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邪龍教団

今回は少し昔話を語ります。

 「邪龍教団?」


 聞き慣れない名前に首を傾げるガミーヌ。


 『邪龍教団とは、“ニーズンガルド”を崇める一団の事だ』


 「あー、また知らない言葉が増えた……何なの“ニーズンガルド”って?」


 『……良いだろう。それなら最初から話そう。始まりは数世紀前にまで遡る……』


 何も知らないガミーヌ達の為、ルムは空を見上げながら一からゆっくりと語り始めてくれた。


 『まだワシら誇り高き龍の一族が、この地上を統治していた頃の話だ。ワシら龍の一族は縄張り意識が強く、またそれを自覚していた事から、なるべく互いに干渉し合わない様に心がけていた。それにより各地では独自の文明が築かれていた。ワシも当時は文明を一つ築いていた』


 「聞いた事があるわ。その昔、龍が生物の頂点としてありとあらゆる種族を束ねていたって。でもまさか、その当事者の話を聞けるだなんて……」


 『そうして小競り合いも無く、平和な日々が何年も何十年も続いた。しかしある日、その平和は音を立てて崩れ落ちた』


 語りに力が入り、感情的になったルムが尻尾で近くの岩を破壊して崩した。


 「きゃっ!!?」


 『“ニーズンガルド”と呼ばれた龍が、他の龍の縄張りに無断で足を踏み入れ、更にはそこを統治する龍と築き上げた文明を滅ぼしたのだ!!』


 興奮したルムは、崩した岩を尻尾で更に細かく砕き始め、やがて跡形も無くなってしまった。


 『ふぅー、ふぅー、ふぅー』


 「えっと……落ち着いたかしら?」


 荒い呼吸をするルムに対して、恐る恐る声を掛けるガミーヌ。万が一攻撃されても大丈夫な様に、エクスを盾にする。


 『あぁ……すまなかった。当時の光景が脳裏を過ったせいで、どうも感情的になってしまった。えっと、何処まで話したかな?』


 「ニーズンガルドが他の龍と文明を滅ぼした所まで」


 『そうだった。この事を切っ掛けに奴は他の龍の縄張りを荒し始めた。奴はワシらと異なり、独自の文明を築き上げる事になど興味は無く、純粋に破壊と殺戮だけを楽しんでいた。勿論、これを黙って見てる程、ワシらは愚かでは無い。互いに干渉し合わないという掟を一時的に無くし、ニーズンガルドを倒す為に強力する事にしたのだ』


 そう言うと、その辺の木の枝や石を器用に積み上げ、龍の形をした人形を複数作り上げた。その内の一体は他のより少し大きく、距離も離れている事からニーズンガルドを表していると見て取れた。


 「い、意外にノリノリね。人形まで用意するなんて……」


 『だが、ニーズンガルドの強さは予想を遥かに越えていた。たった一人相手に次々と同胞が倒れ、いよいよワシを含めて数えるだけになったその時、それは起こった』


 するとルムは、人形の内の一体を手に取り、ニーズンガルドを模した人形にくっ付けた。


 『同胞の一人が自らの命と引き換えに、ニーズンガルドに隙を与えたんだ』


 続けて残った人形をまとめてニーズンガルドの人形にぶつけ、粉々に打ち砕いた。


 『それはもう二度と出来ない隙だった。ワシらはこの勝機を逃すまいと、一斉攻撃を仕掛けた。己の体力が底を尽きるまで攻撃し続けた。その間の数分間は、まるで永遠とも思えた程だった。やがてワシら全員の体力が底を尽きた。そして遂にワシらはニーズンガルドを倒す事に成功したのだ!!』


 「やった!!!」


 ガミーヌは、いつの間にかルムの語りに聞き入っていた。ニーズンガルドを倒した事が分かると、まるで自分の事の様に喜んでいた。


 『だがしかし……勝利を納める事が出来たワシらだったが、失った物があまりにも多過ぎた。最早、残ったワシらだけでこれまで築き上げられた文明を統治するのは不可能だった。そこでワシらは苦肉の策として、文明を他の種族に明け渡す事にした』


 「そっか、それで私達の文明へと繋がるって訳ね」


 ガミーヌの問い掛けに頷くルム。


 『そしてワシらは、ニーズンガルドとの戦いで失った同胞達を弔う場所を設けた。その地を神聖な場として、訪れて良いのはワシら龍の寿命が尽きるその時のみとした。そうして生まれたのが、今の龍の墓場という訳だ』


 「そうだったの……ん? ちょっと待って。あなた達の歴史はよく分かったけど、まだ肝心な事を聞けてないわ。結局、邪龍教団って言うのは何者なのよ?」


 そう、今の話には邪龍教団の話は出ていなかった。そんな当然の疑問を投げ掛けるガミーヌ。するとルムは、湖の水を飲んで喉を潤し始めた。


 『…………ふぅ、落ち着くのだ。この話にはまだ続きがある。ワシらとニーズンガルドの戦いは、正に歴史に残る程だった』


 「でも、そんな戦いがあったなんて私今まで知らなかったわよ?」


 『うむ、長い時の中で忘れ去られてしまったのであろうな。だが、寧ろその方が良かった。ワシらからすれば、あの戦いは同族同士による仲間割れの様な物だったからな。消し去りたい記憶さ』


 「ルム……」


 『問題なのは、先の戦いでニーズンガルドに魅入られた者達がいた事だ。ニーズンガルドを龍に仇を為した“邪龍”と崇め始めたのだ』


 「それが邪龍教団……」


 『当初こそ、ニーズンガルドを信仰するだけの所謂ファンクラブ的存在だったのだが、ここ最近になって厄介な男が教祖に就任した』


 「厄介な男?」


 『名を“ウロメティア”。何でも元王宮魔術師だったらしいが、無断で危険な古代の研究を行った事で国から永久追放を食らい、流れ着いた先が邪龍教団だった』


 「待って!! 何で文明を他の種族に明け渡したあなたが、そんなに国の内情に詳しいの?」


 『あぁ、時々国の使いがやって来てはワシに助言を求めて来るのだ。まぁ、聞きに来るのはワシが築き上げた文明の者達だけだがな』


 「そう……それでそのウロメティアが邪龍教団に就任して、何をしているの?」


 『何と奴は、ワシらの神聖な龍の墓場を荒らしているのだ!!』


 「成る程、それで依頼書の墓荒らしに繋がるって事ね。ねぇ、思ったんだけど、それってそんなに騒ぎ立てる事なの?」


 『当たり前だ!! あの場所はワシら龍にとって、最期に訪れる特別な場所!! それを見ず知らずの連中に汚されていると思うと我慢ならないのだ!!』


 「わ、分かったから落ち着いて……それで邪龍教団は墓場を荒らして何をするつもりなの? 金目の物でも漁ってるとか?」


 『それならワシも目を瞑っただろう。しかし、残念ながら事態は思った以上に深刻だ。奴らは愚かにもニーズンガルドを“復活”させようとしているのだ!!』


 「えっ!!? 復活って、そんな事が本当に可能なの!!?」


 『本来なら不可能だ。しかし、あそこには同胞達の亡骸がある。龍の死体は腐らず、死後も強いパワーを秘めている。それを用いればあるいは……』


 「もしそうなら大変じゃない!! 今すぐギルドに応援を……いやいや、それじゃあ私達が無断で依頼書を持って行った事がバレちゃう……そうだ!! あなたが直接その墓場に赴いて、邪龍教団を倒したら!!?」


 名案とばかりに指差すが、ルムは首を横に振った。


 『そうしたいのは山々だが、言ったであろう。あの場所はワシら龍が寿命が尽きる時のみ訪れる事が出来る地。それ以外の理由で訪れる訳にはいかないのだ』


 「えっ、ちょっと待ってよ……それって可笑しくない?」


 ルムの言葉に眉を潜めるガミーヌ。


 『何だと?』


 「だって、龍の墓場はあなた達の同胞が眠ってる場所なのよね? それを荒らす連中がいるのに、指を咥えて見てるだけなんて……そんなんじゃあ、亡くなった同胞もあなたにガッカリでしょうね」


 『おい、あまり調子に乗るなよ小娘が!! ワシがその気になれば、貴様などチリも残さず消し炭に出来るのだぞ!!』


 ガミーヌの言葉に怒りを覚えたルムは、彼女の目の前に立ち塞がり、口から灼熱の炎を吐き出そうと構える。


 「あなたこそよく聞きなさい!! 大切なのはどう最期を迎えるかじゃない。どう生きたかでしょ!!? それなのに神聖な場所だから立ち入れない? ふざけるんじゃないわよ!! あなたが本当に誇り高き龍だと言うのなら、掟よりもまず同胞の魂を尊重するべきじゃないの!!?」


 『!!!』


 しかし、ガミーヌは一歩も引かず、それどころか自らルムの前に歩み寄り、啖呵を切った。その言葉にルムはぐうの音も出なかった。


 『…………だが……それでもワシは……』


 「……そう……ここまで言って駄目なら、もう何も言わない。もうあなたには頼らない。私達だけで何とかするしかないわね。エクス、行きましょ」


 頭の硬いルムを諦め、ガミーヌはエクスを連れて二人だけで龍の墓場へと向かって行く。


 「……私、龍はもっと気高い種族だと思ってた。でもそれは間違い。あなた達は、掟と過去の栄光に胡座をかくだけの見栄っ張りだった。あなた達の為に命まで張った同胞の方がずっとずっと気高いわ」


 『…………』


 最早、言い返す気力すら残ってはいなかった。ルムは二人が去って行くのを黙って見守る事しか出来なかった。

果たしてガミーヌとエクスの二人は、邪龍教団の野望を阻止する事が出来るのだろうか!?

次回もお楽しみに!!

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