがら逃げ出して来たガミーヌとエクスの二人。現在は、龍の墓場を一望出来る少し離れた丘の上に立っている。


 「だけど、問題はこれからどうするかよね。邪龍が復活してしまった以上、もうどうする事も……」


 『貴様ら、こんな所で何を遊んでいるのだ?』


 「!!?」


 諦め掛けたその時、二人の背後に巨大な影が覆い被さり、聞き覚えのある声が聞こえて来た。振り返るとそこには、ルムの姿があった。


 「ルム!? どうしてあんたがここに!!?」


 『どうしたも何も、神聖な龍の墓場から汚ならしい鳴き声が聞こえて来たからな。少し様子を見に来たのだ』


 「そう……それなら見ての通りよ……」


 『あぁ、ここに来るまでの一部始終は見させて貰った。しかし……貴様らはおつかいもまともにこなせないのか?』


 「ぐぎぎぃ!!!」


 やれやれといった態度で二人を見下すルムに対して、悔しさと怒りから歯軋りをするガミーヌ。


 『しかしまぁ、丁度良かった。これでワシにも出番が出来た訳だ。さっさと片付けるぞ』


 「ちょ、ちょっと待ちなさいよ!!?」


 『何だ?』


 「どうしてそんな軽々しく言えるのよ!? 邪龍が復活したのよ!! あんた達龍を滅亡寸前まで追い詰めたあの伝説の邪龍ニーズンガルドが!!!」


 『何を言っている? “あれ”はニーズンガルドでは無いぞ』


 「え? そうなの?」


 ルムの予想外の答えに目を丸くするガミーヌ。


 『それどころか、“龍”ですらないな』


 「龍ですらな無いって……どう言う意味よ。あれはどう見たって龍じゃない?」


 『貴様らが斬った尻尾をもう一度よく見てみるが良い』


 「尻尾?」


 言われるがまま、斬った邪龍の尻尾を確認した。そこには何て事は無い絵に描いた様な綺麗な切断面があった。


 「……別に普通じゃない?」


 『貴様の目は節穴か? 斬ったのに何故“血”が出ていない』


 「あっ!! そ、そういえば……龍って血は通ってるわよね?」


 『当たり前だ。そんな生き物がいてたまるか』


 「じゃあ、あいつの事はどう説明するのよ!?」


 『貴様、復活の現場にいたのであろう? その時、ウロメティアの奴がどんな儀式をしていたか覚えているか?』


 「えっと確か……」




 “あの魔方陣が見えなかったか? あれこそ、邪龍様を復活させる為の儀式。“反転魔方陣”なのだ!!”



 

 「“反転魔方陣”……そうあいつはこの世の理を逆転させる禁術を使ってたわ」


 『成る程……合点がいった。結論から言えば、“あれ”は龍であって龍にあらず』


 「どういう事?」


 『貴様らも知っての通り、ウロメティアはニーズンガルド復活の為に、龍の墓場にあった様々な龍達の骨を組み合わせていた。そして反転魔方陣はあくまで物事の理を反対にするだけ。つまりニーズンガルド本人の骨を扱わなければ、復活など夢のまた夢だ』


 「じゃああの龍はいったい……?」


 『本来、死体を甦らせる行為は膨大な魔力を消費する物。ましてや龍の死体となれば、想像も付かない程の魔力が必要となる。いくらウロメティアが優秀な魔術師だとしても、毛が生えた程度に過ぎない。しかし龍は死して尚、その死体に強大なエネルギーを宿す』


 「私達が龍の墓場に向かう前に説明してたわね」


 『それが今回の悲劇を招いた。様々な龍達の骨を組み合わせた事で、幾つものエネルギーが寄り集まり、不可能だと思われた死者復活を可能とした。しかし龍達の骨を組み合わせた事で、一つしかない肉体に複数の精神が入り込んだ』


 「多重人格って事?」


 『いや、それよりもっと酷い。例えるなら、小さな器に数種類の絵の具を無理矢理混ぜ合わせようとする感じだ。勿論、そんな無茶をすれば最低な色が出来上がる。言うなれば、龍という“意識の集合体”だ』


 「意識の集合体……」


 『しかもそれだけじゃない。複数の意識が一つの肉体を巡って争っているせいで、上手く定着しきれていない。あれを見ろ』


 「?」


 ルムが指差した方向を見ると、邪龍モドキの顔が半分溶けていた。


 「な、何よあれ!!?」


 『意識が肉体に上手く定着していない証拠だ。それ故にあの邪龍モドキは、手当たり次第に人間を食らっているのさ』


 「えっ、美味しいから食べてるんじゃないの!?」


 『そんな訳があるか!! 誰が好き好んで人間なんか食べる!!?』


 「じゃあ、何であいつは無我夢中で食べてるのよ?」


 『足りない栄養を補給しているんだ』


 「足りない栄養?」


 『主に動物性タンパク質。人間を食らう事でそれを補っているんだろう。後、よく見れば人間と一緒にそこら辺の土や石、龍の骨も食べている』


 「ほ、本当だわ……」


 注意深く監視すると、教団員を口に放り込む際、一緒に土と石を口にしていた。更に箸休めと言わんばかりに、龍の骨もバリバリと砕いて食べていた。


 『あの食欲……余程、栄養が足りてないと見える。このままでは、ここだけで収まらず周囲の村や国にまで被害が拡大してしまうぞ』


 「そんな!!? こうしちゃいられないわ。もうクビがどうこう言ってられない。この事をギルドに報告しないと!!」


 『待て、小娘』


 深刻な事態に、ガミーヌが慌ててギルドへと戻ろうとすると、ルムがその歩みを引き留めた。


 「ちょっと邪魔しないでよ!! 早くあいつを止めないと!!」


 『ならばギルドなどに報告している余裕など無いぞ。そんな悠長な事をしている間にも、村や国が危険に晒されるのだからな』


 「でもだからってこのまま何もしない訳には……!!!」


 『誰が何もしないと言った?』


 「……え?」


 『ワシら三人で倒してしまえば、万事解決ではないか』


 「三人って……そういえばさっきも“ワシの出番が”どうのこうのって……まさか……!!?」


 『あぁ、ワシも貴様らと供に戦おう』


 「いったいどういうつもり? 神聖な場所だから近付きたく無かったんじゃないの?」


 『いや何……誇りばかり気にして、本当に大切な物を失っては本末転倒だと……何処かのお転婆娘に言われてしまってな。全くその通りだと考えを改めたのだ』


 「へぇ、そりゃあまた随分と良い事を言う女の子がいたのねぇ」


 『くくく……と、まぁそういう事だ。どうかワシと一緒に龍の墓場を……同胞の安らぎの場所を守ってはくれないか?』


 「しょうがないわね。手伝ってあげるわ」


 『ありがとう小娘……「ガミーヌ」……ん?』


 「私はガミーヌ。一緒に戦うんだから、名前で呼びなさいよね」


 『分かった、よろしく頼むぞガミーヌ』


 「こちらこそルム。それじゃあ、張り切って龍退治しますか!!」


 かくしてガミーヌ、エクス、そしてルムの三人は、供に龍の意識の集合体である邪龍モドキと相対する覚悟を決めるのであった。

エクスが喋らないから、どんどん影が薄くなっていく……。

そんな事より、次回から龍の意識の集合体である邪龍モドキと本格的な戦闘が始まります!!

次回もお楽しみに!!

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