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邪龍復活

 四方八方から一斉に襲い掛かって来る教団員達。おそらく龍の死体を解体する為に用いていた解体用のナイフを、各々手にしていた。


 「本当なら穏便に事を済ませたかったんだけど、そっちがその気なら仕方ないわね。エクス!!」


 逃げ道は無い。そう悟った次の瞬間、ガミーヌはその場にしゃがみ込んだ。するとそれと同時にエクスが回転し、エクスキューショナーを振り回した。


 これによって安易に近付いた教団員達の首が斬り飛ばされ、更にその様子を目撃した他の教団員達は、恐れ戦いていた。


 「何を怖じ気づいている!! もっと頭を使うのだ!! 正攻法が通じないのなら人質を取れ!! 女の方を捕らえるんだ!!」


 ウロメティアの言葉に、ハッとした教団員達はターゲットをエクスからガミーヌに変更した。ジリジリと距離を詰め、動きを封じようと試みる。


 「……はぁ!!!」


 「げぼぁ!!?」


 しかし次の瞬間、正面に立っていた教団員が、ガミーヌに斬り倒された。


 「悪いけど、こう見えて剣には自信があるの。この前のボアベアには歯が立たなかったけど、人間相手にならそう簡単に負けないわよ」


 思い起こされるのは、その昔ガミーヌが城で稽古を受けていた頃……。


 “はぁ……はぁ……も、もうムリ……一歩も動けない……はぁ……はぁ……休憩させて……”


 “何、甘ったれた事を言ってんだい。まだまだ始まったばかりだよ。さっさと立ちな。自力で立てないってんなら、あたしが無理矢理立たせてやるよ!!”


 “い、いやぁあああああ~~~!!!”


 「あの“ババア”のスパルタ稽古に何度死にかけた事か。けどまぁ、そのお陰で……」


 「うげばぁ!!!」


 「ぐぎぃ!!?」


 続けて目の前の一人と、背後に回っていた一人を斬り伏せるガミーヌ。血で濡れた剣を振って払い落とす。


 「ある程度の実力は身に付いたわ」


 「ええい、何をモタモタしている!! 相手はたった二人なのだぞ!! それなのに何故こんなにも苦戦しているのだ!!?」


 エクスのみならず、ガミーヌにさえ手を焼く教団員達。そんな彼らに苛立ちを覚えるウロメティア。


 「弓矢部隊!!」


 ウロメティアが徐に右手を上げると、後方から弓矢を持った複数の教団員達が現れ、ガミーヌに狙いを定める。


 「放て!!」


 「!!?」


 右手を下ろしたと同時に放たれる矢。周囲の敵を倒すのに夢中になっていたガミーヌは気が付くのに一瞬遅れ、避ける事も防ぐ事も出来なかった。


 「…………」


 しかし次の瞬間、エクスが覆い被さる様にガミーヌを庇い、全ての矢を背中で受け止めた。


 「エクス!!!」


 「チャンスだ。今の内に畳み掛けろ!!」


 負傷したエクスの姿に、ガミーヌは思わず攻撃の手を緩めてしまった。その隙をウロメティアが見逃す筈も無く、教団員達が一斉に攻撃を仕掛けて来た。


 「エクスは殺らせないわよ!!」


 何とか気を持ち直し、エクスを守ろうと剣を構えるガミーヌ。


 「…………」


 「……えっ?」


 その時、背中に矢が突き刺さって踞っていた筈のエクスが勢い良く立ち上がり、一撃で近付いて来た教団員達の首をはね飛ばした。


 「な、何だと!!?」


 「エ、エクス!!? あなた大丈夫なの!!? 背中に矢が刺さって……」


 これには流石のガミーヌも驚きを隠せなかった。怪我の有無を心配される中、エクスは何事も無かったかの様に背中に刺さっている矢を一本ずつ引き抜き、地面に捨てた。勿論、矢じりには血がべっとり付いているのだが、当のエクスはけろっとしている様子だった。


 「ぶ、無事で何よりだけど……今度からはもっと自分を大切にしなさい!! いくら私を守る為とはいえ、無茶し過ぎよ!!」


 大した怪我では無い事にホッとしながらも、エクスの無茶苦茶な行動を咎める……。


 「……でも、助けてくれてありがとう……」


 ……も、素直に御礼は述べるガミーヌであった。


 「くそっ、一撃だけでは足りなかったか。ならば、倒れるまで放つだけの事!! 構えろ!!」


 「あいつ、また矢を放とうとしているわね。ここは二手に分かれましょう。あなたはここで他の教団員達を相手にしてて。私はあの弓矢部隊と本命を相手にするわ」


 そう言うとエクスを置いて、一人先行しようとするガミーヌ。そんな彼女の手を握って止めるエクス。


 「私、一人だけじゃ不安だって言いたいの?」


 「…………」


 「確かに私はお世辞にも強いとは言えない。だけど、私はあなたのパートナーなの。自分のケツ位、自分で持つわ」


 「…………」


 「それにパーティーって言うのは、仲間を……互いを信頼し合う物なのよ。私はあなたの事を信じてる。だからあなたも私の事を信じて」


 「…………」


 その言葉を最後にエクスは、掴んでいた手を離した。すると自由になったガミーヌは持ち前の背の低さを利用して、教団員達の間をすり抜け、あっという間に弓矢部隊の側まで迫って行く。


 「何をボーッとしている!! あいつをこちらに近付けさせるな!!」


 ウロメティアの命令に従い、弓矢部隊がガミーヌ目掛けて次々と矢を放つ。だが、そんなのに臆する事無く華麗に回避したり、剣で叩き落とすガミーヌ。


 「く、来るな!!」


 「う、うわぁああああ!!?」


 遂には弓矢部隊の側まで辿り着き、懐に飛び込むと対処される前に剣で斬り伏せた。


 「使えない連中が……かくなる上は……」


 弓矢部隊が殺られ、自身を守る盾がいなくなった事を目の当たりにしたウロメティアは、急いでその場から逃げ出した。


 「待ちなさい!!!」


 後を追い掛けるガミーヌ。その様子を見ていたエクスも二人の後を追い掛けようとするが、教団員達に行く手を阻まれてしまう。


 「…………」




***




 「あの卑怯者、いったい何処に逃げたのかしら?」


 逃げたウロメティアの後を追い掛けて来たガミーヌだったが、見失ってしまった。


 「それにしても足元が骨だらけね」


 辺りを見回すと、そこには無数の骨が散らばっていた。


 「でも何かしら……この場所、凄く嫌な感じがする……」


 「それは違うぞ。この場所こそ、この世で最も神聖な場だ」


 「!!!」


 声のする方向に顔を向けると、積み上がった骨の上にウロメティアが立っていた。


 「逃げられないと悟って出て来たわね。さぁ、大人しくお縄に付きなさい!!」


 「くくく……」


 「何が可笑しいの!?」


 「逃げる? いつ私が逃げたと言うのだ?」


 「実際、逃げたじゃない!! 仲間の教団員達を見捨ててね!!」


 「元よりあんな使えない奴らを仲間などと思ってない。それに私は逃げて来た訳じゃない」


 「へぇ、じゃあ何しに来たって言うのよ?」


 「無論、邪龍様の復活だ」


 「何ですって!!?」


 「あの魔方陣が見えなかったか? あれこそ、邪龍様を復活させる為の儀式。“反転魔方陣”なのだ!!」


 「“反転魔方陣”……思い出した!! その名の通り万物の理を反転させる魔法。生ある者は死に、また死の者は生ある者へと変わる。そのあまりに非道徳的行いから、第一級の禁止指定魔法として使用及び知識の共有を禁じられた!!」


 「ほぅ、よく知っているな。この事は一部の魔術師しか知り得ない情報だというのに……」


 「生憎、昔どっかの“魔法バカ”に耳にタコが出来る程聞かされた経験があるのよ」


 「成る程、それは是非とも会って見たかったが、残念ながら貴様とはここでお別れだ!!」


 次の瞬間、ウロメティアの両手が紫色に光輝き、同時にエクス達がいる場所から紫色の閃光が放たれ始める。更にガミーヌの足元に転がっていた骨が、ガタガタと揺れ始め、一斉に紫色の閃光目掛けて飛び上がった。


 「甦れ!! 邪龍ニーズンガルド!!!」


 飛び上がったバラバラの骨が組み立てられていき、やがてそれは一頭の龍へと姿を変えた。続けて両足から肉が付き始め、頭のてっぺんまで到達した。すると甦った龍の両目が、カッと見開いた。


 「そ、そんな……まさか本当に復活するなんて……」


 「ふはははは!!! 今更後悔してももう遅い!! さぁ、邪龍よ!! この愚かな女を始末するのだ!!」


 高笑いを浮かべながら、ウロメティアが命令する。しかし、甦った龍はじっとウロメティアを眺めるだけで、ガミーヌに襲い掛かろうとはしなかった。


 「おい、何をしている!? さっさとそこの女を始末するんだ!! 私が貴様を甦らせてやったのだぞ!! 私の命令に従うのだ!!!」


 そう言った次の瞬間、龍はウロメティアをパクっと一口で食べてしまうのであった。


 「…………え?」

遂に復活してしまった邪龍ニーズンガルド。

しかし、どうも様子がおかしい……。

食べられてしまったウロメティア。

果たしてガミーヌ達は無事に生き残れるのだろうか!?

次回もお楽しみに!!

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